子供達の未来のために
「誘拐して連れ帰ろうとしたのか?」
「ああ、本人に戻る気がないからそのまま大人しくバッカス王国に帰国するかと思ったら、まさか強行手段に出るとは思わなかったよ、あのバカ王子の事だから自国の者だから多少強引に連れ帰っても問題ないとか思ってたんだろうな」
「いくら自国の者だからと言っても、他国にいるのならちゃんと手続きをしなければならないだろ、バハムス側は王命で彼女が来たと思って受け入れたんだから」
「そう、こちらは王命でイアナさんが来たと思っている、ならば自国の者であってもちゃんと手続きをしなければならないし、ましてやイアナさん自身が戻る気がないと言うのなら、大人しく自国に帰るしかないのにあのバカ王子はイアナさんを誘拐して連れ去ると言う最悪な手を打ったんだからな」
呆れてものも言えないとはこう言う事なんだろうなと思うよ。
「それで、どうなったんだ?」
「ああ、ユーリが助けたよ」
「ユーリが?」
「ええ、イアナが連れ去られるところを目撃してね、すぐに助けたわ、バッカス王国の騎士達が斬り掛かって来たけど普通に相手にならないから返り討ちにしたわ、ついでにバカ王子をちょっと脅してやったわ」
ちょっとって、絶対ちょっとじゃないだろ。
「まあ、ユーリが助けてくれたからさすがのバカ王子もマズいと思ったのか今度こそ大人しく帰ったみたいなんだけど、それで終わるわけがないんだよ」
「まだ続きがあるのか」
「ああ、今度は陛下の方がバッカス王国に行くぞって話になってさ」
「え?」
「いやさ、正式な手続きもしないでさらにはイアナさんを誘拐して連れて帰ろうとするバカ王子のあまりにも非常識で身勝手過ぎる行動に陛下もさすがにバッカス王国の王に物申さないと気がすまないってなって、なんかその日の夜に何組かの騎士団や魔法師団を連れてバッカス王国に向かったんだ」
「騎士団や魔法師団って、戦争でもしそうな勢いだな」
「親父もついて行ったみたいだし、俺も行ったんだ」
「お前も行ったのか」
「ああ、夜中親父がさ、バッカス王国に行くから来いってちょっとその辺散歩してくるみたいな感じで言うんだよ、しかもシル、シグフィス殿下も一緒でさ、馬車の中で何でそうなったのかって経緯を説明されてさ、シルと殿下は同じ王族として頭を抱えて恥ずかしいって顔をしてたな」
俺も何とも言えなかったよ、そこまでのバカ王子だったのかって。
「それから普通にバッカス王国に着いて王城に行ってバッカス王国の国王に物申すような状況になってな、広間で王やバカ王子、さらにはたくさんの貴族達が集まってバハムス側が包囲して制圧してる状態になってたな、完全に俺達が国を攻めている状態でさ、王城に向かう途中でバッカス王国の国民達が何事かと心配そうな顔をしていたよ」
さすがにバッカス王国の国民には申し訳ない事をしたよ。
「それで、まあ、色々あってバッカス王国はバハムスと関係を結んでいたけど、バハムスの属国になったんだ」
「急に話が進んだな、何があって属国になったんだ?」
「色々あったんだ」
「その色々が何なんだよ?」
「色々は色々だよ」
「・・・・・・ケイネス、まさかと思うが、お前何かしたのか?」
「・・・・・・エドウィン、勘のいい奴は時と場合によっては嫌われるぞ?」
「本当に何かしたのか」
「何かって言うか、流れ的に俺がバッカス王国のバカ王子と貴族達に思った事を言ったんだ、それでなんか色々あって属国になったんだよ」
「それって何て言うか」
「ああ、まあ、ガルドムのあの時と同じような事だな」
「なるほど、大体わかった」
「そうか」
エドウィンは何とも言えない顔をしているな。
まあ、そう言う事だからな。
「まあ、そんなこんなで現在のバッカス王国はバハムス王国の属国となってイアナさんはユーリと結婚したって事だ」
「話が随分飛んでる気がするが」
「イアナさんも多分何にもなかったらバッカス王国の危機に国に戻ったかもしれないが、そうしたくない理由があったからな」
「一体どんな理由が?」
「俺より本人が言った方が良いだろうな」
俺はイアナさんに話を振る。
「はい、あの時は何もなければ国に戻っていたと思います、私を追い出した国でも、それでも私が生まれ育った国でしたから、でも、あの時はできませんでした、だってユーリがいたから、ユーリと一緒に時間を過ごしていたら、その、この人と離れたくないなと思うようになりまして、連れ去られそうになったところを助けてもらって、私は彼の事が完全に好きになってしまいました」
言っていて恥ずかしくなったのかイアナさんの顔は赤くなっている。
「まあ、それで結婚して去年娘のユナが生まれたってわけよ」
そうユーリが言う。
「それで結婚したからイアナさんはユーリの住んでいるこの孤児院で暮らして今は子供達に勉強を教えたりしているんだよ」
「はい、少しでも子供達の未来が広がればと思いまして」
「私が教えられるのはあくまで護身術とかそう言うのだけだからね、たくさんの知識を持っているイアナが勉強を教えてくれてるのは子供達にとってはとてもありがたい事よ、イアナの教え方は上手だから子供達もちゃんと聞いてくれるのよね」
「皆、良い子達だから」
「そうね」
そう言ってユーリとイアナさんは笑みを浮かべて子供達を見ている。
「ルティとレティおそーい」
「全然捕まらないよーだ」
「どうやらあなた達は気づいてないみたいね、今まで手加減していた事に」
「ここからは本気よ、覚悟しなさい」
ルティとレティがさっきより速く追いかける。
「きゃー!!」
「来たぞー!!」
「逃げろ逃げろー!!」
子供達は楽しそうに二人から逃げている。
「もう一回お願いします!!」
「よし、その気合は良いぞ、来い」
シルは子供達と木剣で模擬戦をしている。
強くなりたいって意思を感じるな。
「こうしてお姫様は王子様といつまでも幸せに暮らしましたとさ」
「お姫様と王子様幸せになれて良かったね」
「ん、良かった」
シェフィーネ王女は子供達への読み聞かせを終えたようだ。
子供達は皆楽しそうだ。
「ケイネス」
「ん?」
「今日は私にとってもたくさんの学びになった気がする」
「そうか」
俺はそれ以上は何も言わなかった。
きっとエドウィンなりに何かを得たのだろう。
その何かはわからないがとても大事なものだろうなとは思える。
今日孤児院に付き合わせたのは正解だったかもな。
「ねえ、ケイネス様達も遊ぼうよー!!」
おっと、子供達にお呼ばれされた。
「ユーリさーん!!」
「あらあら、呼ばれたから行って来るわね」
「ええ、いってらっしゃい」
そうイアナさんが言うとイアナさんに抱かれているユナもユーリに手を振っている。
「エドウィン様、私達と一緒に子供達を一人残らず捕まえますよ」
「子供相手ならザコ体力のエドウィン様でも十分相手になりますから」
「ザコ体力言うな!!」
そう言いながらもエドウィンは二人の所に行って一緒に子供達を追いかけている。
そう言えば子供の頃は結構やんちゃだったって言ってたな。
「ケイネス、話が終わったのなら子供達の相手をしてくれないか?」
シルが俺に声を掛ける。
「ケイネス様、お願いします」
子供達も俺に相手をしてほしいそうだ。
「ああ、今行く」
俺は子供達の所に行くのだった。
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