アニスの特訓
魔力の感覚について考えていたら今日行う特訓の時間が短くなってしまったので急遽特訓メニューを変更する事になった。
「その特訓のためにアニス様に来ていただいた、これから行う特訓はアニス様の力がなければ行えないからな」
「アニス嬢の?」
エドウィンはアニスを見るがどう言う事だとでも言いたそうな顔をしている。
うん、普通に考えたらそうなるわな。
「まあ、何をするかは今からわかる、ではアニス様、特訓の方を」
「はいなのです、ガルン、ランサー、出て来るのです!!」
アニスが大声を出す。
「ガルルル」
「グルルル」
『ガアアアー!!』
すると訓練場に大きな白いトラと黒いヒョウが現れ雄叫びを上げる。
「は、はあーっ!?」
エドウィンは白いトラと黒いヒョウに驚く。
うん、まあそんな反応になるか。
「白いトラがガルンで黒いヒョウがランサーなのです」
アニスが白いトラと黒いヒョウの紹介をする。
「この子達がエドウィン様の特訓相手なのです、ガルン、ランサー、お願いするのです」
「ガルー」
「グルー」
ガルンとランサーは愛情表現なのか舌でアニスの顔を舐める。
「ガルン、ランサー、くすぐったいのですー」
「ケイネス、あれは何だ?」
「あれか、アニスのかわいいペットだ」
「ペット!?」
「ああ、アニスのかわいいペットだ」
驚くエドウィンにシルも答える。
「ペットって、トラとヒョウだぞ? 普通ペットって犬とか猫とかそう言うのじゃ」
「アニス様のかわいいペットです」
「少し大きいですがかわいいペットです」
ルティとレティもペットと答える。
うん、少し大きいけどアニスのかわいいペットだ。
「かわいいペットでもありアニスを護衛する強いペットでもあるんだ、こいつらがお前の相手だ」
「・・・・・・ケイネス、凄く嫌な予感がするんだが」
「そうか、お前のその直感は多分間違ってないと思うぞ」
「だとすれば」
「今からアニス様のペットであるガルンとランサーに追いかけてもらう、エドウィン様にはこの二匹から全力で逃げてもらう」
「だと思ったよ!!」
予感が的中したエドウィンは叫ぶ。
「魔力に目覚めさせるには精神を極限まで追い込むべきだと思う、そこで単純に猛獣に追いかけられる事により追いつかれたら喰い殺されて死ぬと言う恐怖で精神を追い込もうと思う」
「お前の銃で撃たれる事でも十分死の恐怖を感じると思う気がするんだが」
「私の銃は当たっても死なない威力だから慣れてしまえばどうって事はない、だがガルンとランサーの猛獣達は手加減を知らないからな、私の銃より恐怖を感じると思うぞ」
確かに猛獣に追いかけられる恐怖は銃で撃たれる恐怖とはまた違うよなぁ。
「ガルン、ランサー、エドウィン様を追いつきそうで追いつかない速さで追いかけるのです」
「ガルー」
「グルー」
ガルンとランサーはアニスの言葉に頷くように返事をする。
「それじゃあ、行くのです」
「ガルルル」
「グルルル」
アニスが言うとガルンとランサーはエドウィンの方を向いて唸り声を上げる。
狩りの態勢に入ったな。
「エドウィン、俺から言える事は、どんなに後ろが気になっても振り向かない方が良いぞ」
「何だそのアドバイスは?」
「とにかくだ、どんなに後ろが気になっても振り向くな、きっと後悔するから」
俺のアドバイスにエドウィンは疑問を浮かべているみたいだけど、そうした方が後悔しないんだよ。
「ではエドウィン様には早速スタート地点に着いていただこうか」
「ああ」
ネロナに言われてエドウィンはスタート地点に立つ。
「では、始め!!」
そうネロナが言うとエドウィンは走り出す。
「ほお、体力がついたからか走り方が良くなってるな」
シルの言う通り、確かに走り方が良くなっているな。
「まあ、燃え尽きる事も多くありましたが弱音を吐かず途中でやめず毎日最後まで頑張ってましたから、その結果は出て当然です」
「それでもまだまだザコ体力ですが、エドウィン様なら今後も大丈夫だと思います」
そうルティとレティが言う。
二人がそう言うならエドウィンはこれからも大丈夫そうだな。
そしてある程度距離が離れたところで。
「ガルン、ランサー、行くのです!!」
「ガルー!!」
「グルー!!」
アニスの命でガルンとランサーがエドウィンを追いかけるのだった。
「ガルアァァー!!!」
「グルアァァー!!!」
ガルンとランサーが雄たけびを上げながらエドウィンを追いかける。
もう追いつきそうだな。
「今エドウィンは強いプレッシャーを感じてるだろうな」
