ダブルカバー
「く・・・っ!この・・・」
警報が鳴り響くコクピットの中、フィオナは苦悶の表情を浮かべながら操縦桿を捻り、F-16に複雑な軌道を描かせていた。
ミサイルの追尾が中々かわせない。
躍起になって襲い来る強烈なGに耐えながら機体を振り回す。
不意に警報が沈黙する。
「やった・・・」
ミサイルを回避した事に安堵し、大きく息を吐きながらフィオナは機体を安定させた。
しかし、再び警報が響き新たなミサイルの接近を告げる。
「また!?」
うんざりした様な声を上げフィオナは回避機動を再開した。
「もうフレアはないのよ!」
「ケチャップウサギ、俺に任せろ。」
フィオナの悲鳴のような叫びにルキの声が返ってくる。
そして、警報が沈黙する。
フィオナが後ろを振り返ると、ルキのJF-17がミサイルを引き連れ離脱していくのが見えた。
「・・・礼を言うわ。」
バツが悪そうにフィオナが言う。
「ちょうど近くにいた・・・あっ!」
発言の途中でルキが声を上げる。
「・・・ウシャンカ、被弾。」
「ちょっと、何やってんのよ・・・」
フィオナが呆れたような声を漏らした。
「オチがついたな。ウシャンカ、大丈夫か?」
一言を添え、ヒロアキが安否を気遣う。
「どうにかまだ飛べる。」
「了解。ケチャップウサギ、ウシャンカをカバーしてやってくれ。」
報告を受け淡々と指示を出すヒロアキ。
「了解。」
フィオナは短く答えると、JF-17が離脱していった方向にF-16の機首を向けた。
そして、何十秒を経たないうちに黒煙を引きながら飛行するJF-17を発見する。
「見つけた。ウシャンカ、後ろにつくわ。」
「面目ない。」
フィオナがJF-17の斜め後ろにF-16を寄せると、ルキは申し訳なさそうに言った。
JF-17は機体後部の一部が損傷し、黒煙を噴いているものの飛行は安定している。しかし、油断は出来ない。
「結局、あの脱走兵はどうなったんだ?」
不意にルキが呟く。
「・・・それ、私に聞いてる?」
周囲の警戒をしながらフィオナが聞き返す。
「半分独り言。」
「そう。まあ、この状況じゃ生きてはいないでしょうね。・・・もしかして心配してるの?」
「いや、全く。寧ろ俺が直々に始末してやりたいね。」
ルキは即答すると、悪態も付け加えた。
無理もない結果的に機体が壊れてしまったのだ。
そして、再びミサイルアラートが鳴り響く。
「ここまでか・・・ベイルアウトする。」
ため息混じりにルキが悔しそうに宣言する。
「待って。借りを返すわ。」
フィオナはそう言ってF-16をJF-17の背後につけ、ミサイルの誘導を引き受けた。
「このまま行けば防空圏よ。」
そして、そのままF-16は急旋回をし黒い尾を引くJF-17から離れていく。
「感謝する。墜ちるなよ。」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ。」
「ウシャンカ、離脱完了。」
「了解。こちらポラリス、各機状況を報告。」
ルキからの報告を受け取った管制官が改めて各機に情報を求める。
「こちらオフィサーリーダー、二機やられた。」
「こちらシーニーリーダー、グリズリーとともに離脱完了。」
「く・・・っ!この・・・」
次々と生存報告が上がる中、フィオナはまたも苦悶の表情を浮かべていた。
「ケチャップウサギ、アールグレイ、応答しろ。」
「・・・こちらケチャップウサギ、回避機動中・・・!」
管制官からの呼び出しにフィオナがどうにか声を絞り出す。
「了解。」
「あ・・・ヤバ・・・」
連続で襲い来るGに限界を迎えつつあるフィオナの手から、力がじわじわと抜けていく。
「ケチャップウサギ、助けに来たわ。」
不意にメイブの声が響き、警報がピタリと止んだ。
ふと横を見るとメイブの乗るタイフーンが大量の火の玉をバラ撒きながらF-16を追い抜いていった。
「ね、姉さん!?」
斜め前についたタイフーンを見てフィオナは驚きの声を上げる。
「アールグレイよ。ついてらっしゃい。」
フィオナの発言をメイブが訂正すると、タイフーンは鋭く旋回をしながら高度を下げていった。
「ああ、待って!」
フィオナが慌ててタイフーンを追う。
「こちらアールグレイ、ケチャップウサギとともに離脱中。」
「了解。確実に帰還しろ。」
そして、旋回を終えた二機はフルスロットルで空域を離脱するのであった。




