強さの秘密
エドウィンの基礎体力がマシになったのでそろそろ俺がドラゴンを倒した時に感じた違和感の正体をカホさんに教えてもらうために俺達はモンスターのいる森へと到着する。
「ふむ、この辺りでよいかのう」
カホさんは立ち止まって森の中を見る。
「ふむ、たくさんの妖怪がおるのう、今のエド坊が出会ったら間違いなく瞬殺される数は、ざっと数百以上じゃのう、まだまだ頑張らんといかんぞ」
「ようかい?」
「東国でのモンスターの呼び名だよ」
エドウィンの疑問に俺が答えるとエドウィンは納得する。
「なるほど、でも何でそんなハッキリとわかるんだ? 何も見えないのに」
「まあ、そうじゃろうな、じゃが他人事ではないぞ、お前さんも会得しなければならんものじゃからのう、気を扱う事を」
「気?」
「おっと、すまんのう、どうも東国での呼び方で言ってしまうのじゃ、気とはいわゆる魔力の事じゃよ」
「魔力? 魔力って魔法使いが魔法を出す時に使う力の事か?」
「その通りじゃ、おや、ちょうど良いタイミングじゃのう」
カホさんが言うと森の奥から人と同じように立っているが牛のような顔と巨大な斧を持っている。
「ミノタウロスだな、しかも全身が赤い、ミノタウロスよりも上の個体、レッドミノタウロスだな」
「ミノタウロスは凶暴なモンスターでレッドミノタウロスはさらに凶暴だから気をつけた方が良い」
「のんきに言ってる場合か!!」
俺とシルがレッドミノタウロスの説明をしているがエドウィンは焦っているようだ。
場慣れしてないからなぁ。
「ふむ、ちょうどよいのう、さてエド坊、今から魔力についての説明をするぞ」
「いやカホさん!! 前!!」
エドウィンが指を差すとレッドミノタウロスは斧を持った腕を振り上げる。
「大丈夫じゃよ、赤牛は斧を振り上げて儂に降ろそうとしとるんじゃろ?」
そう言ってカホさんが横にずれるとカホさんの隣に斧が振り下ろされた。
「え?」
エドウィンが驚くのも無理もない。
何故ならカホさんはレッドミノタウロスに背を向けたままわかっているかのように躱したんだから。
「説明を続けるが、魔力とは妖術使い、ああ、妖術使いとは東国での魔法使いの呼び名でのう、多くの者が魔力は魔法使いだけにしかないと思っているそうじゃが本来は魔法使いじゃなくても誰にでもある力なのじゃよ」
「え?」
「魔力は魔法を出すためだけに使われる物じゃない、身体に纏わせる事で身体能力を上げさせる事ができるのじゃ、こんな風にのう」
そう言ってカホさんは思い切りジャンプをすると自分よりも何倍も大きなレッドミノタウロスの頭上へと飛ぶ。
「モオッ!?」
「ほい」
カホさんはレッドミノタウロスの頭を殴るとそのままレッドミノタウロスは地面にたたきつけられる。
「このように足に魔力を込めて思い切りジャンプすれば空高く飛び上がる事ができるのじゃ、見覚えはないか?」
「あ、ケイネスがドラゴンと戦った時、ジャンプで空高く飛んでいるドラゴンの頭上を取った事がある、それがこの力なのか?」
エドウィンの言葉にカホさんは頷く。
「その通りじゃ、じゃがそれだけではないのじゃ」
「モオーッ!!」
「おっと」
レッドミノタウロスが起き上がり斧を振り下ろすがカホさんは背を向けたまま躱す。
「魔力は身体を強化させるだけでなく感覚も強化される、そうすると周りにいる生物や木や石などと言ったもの、そして相手がどんな動きをするのかも目を閉じていてもわかるようになるのじゃ」
「!! 剣の模擬戦の時にケイネスやシルフィスタ殿が目を閉じていても私の動きがあらかじめわかっていたように対処できたのはこれだったのか」
「そうじゃ、ちなみに目が見えない者も魔力を扱えるようになった事で誰の手も借りずに目が見えている者と同じように生活ができるようになったのじゃ」
カホさんの言う事は本当だ。
目が見えなくて誰かの手を借りなければ日常生活が困難だった者も魔力が扱えるようになった事で周りに何があるのかがわかるようになり一人で支障なく生活できるようになったそうだ。
