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下向きノズル

 ミサイル回避から一夜開けた昼前の格納庫。そこには武器商人クライムと、機体の修理を依頼しに来たルキの姿があった。

「何度も悪いね。」

「別に構わねえけど、こう何度も続くたぁあんた呪われてんじゃないのか?」

 バツが悪そうに笑うルキにクライムが軽口を叩く。

「じゃあ、お祓いの手配もしてもらおうかな。」

「さすがにそいつは扱ってねぇな。」

 ルキの返しにクライムは肩をすくめた。

「冗談はさておき、入庫中はまたミグを貸してくれ。」

「あーその事なんだが・・・」

 代用機の要求にクライムは言葉を濁す。

「何か問題が?」

「定期整備やら貸し出しでちょうど全部出払っててな。」

「そうか・・・じゃ、当分任務は無理だな。」

 歯切れ悪く事情を話すクライムに、ルキは渋い顔をした。

「いや、別の機体が明日届くことになってるんだ。それなら貸せる。」

「じゃあ、それを借りるよ。」

 代用機となりうる機体が届くと聞いたルキの顔から渋みが消え即答する。

「ただ・・・」

「ただ?機体があまりにポンコツとか?」

 再び言葉を詰まらせたクライムに対し、ルキは答えを予測し発言した。

「いや、少し古いがちゃんと使える機体だ。ただ貸し出し条件があるんだ。」

 解答を否定したクライムが少し困ったような顔をする。

「条件?」

「ああ、ある任務への参加だ。」

「またなんか面倒くさそうだけど・・・稼ぎたいからまあ、いいだろう。」

 腕を組み少し考えるが、ここ最近の出費を思い任務への参加を決意する。

「わかった。じゃあ、また明日ここに来てくれ。」


 翌日、ルキがフィオナとグリルズとともにクライムの格納庫へ向かうと、そこには一機の戦闘機が用意されていた。

 全体的に角張ったフォルムに二枚の垂直尾翼、機体にめり込むような形で取り付けられた推力ノズル。そして、何よりの特徴はその推力ノズルが真下を向いている。

 こいつはVTOL機(垂直離着陸機)だ。

「F-35Bなんてよく手に入ったわね。」

「・・・いや、違う。これF-35じゃねぇ。」

 機体をまじまじと見ていたルキが、驚きの声を上げるフィオナを否定する。

「でも、ノズルが下を向いてるわよ?」

 そう言ってフィオナが下向きノズルを指差す。

「確かにそうだけど、F-35にしちゃ随分スマートだ。」

「その通り。F-35の特徴を持ってるが、そいつはF-35じゃない。」

 格納庫の奥からクライムが声を響かせながら現れた。

「ソ連のYak-141やで。」

 グリルズが口を開く。

「正解だグリルズ。こんなマニアックな機体よく知ってるな。」

 クライムが指を指しニヤリと笑う。

「こんな変態、一度知ったら早々忘れられへんで。それにこいつ試作止まりでそんな数は作られなかった筈や。」

「まあ、俺もよくは知らねぇが記録に残ってる以外に十何機か作られたらしい。」

「普通にF-35より入手困難じゃねぇか。よく手に入ったな・・・」

 そう呟きながらルキは機体に近づき、インテークやギアなどのチェックを始めた。

「知り合いが現地の格納庫で眠ってるのを見つけたんだ。」

「なるほどな、あそこにはまだ色々ありそうだな。」

 チェックを終えたルキがクライム達の元に戻ってくる。

「いや、現在進行形で色々見つかってる。」

「そら興味深い話やな。」

 クライムの言葉にグリルズが食いつく。

「ああ今度、酒の肴に聞かしてやるよ。・・・で、ルキ、機体に問題はなかったな?」

「ああ。」

「よし、じゃあ、飛ばし方の練習をするか。」


「おいおい、ふらついてるぞ!」

 晴天の下の駐機場でクライムがトランシーバーにがなる。

 視線の先にはヘリパッドの上空五十メートルの位置に不安定な挙動で静止しようとするYak-141。もちろん乗っているのはルキだ。

「こいつ挙動が地味にシビアで・・・おっとっとっとっとっと・・・!」

 トランシーバーのスピーカーから返ってくるルキの言葉が、途中から素頓狂なものに変わる。

 声に連動してYak-141が急速に横滑りを始める。

「あぶねぇあぶねぇあぶねぇ!」

 クライムが慌てた声を上げるも、Yak-141は安定を取り戻しヘリパッドに戻ってきた。

「はぁ・・・これじゃ任務に参加する前に墜落しちまうよ。」

 ため息混じりにクライムは力なく言った。

「いや、いきなりVTOLを操縦しろってのがそもそも無茶だろ。」

 ルキが正論を吐く。

「そりゃそうだが、緊急事態だ。とにかく任務直前までみっちり練習するから覚悟しとけよ!」

「へいへい。」


「クライムのやつ、珍しく熱くなってるね。」

 クライムの様子を遠巻きに眺めていたヒロアキが涼しい顔で言う。

「当然ですわ。下手をすれば高値で売れる機体と商売相手を同時に失いかねませんもの。」

 ヒロアキと同じく見物していたメイブが答える。

「まあ、当然か。」

 そうして、それから一週間ほどクライムによる特訓が行われるのであった。

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