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エスケープキラー

 その日、スクランブル待機をしていたシーニー小隊一同は、待機室に備え付けられた液晶テレビから流れる衝撃映像特集に釘付けになっていた。

「あ、これ見た事あるやつだ。・・・」

「ネタバレはアカンで。」

 グリルズは画面を見たまま、言葉を繋ごうとするルキを制す。

「そんな事しねぇって。」

 苦笑いをするルキを尻目に映像が進行する。

 そして、オチが流れる寸でのところで鳴り響く警報。弾かれたようにドタドタと部屋を出ていく小隊員達。

 

「ああん!もう少しだったのに〜!」

 薄曇りの空をV字隊型で飛ぶ多種多様の五機の戦闘機の内、最右翼のF-16に乗るフィオナが、映像のオチを見れなかった事に悔しそうな声を上げる。

「教えてやろうか?」

 JF-17に乗るルキがニヤニヤ笑いながら無線越しに言う。

「結構よ。自分で調べるわ。」

「仲がよろしいようで」

「どこが?」

 編隊の先頭を飛ぶF-2のコクピットからヒロアキは茶化すが、ルキは鼻で笑った。

「私語は慎め。」

 管制官が通信に入り緩んだ空気が一気に引き締まる。

 そして、状況を発表していく。

「ターゲットは一機、現在こちらに向けて飛行中。方位は・・・」

 

「逆方向ではありませんこと?」

 伝えられた方位にメイブは怪訝な声を上げた。

 示された方角は我が方だ。

「脱走兵だ。現在、専門部隊のオフィサー隊四機が追跡中。シーニー隊はバックアップに回れ。」

「そうでしたか。」

 納得するメイブ。

 兵士が航空機で脱走することはたまにある。そういう輩を始末するのが、司令部直轄のオフィサー隊の仕事だ。

 そして、管制官によって脱走兵の情報が読み上げられていく。

「この名前は・・・」

「ああ。」

 脱走兵の氏名を聞いたヒロアキとルキが声を漏らす。

 二人ともその名前には聞き覚えがあった。

「あのバカ生きてたのか・・・」

「それでまた脱走とは、とんだ腰抜けだね。」

 その脱走兵は先日、二人が説得を試みたが考えを改めないどころか散々悪態をつきまくった人物だった。

 そして、二人が愚痴っているとF/A-18四機編成の編隊と合流した。

「支援感謝する。こちらはオフィサーリーダーだ。シーニー小隊だな?編隊の後方についてくれ。」

「了解。」

 重量感のある低い声をしたオフィサー隊隊長の指示に従い、ヒロアキが編隊をオフィサー隊の後方に誘導する。

「空中管制機ポラリスよりシーニーリーダー及びウシャンカ。」

 唐突に管制官から指名を受けるヒロアキとルキ。

「脱走機に対して最終警告を出して欲しい。」

「えー、マジ?」

「あんなの何言っても無駄だろ。」

 管制官の要求に不満たらたらの二人。

「貴重なパイロットを失いたくないのが司令部の意向だ。形式的にでもやってくれ。」

「りょーかい。・・・じゃ、ウシャンカ頼む。」

 渋々了承したヒロアキは、ルキに丸投げした。 

「へーへー・・・おい、腰抜け野郎。最終通告だ。直ぐに引き返せ。」

 ルキが不満をそのままに暴言をぶちかます。

「クッソ!この間のサイコパス共か!俺につきまとうんじゃねぇ!」

 心のこもった説得に対して怒鳴り声が返ってくる。

「黙れ。日本国民の恥晒しめ。さっさと戻れ。」

 それに対しうんざりしたような低い声で、短く要件を伝える。

「人殺しのお前らこそ恥晒しだ!俺は戻らんぞ!」

「・・・シーニーリーダー、俺じゃ手に負えん。なんとか言ってやってくれ。」

 やけくそに喚き散らす脱走兵に呆れたルキは、ヒロアキにバトンを渡した。

「了解。・・・先生、お願いします。」

 そして、ヒロアキは早々に受け取ったバトンをオフィサー隊に引き渡す。

「了解した。オフィサー隊、攻撃開始。」

 オフィサーリーダーは快くバトンを引き継ぐと、直ぐさま小隊に攻撃命令を出し本来の任務を実行する。

「丸投げかよ・・・」

「ミサイル命中せず。」

 呆れるルキをよそに淡々と管制官が判定を下す。

「外れただと?命中コースの筈だが?」

 その判定にオフィサーリーダーが信じられないといった声を上げた。

「ターゲットは健在だ。よく狙え。」

「了解・・・。オフィサーリーダー、FOX2!」

 納得がいかない様子のオフィサーリーダーが再度ミサイルを発射する。


「ミサイル、目標から大きく外れている。」

「なんだと?どういう事だ!?」

「待て。様子がおかし・・・」

 管制官の言葉が突如、ノイズによって遮られる。

「を!?」

 突然の事に驚いて声を上げるルキ。

「・・・ポラリス、こちらウシャンカ。聞こえるか?」

 慌てて管制官を呼び出すが応答はない。

「シーニーリーダー、応答しろ。」

 隣を飛ぶF-2のコクピットに視線を向けヒロアキを呼び出す。

 こちらも応答はなく、コクピットのヒロアキから通信不能の手信号が送られてきた。

「ジャミングか・・・」

 ヘッドセットからは相変わらずノイズが流れており、JF-17に搭載されたレーダーも効かない。

 このままでは任務の遂行は不可能だ。

 どうしたものかと考えながらF-2を見やるが、当然のことながらヒロアキにも打つ手はなく現状維持を続けている。このままこの状況が続くのであれば、おそらく撤退になるだろう。

 ルキはぼんやりとそんな感じの予測を立てていると、不意にヘッドセットのノイズがクリアになった。

「通信が回復したようだ。こちらポラリス、各機状況を報告しろ。」

「・・・!」

 管制官からの通信に誰かが答えようとした瞬間、けたたましい警報が鳴り響く。

「回避!多数のミサイルが接近!」

 叫ぶような管制官の言葉に反応するようにして、編隊を構成する機体がフレアを吐き出しながら散り散りになっていく。

「全機、安全な空域まで退避!」

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