元貴族令嬢
「よく気づいたな、そう、ユーリの奥さん、イアナさんは元貴族だよ」
エドウィンの問いに俺はそう答える。
「やはり、どことなく貴族らしい振る舞いが見れたからもしかしてとは思ったが」
「あら、やはり王族であるエドウィン様に見破られたようね」
話を聞いていたユーリがイアナさんと一緒に来る。
「お察しの通り、イアナは元貴族令嬢よ、しかも公爵家のね」
「公爵家の、しかし、それなら何故」
「簡単に言えば家を追い出されたからよ」
「追い出された?」
「ええ、王族から婚約破棄をされてね」
「!!」
「一応誤解しないように言うけど、バハムス王国での話じゃないからな」
ユーリの話でエドウィンが勘違いをしていると思った俺は追加で説明を入れる。
「イアナさんは他国の公爵令嬢だよ」
「そうなのか?」
「ああ、何て名前だったかな、確かバハムスと同じでバで始まってスで終わる四文字だったな」
そうバハムスと同じバで始まってスで終わる四文字だったのは覚えているんだが、何だったかなぁ。
えーっと、あ。
「思い出した、バカデス王国だ」
「バッカス王国です」
俺が言うとイアナさんが訂正する。
うわぁ、間違えた。
「間違えて覚えてた、なんか恥ずかしいな」
「最初と最後は合っていたわよ」
「うん、とにかくイアナさんはそのバッカス王国の公爵家の令嬢でバッカス王国の王子と婚約してたんだけど、そこのバカ王子が婚約破棄したんだよ、それでイアナさんは家を追い出されたってわけ」
「王子の婚約破棄」
エドウィンが苦い顔をする。
まあ、身に覚えのある事で心が痛いわな。
「どうして婚約破棄を?」
「そうだな、イアナさん、話しても?」
「ええ、構いません」
イアナさんからの許可が出たので俺は続きを話す。
「まあ、簡単に言えばイアナさんが完璧すぎた事に対するバカ王子のどうしようもない嫉妬ってとこだな」
「嫉妬?」
「ああ、イアナさんは完璧だったんだ、貴族としての礼儀作法も王妃教育も学園での成績も、とりあえず将来王妃となるための全てにおいて完璧と言っても良いほど優秀な令嬢だったんだ、けどその完璧なのがいけなかったんだ」
「完璧なのがいけない?」
「ああ、完璧すぎたんだ、彼女は民達の悩みの解決策を出したり、城で働いている貴族達の仕事の効率化、具体的には様々な分野で働いている者や騎士団達を定時で家に帰れるようにしたりとか王宮で先送りにしていた悩みや問題を次々と解決させていったんだ、まさに完璧な婚約者と言っても過言じゃないだろ?」
「ああ、そうだな」
「それがそのバカ王子にとっては気に入らなかったらしくてな、色々とわけわかんない事を言って婚約を破棄したんだ、何でも完璧すぎてかわいげがないとか、貴族達が自分達の仕事がなくなって困ってるとか言ってな、どうやらバカ王子は婚約者であったイアナさんが自分より優れているのが気に入らなかったみたいなんだ、だからあれこれ言って婚約破棄したんだよ」
「そんな」
「しかも貴族達も彼女の仕事の効率化が気に入らない者も多くいてな、イアナさんは皆が仕事を早く終われるようにしただけなのにそれが自分達を見下していると感じたらしいんだ」
「見下しているって、仕事が早く終わるのは良い事だろ?」
「そうなんだけど、何て言うのかな、その貴族や騎士団達は今まで遅くまで働くのが当たり前だったから急に定時で帰れるようになったら他にやる事が何もないから困るとか言う者が多かったらしいんだ、全く意味がわからないよな、早く仕事が終われたのなら今までできなかった事ができる時間が手に入るのにな」
「確かに」
「しかもイアナさんの親もこれまた意味がわからない人達でな、これもバカ王子と同じで完璧すぎてかわいげがないとか言う人達だったんだ」
「親まで」
「ああ、自分達より完璧にできるから見下されているとか思ったらしいんだって、そのせいかイアナさんには歳の近い妹がいて親はその妹の方をかわいがってたんだよ、バカ王子もイアナさんよりかわいげのある妹の方が良いと言って婚約破棄をして妹の方と婚約をするって言ってしかもイアナさんの親もそれを了承したんだ、わけがわからないだろ?」
「そう、だな」
エドウィンは歯切れが悪そうに返事をする。
まあ、似たような事をつい最近してしまったからなぁ。
自分と重ねてしまったか。
「それでここからさらにわけがわからない事になるんだけど、婚約破棄したら他国に向かうようにって王命をそのバカ王子が出したんだよ」
「は? 何故婚約破棄して他国に向かうんだ? それに王子に王命の権限はなかったはずだよな?」
「そう、まだ継承していない王子に王命を出す権限はない、けどそのバカ王子はやってしまったんだよ、しかもバッカス王国の王が不在の時に勝手にな、その理由もイアナさんの顔を見たくないとかこの国に置いておきたくないとかそんな感じなんだけど、わけわかんないだろ?」
「ああ、確かにわけがわからないな、私が言えた事でもないが」
そうエドウィンは言う。
バカ王子とほぼ似たような事をしたからなぁ。
「まあ、それでイアナさんは他国に来たんだけど、その他国がこのバハムスってわけ、バッカス王国とは距離が近かった事もあって一応関係を築いていたからさ」
「そうだったのか」
「それでバハムスに来たイアナさんは早速王城でその実力を発揮して、仕事の効率化とか考えてくれたから城で働いている貴族達も助かってるんだよ」
「なるほど」
「で、ここからなんだけど、イアナさんは王城でユーリと出会ったんだよ」
「王城で?」
「ああ」
これが二人の初めての出会いだったんだよな。
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