孤児院
今、俺達はある場所へと向かっている。
「あ、見えて来た」
俺達が向かったのは孤児院だ。
親がいない子達が暮らしている場所であり、うちで働いている使用人ユーリ、ルティ、レティの実家と言っても良いだろう。
「ありがとう若、この量はさすがに運びきれなかったからね」
「問題ないさ」
「シルフィスタ王女とシェフィーネ王女にも手伝っていただいて申し訳ないわね」
「気にするな、私がやりたいからやっただけだ」
「ん、気にしないで」
「ふふ、ありがとう、エドウィン様も手伝ってもらってありがとう、重くないかしら?」
「いや、問題ない」
そうエドウィンは答える。
俺達は今大きなカゴを持って孤児院に向かっている。
このカゴの中身を孤児院に届けるためだ。
「さあ、着いたわよ」
孤児院につき中に入ると子供達が外で遊んでいる。
子供達が俺達に気づくとこっちに来た。
「あ、ユーリさん、お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
「ユーリさん、お帰りなさい」
「お帰りなさい」
「あ、ルティとレティもいる」
「呼び捨てにしてんじゃないわよ」
「さんをつけなさい」
ルティとレティはそう子供達に言う。
「院長、帰ったわよ」
「あら、ユーリ、ルティにレティもお帰りなさい」
ユーリが挨拶をしたのはこの孤児院にいる院長だ。
「まあ、ケイネス様にシルフィスタ王女にシェフィーネ王女」
俺達に気づくと院長は頭を下げる。
「そう畏まらなくて良いよ、院長」
「ああ、今日は孤児院の子供達に届け物を持って来たんだから」
「届け物ですか?」
「ああ、実は最近いろんなパンを作ったんだけど、たくさん作ったから孤児院の子達に食べてもらおうかなと思って持って来たんだ」
結構作ったからなぁ。
さすがにここ最近毎日パンだったから皆あきてくる頃だったし、だったら孤児院の育ち盛りの子供達に持って行ってあげようって話になったんだよな。
「まあ、それはありがとうございます、最近パン屋に色々な種類のパンが増えましたが、まさかそれを持って来てくださるとは」
「まあ、余り物って感じで申し訳ないけど」
「とんでもないです、子供達も喜びます、たくさんのパンが増えたから最近は白パンなどの柔らかいパンもたまには買えるようになったのですが、新しく増えたパンは中々買えませんので」
そう、院長の言うようにたくさんのパンが一気に増えたから平民でもたまには白パンが食べられるくらいには白パンが安くなったのだ。
しかし、それでもたまにはってくらいで毎日買えるわけではない。
ジャムパンやクリームパンも平民でも買えるくらいの値段でもこちらもやはりたまにはって感じだ。
固い黒パンに比べて柔らかいパンだからたまにしか買えないって感じなのだろう。
それでも全く買えないからたまには買えるようになっただけで平民達にとってはとても喜ばれてるそうだ。
「そろそろお昼だし、子供達にたくさん食べてもらうと良いよ」
「ありがとうございます、早速準備をしましょうか」
そう言って院長は孤児院にいる他の大人達と一緒にお昼の準備をする。
子供達もできる範囲でお手伝いをしている。
俺達も持って来たカゴを開けて中に入っているたくさんのパンを出して準備を手伝うのだった。
「ユーリ、お帰りなさい」
「ええ、ただいま」
ユーリに話し掛ける女性、その両腕には赤ちゃんが抱かれている。
赤ちゃんはユーリに気づくと両手を前に出す。
「あら、起こしちゃったかしら」
「大丈夫、さっき起きたばかりだから」
「そう」
ユーリは愛おしそうに赤ちゃんを見る。
「ケイネス様、来てくださりありがとうございます、シルフィスタ王女にシェフィーネ王女も」
女性は俺達を見ると挨拶をする。
「あなたは、もしかしてガルドム王国第一王子のエドウィン殿下ですか?」
「ええ、あなたは」
「ユーリの奥さんだよ」
「イアナと申します」
「ユーリの、と言う事はその子は」
「娘のユナよ」
ユーリがエドウィンに娘のユナを紹介する。
去年産まれたばかりだったな。
「おお、ユナ、元気そうだな」
「かわいい」
シルとシェフィーネ王女がユナを見る。
「ケイネス、もしかしてだけど、彼女は」
「あ、もしかして気づいたか?」
「ああ、何となくだが」
「まあ、その話は後にしようか」
そろそろお昼だしな。
子供達も待ちきれない様子だし。
「子供達、たくさんのパンを持って来てくれたケイネス様達にお礼を言いましょう」
『ありがとうございます』
「では、いただきましょう」
院長が言うと子供達は好きなパンを手に取って食べる。
たくさんあるからたくさん食べな。
「美味しい」
「うめー」
子供達は美味しそうに食べている。
気に入ってくれて良かったよ。
「ほら、そんなに急いで食べたら喉に詰まるわよ、ゆっくり食べなさい」
「たくさんあるし、パンは逃げないよ」
ルティとレティが子供達に言う。
孤児院の中では二人は子供達のお姉さんだもんな。
お昼を食べ終えたらそれぞれ自由な時間を過ごしていた。
「ルティとレティが鬼だー」
「逃げろー」
「鬼が来たー」
「やーい、捕まえられるもんなら捕まえてみろー」
「相変わらず生意気な事を言うわね、アニス様とは大違い」
「アニス様がいかに礼儀正しいお方かよくわかるわ」
「レティ、やるわよ」
「ええ、姉様」
ルティとレティは小さい子供達と鬼ごっこをしている。
二人が鬼のようだな。
「やあー!!」
「威勢は良いが動きが単調だ、次」
別の所ではシルが少し大きい子供達に木剣で相手をしているようだ。
ここの孤児院の子達はユーリが戦い方や護身術のやり方を教えたりしている。
親がいないからこそ自分の身を守る手段が必要になる。
それに将来冒険者になりたいと言う子もいるかもしれない。
そう考えると覚えておいて損はないはずだ。
「お姉ちゃん、絵本読んで」
「ん、良いよ」
また別の所ではシェフィーネ王女が子供達に絵本を読んでいる。
無表情だけどどこか優しそうな感じだ。
あの子達もそれが何となくわかってるからシェフィーネ王女に絵本を読んでもらいたいと思ったんだろう。
子供達はそう言うの何となくわかるらしいからな。
そして俺はそんな楽しそうな子供達を眺めているのだった。
「ケイネス」
するとエドウィンが話し掛ける。
「どうした?」
「いや、こんな事もやっていたんだなって」
「まあ、時々だけどな」
そう、俺は時々この孤児院に来ている。
その時に一緒に遊んだり、シルみたいに木剣で子供達と模擬戦の相手をしたりもしている。
「時々か、それでも領民達と関わっているんだな」
「親父がそうしてたから俺もそうしてるって感じだ、けど悪くないぞ、貴族同士の関わりだけでは得られない学びだってあるからな」
「城にいた時はそう言った機会はなかったが、確かにこれは貴族同士の関わりだけでは学べない事だな、貴族は平民より多くの事を学べるが、こう言った事について書かれている本はなかったからな」
「ああ、こう言った本に書いてない事を学べる、それは決して無駄ではない」
そう、身分など関係なく誰かとの関わりで自分が得られなかった学びを得られる事もある。
「そうかもしれないな、それとケイネス、さっきの話だが」
「ん? ああ、イアナさんの事か?」
「ああ、もしかして彼女は、貴族の生まれではないか?」
そうエドウィンは言うのだった。
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