さらに鍛えれば目が見えなくとも戦闘ができるようになる。
「モオッ!!!」
レッドミノタウロスは斧を振り下ろすがカホさんはよけずに腕で斧を受け止める。
「モオッ!!?」
レッドミノタウロスは驚いている。
それもそのはず、何故ならカホさんは振り下ろされた斧を腕で防ぐように受け止めているのだから。
斧はカホさんの腕を切り落とすどころかケガ一つ与えられずに受け止められていた。
「ふむ、ほいっと」
「モオッ!!?」
カホさんは受け止めた腕で斧を押し返すとレッドミノタウロスは態勢を崩して後ろに倒れる。
「魔力は当然攻撃にも使える、ほれ、エド坊これを持つのじゃ」
カホさんは近くに落ちてたそれなりの大きさの石を拾いエドウィンに渡す。
「その石を強く握ってみるのじゃ」
カホさんに言われた通りにエドウィンは石を強く握るが石は何ともない。
「ほれ、貸してみるのじゃ」
エドウィンはカホさんに石を渡す。
「このように普通は石を強く握ったところで何もないのじゃが、手に魔力を込めると」
今度はカホさんが強く握ると石は粉々に砕けた。
「石が砕けた!?」
「これが魔力の凄いところじゃ、身体強化ができると言う事は当然攻撃や防御にも使える、今の儂は普通に十歳の女の子の身体じゃが、魔力を手に込めるだけで固い石を砕くくらいの握力になるのじゃ、拳に込めて殴ったり足に込めて蹴ったりするだけでも相当な威力となるし、指だけに魔力を込めれば」
そう言ってカホさんは近くにあった岩にデコピンをすると岩の一部が砕ける。
「このように指一本のデコピンだけで岩を砕く事も可能なのじゃ」
「何て威力だ、こんなの人間がくらったらひとたまりもないじゃないか」
「その通りじゃ、攻撃面でも強力じゃが防御面でも優れておるのじゃ、魔力で身体強化すれば自身の身体を鉄よりも固い身体にする事もでき剣などの武器を素手で防ぐ事も可能じゃ」
「さっきカホさんが斧を腕で防げたのも魔力で鉄以上の固さにしていたからか」
「そうじゃ、しかも身体強化じゃから当然」
そこまで言うとカホさんはその場から消える。
「移動する速さも上がると言うわけじゃ」
「な!?」
カホさんは一瞬でエドウィンの背後を取りエドウィンは驚いて振り向く。
「全然わからなかった、いきなり消えたように見えたから」
「そうじゃのう、じゃが魔力を扱えるようになれば今の儂の速さも目で追えるようになるのじゃ」
「さらに言うと、魔力を込めたら素手で魔法を受け止めたりただの武器で魔法を切ったりする事もできるぞ」
「そうなのか!?」
シルの言葉にエドウィンは驚く。
そりゃ魔法を素手でどうにかできると言われたらな。
「モオーッ!!」
ここで倒れていたレッドミノタウロスが起き上がる。
「身体強化だけでもかなりのものじゃが、魔力はこんな事もできるのじゃ」
「モオーッ!!」
「静かにせい」
「モッ!!?」
カホさんが睨むとレッドミノタウロスはたじろいで静かになる。
「止まった?」
「儂が魔力で威圧したのじゃ、魔力を開放する感じでやれば威圧や殺気として相手に放ち感じさせる事ができるのじゃ」
「威圧や殺気を感じさせる、そんな事もできるのか」
「そうじゃ、今儂はレッドミノタウロスのみに向けて放ったが、これはちゃんと鍛えてコントロールしなければ周りを巻き込んでしまうからちゃんとコントロールできぬうちは使わない事じゃな」
「モ、モォ、モオオオオオオオオオオオオオオオーッ!!!」
レッドミノタウロスは恐怖を奮い立たせて斧を振り上げる。
「ふむ、実力差がわかっても逃げずに戦う道を選ぶか、エド坊、よく見ておくのじゃ、魔力にはこんな使い方もあるのじゃ」
カホさんはその場でジャンプしてレッドミノタウロスの首を素手で横に一閃するとレッドミノタウロスの首は地面に落ちそしてレッドミノタウロスの身体も地面に倒れるのだった。
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