過去話 大会
「王家主催の大会?」
親父が出した用紙にはそう書かれていた。
「そうだ、王家主催の大会、それに出場してもらう」
「大会の出場条件は十歳である事か」
確かに俺は十歳だから大会への出場条件を満たしているな。
けど何で十歳なんだ?
「大会の内容は単純に模擬戦による形式で男性、女性関係なく出場できる」
「女性も出場できるの?」
「ああ、女性でも騎士の家系の生まれや魔法使いがいるだろ? そう言った者達が出場するそうだ、その大会には騎士団と魔法師団も見るからな、有能な人材がいたら将来スカウトするみたいな感じだろう」
「なるほど」
「腕に自信のある者がたくさん出場する、お前も同年代との腕試しに良いと思ってな、出場したらどうかと思ったんだ」
「うーん」
「どうだ? 同い年と戦える機会なんてここにいても滅多にないし、今の自分が同い年の中だとどれくらいの強さなのかわかるし、友達だってできるかもしれないぞ?」
「やけにこの大会の出場を薦めて来るなぁ、なんかあるの?」
「いや、特にはないぞ、だがせっかくだからなと思ってだな」
「・・・・・・わかったよ、大会に出場すれば良いんだろ?」
「おお、出てくれるか」
「その代わり、一回戦で負けても文句言わないでくれよ」
「がっはっは!! そこは心配していないさ」
こうして俺は王家が主催する大会に出場する事が決まった。
それにしても親父、何だかやけに俺にこの大会に出場させたがっている感じだったな。
それから大会に向けての特訓を始める事にした。
と言っても、やる事は今までと何も変わらないんだけどな。
「明日はいよいよ大会ですね、いよいよケイネス様の強さを王都中の者達が知る事になるでしょうね」
「随分と嬉しそうだなルート」
「当然です、リカード家を辺境だとバカにしてケイネス様を見下している者達もいますからね、そんな無知なる者達の度肝を抜かせてやりましょう」
「お、おう」
ルートがやけにやる気満々だな。
忠誠心が高いのは良いけどさ。
「ですが、実際辺境の男爵家をバカにする者達はまだまだおりますな」
そう言うのは料理長をしているジョルジュである。
ジョルジュは親父が若い時から使用人として仕えていて現在は料理長をしている。
「先代の陛下の代で少しずつ実力のある者は平民であろうとも評価されるようになり、今代の陛下になってから今は実力主義になってきましたが、それでも納得いかない貴族達は多いですね、反王家派の者達も未だにおりますし」
「はっ、恵まれた家系の者達が何も持たない者達より下となるのが死んでも認めたくないと言う事だろうな、お貴族様は相当プライドが高いからな、平民を下々とか下等とか底辺とか言う者達もいるしな」
ネロナが銃の手入れをしながら言う。
彼女は元々平民よりさらに貧しいスラム街の出身で貴族から金品ではなく買い物で買ったパンなどの食料を奪って生活をしていたんだが、その身体能力を見込まれて母さんに誘われて使用人として働く事になった。
「特に、私のように平民より下のスラム街出身の者に負けたとなったら、お貴族様のプライドはもうボロボロだろうな」
「ネロナ、リカード家の使用人である以上、自分自身でも自虐するものじゃないぞ」
「ルートの言う通りだ、お前は見込まれてここに来たんだ、使用人が自身を低く評価する事は仕える主の評価にも繋がるんだからな」
「あっはっは、これは失礼した、以後気をつけるとするよ」
ルートとジョルジュに注意されたネロナは笑って謝罪をする。
仲が良いよな。
「とにかく、思いっきりやれば良いさ、若なら良いところまで行くと思うぞ」
「その通り、ケイネス様の実力なら決勝まで余裕で行けるだろう」
「確かにケイネス様の実力なら優勝も夢ではない」
ネロナに同意するようにルートとジョルジュも言うが、そんな期待するなよぉ。
それから俺は今日の勉強をする。
貴族の子に生まれたからにはちゃんと勉強して知識を得ないとな。
「今日の勉強はここまでにしましょう」
俺の勉強を見てくれているフレイアが言う。
彼女はルートと幼馴染でルートが親父に誘われた時にルートが彼女も頭が良いと言ったのでルートと一緒にうちの使用人として働いている。
彼女はメイドより主にリカード家の財産管理や書類整理などの秘書的な仕事をしてもらっている。
「まだ勉強が終わる時間じゃないけど」
「明日は王家主催の大会ですからね、早めに終わらせて明日に備えてもらいます、ケイネス様は覚えが良いので問題ありません」
眼鏡を上げながらフレイアが言う。
比べる相手がいないから実感がないがどうやら俺は覚えが良いらしい。
「ケイネス様の実力なら良いところに行くのは間違いないですが油断は禁物、何事も何があるかわかりませんから」
「ルート達も同じように言ってるけど、皆俺の事高く評価し過ぎてないか?」
「実際に見て判断しています、お世辞でも何でもありません、ただ事実を申しているだけです」
「うーん、変に期待されてもなぁ」
あんまり期待掛けないでくれよ。
これでダメだった時の落胆が怖いんだから。
その日の晩は俺の好きなものが出されていた。
「明日は若の晴れ舞台だからねぇ、しっかり食べな」
そう言うのは料理人のラキム。
彼女もジョルジュと同じで親父が若い時から使用人をしている。
写真でしか見た事ないが、今は鍛え抜かれたたくましい体型をしているが若い頃はとんでもない美少女メイドだったんだよ。
「まあ、若なら問題ないから余裕だと思うけど」
同じく料理人のシオンが言う。
シオンは元は闇ギルドに所属していたんだけど色々あって我が家の使用人になったんだ。
「皆かなり期待しているけど、あんまり期待しない方が良いと思うぞ」
「んー? だって若ちゃん実際強いじゃん」
そうミスチーが言う。
彼女も我が家の使用人でしかも魔法が使える魔法使いである。
見た目は幼く見えるがルート達より年上である。
「確かに、ケイネス様の強さなら期待するのも無理ありませんね」
そうカリーナが言う。
彼女はシオンと同じ元は闇ギルドに所属していてシオンと組んでいたんだがまあこっちも色々あって我が家の使用人として働く事になった。
「まあ何だケイネス、お前なら問題ないと言う事だ、優勝を狙っていけ」
「皆してそんなに期待するなよ」
「ふふ、頑張りなさいケイネス、アニスも応援しているわよ」
「あー」
母さんと母さんに抱かれている妹のアニスが俺を応援している。
一歳になったばかりのアニスにまで期待されているなら、お兄ちゃんとして頑張らないといけないか。
けどそんなに期待されても期待はずれな結果になった時の落差が怖いな。
そんな事を思いながら俺は大会当日を迎えるのだった。
読んでいただきありがとうございます。
本日二話目の投稿です。
面白かったらブクマと評価をよろしくお願いします。