「ああ、アニスのペットと言えど二匹の危険な猛獣に追いかけられている事に変わりはないからな」
確かになぁ。
あ、もうエドウィンとの距離が目と鼻の先だな。
「ガルー!!」
「グルー!!」
「お、エドウィンが気になって振り向いたぞ」
そうシルが言う。
あー、やってしまったか。
「うおおおおおー!!!」
エドウィンが大声を出して走り出す。
そりゃ振り向いたら目と鼻の先の距離で二匹の猛獣を目撃したらそうなるわな。
だから何があっても振り向かない方が良いぞって言ったのに。
けど。
「走る時間が長くなったな」
シルがエドウィンを見て言う。
確かに今までならもうとっくに疲れて走れなかったな。
「毎日走らせたからな、体力がついてないわけがない」
ネロナの言葉にルティとレティも頷く。
確かに毎日走ってて体力がつかないなんて事ないな。
「うおおおおおー!!! あ、ぶえ!!」
あ、エドウィンが転んでしまった。
「ガルー」
「グルー」
「うぅ・・・・・・」
そして追いついたガルンとランサーが転んで倒れたエドウィンを足で押さえつけてるよ。
野生の猛獣だったらこの後普通に食べられて終わりだな。
「ガルン、ランサー、離れるのです」
そうアニスが言うとガルンとランサーはエドウィンから足をどけるのだった。
「エドウィン大丈夫か?」
「・・・・・・」
「気を失ってますね、エドウィン様起きてください」
「お目覚めの時間ですよ」
そう言ってルティとレティはエドウィンの頭の上に水を掛ける。
「はっ!! ここはどこだ?」
「目が覚めたか」
「ケイネス、私は一体」
「お前が転んでガルンとランサーに足で押さえつけられてたぞ、野生の猛獣ならこの後食べられて終わりだったな」
「平然と恐ろしい事を言うな」
「まあ、実際アニスが命令しているからガルンとランサーはお前を襲わなかったんだぞ」
「どう言う事だ?」
「あの二匹は主人のアニスを除けば自分より弱い相手には容赦しないんだ」
「え?」
「逆に自分より強い相手なら主人であるアニス以外がこうやって触れても大人しいんだ」
そう言って俺はガルンとランサーに触れると二匹は特に何もせず大人しくしている。
「けど今のお前がこの二匹に触れようとしたら間違いなく威嚇するしアニスの命令がなかったら今頃襲い掛かってるぞ」
「さらっと恐ろしい事を言うなよ!!」
エドウィンは冷や汗をかきながら叫ぶ。
「けど今の内にこいつらに追いかけられる特訓をして置いて良かったと思うぞ」
「どう言う事だ?」
「ネロナの事だから、お前が魔力に目覚めたらガルンとランサーに追いかけられる特訓をメニューに入れるつもりだろうからな」
「は?」
間の抜けた声を出してエドウィンはネロナを見る。
その視線に気づいたネロナは。
「ああ、そのつもりだ、ガルンとランサーは単純に我々人間より足が速いんだからな、魔力で身体強化した足でちゃんと走ってもらうぞ」
歯を見せにいっと笑いながら言うネロナ。
それを見たエドウィンは顔を蒼褪めるのだった。
まあ、ネロナなら本気でやるからなぁ。
まあ、それよりも。
「お前の魔力目覚めないな」
「手っ取り早く死を感じる恐怖心で追い込めばと思ったが、どうやらそう簡単にはいかないようだ」
ネロナの言う通り、簡単にはいかないか。
「エドウィン様の魔力は随分とのんびり屋さんですね、まるで出てくる気配がない」
「エドウィン様自身が色々奥手だから魔力も奥手なのでしょうか」
「随分と言ってくれるな、私だって好きでしてるんじゃない」
ルティとレティの発言にエドウィンはそう返すが、図星なのかあまり強く言えないようだ。
確かにこいつ奥手と言えば奥手だな。
「うむ、まあ魔力についてはまだ目覚めないと言う事だから、いつものように気長に待つしかないな」
腕を組みながらシルが言う。
うん、確かにいつものように気長に待つしかないか。
「まあ、気長に頑張れ」
「何故だろうな、全然励まされている気がしないんだが」
「そんなわけないさ」
「エドウィン様頑張るのです」
「ガルー」
「グルー」
そうアニスが言うとガルンとランサーも頑張れとでも言うように鳴くのだった。
「アニスも応援してるんだ、ちゃんと期待に答えろよ?」
「さっきより圧が強く感じるんだが!?」
そりゃそうだろ。
妹までお前のためにやってくれたんだから。
これで結果を出さなければどうなるかわかるだろ?
だから頑張れよ。
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