021
どうも、小悪魔幼女スカーレットちゃんです。
先日の男役が思いの外楽しかったので、男装で過ごしたい今日この頃です。
そもそも前世では日々戦闘でしたから、髪はショートにしていました。銀髪ストレートのショートカットです。
今はお母様譲りの金髪ゆるふわロングなのですが、訓練中鬱陶しいんですよ。纏めてても暑いし。
ドレス着用時にもすぐに戦えるようにするために、あえて日常用のドレスのまま訓練しているのですが、最近は甘ロリドレスが用意されるようになっています。
これってセーラの趣味なのでは?
別に体操服的なヤツでいいのでは?
入学までにはまた伸ばすにしても、基礎訓練中は髪も短くていいのでは?
ということで、今日はこっそり断髪式をしましょう。 先程、セーラはお母様からお茶の用意を頼まれていましたから、今の内です。
良くありますよね、決意を表明するのに髪を束ねてナイフで切り落とすシーン。
さっそく持ってきましたナイフ!
セーラとお母様に見つからないようにやってしまいます。
「いきます!」
ザクッ
「痛いっ!」
毛根が引っ張られて痛いです。
ちょっと涙目です。
髪の毛って結構丈夫なんです。知ってました?
まあ、私も知ってましたけど、束ねた髪なんて、ナイフで切れませんね。ハサミにすれば良かった。
多少は切れたんですけど、まだまだです。
これは裁ちバサミくらいゴツい方が良いかもしれません。そもそも纏めて切るのは無理があるのかも。
ハサミを取りに行ってセーラやお母様に見つかると止められそうなので、チマチマ切る分にはナイフで切りますか。
ザクザクザクッ
うーん、自分では後ろを整えられませんね。カトレアに切ってもらいましょう。
ではカトレアを探しに移動です。
ガチャ
扉を開くとそこにはセーラが立っていました。流石セーラ、私を探し出すのが早い。
セーラが息を飲んだかと思うと、見開いた目から大粒の涙がハラハラとこぼれ落ちました。
「あ、あの、セーラ?」
セーラは無言で崩れ落ちました。
甘ロリドレスにざんばら髪はショッキング映像なのかもしれません。
いや、でも泣かなくてもねぇ。
「お、お嬢様、申し訳ありません。そんな自傷行為に走るほどのストレスを抱えておられたのに気付けないとは、一生の不覚です」
盛大に勘違いしていらっしゃいます。
「いえいえ、セーラ。別にストレスでおかしくなったんじゃないの。ほら、訓練に邪魔でしょ?」
「そ、そんな! 髪はいざとなれば頭を守る防壁にも、敵を穿つ針にもなるのですよ!? レディが御髪を断つなど、出家でもなさるおつもりですか!?」
そんな妖怪みたいなことできるのは、あなただけです。
なんだか大事になってしまいました。
男役がやりたかったとか言ったら叱られてしまいます。
「いや、あの、前世ではね、髪が短かったの! だから短くしたかったの!」
あわあわしてしまいましたよ。
「そ、そうなのですか? せめて切る前に相談していただきたかったです」
だってセーラ止めますもん。切ってくれませんもん。
「ごめんね、セーラ」
でもギュッと抱き付いて素直に謝っておきます。泣くと思いませんでしたから。セーラの涙にこっちがショックですよ。ごめんね。
「いいえ、私こそ至らぬ侍女で申し訳ありません」
「セーラが至らぬ侍女だったら、この世に侍女なんて存在できないよ」
全く、『スカーレット嬢を愛でる会』書記の愛は重いなぁ。ありがたいですけど。
「お嬢様、私が御髪を調えさせていただいてもよろしいですか?」
「もちろん! お願いね!」
「では私が腕によりをかけて可愛く調えさせていただきます」
「あっ、ボーイッシュにしてほしいの」
「ボーイッシュですか? 旦那様と奥様が悲しまれませんでしょうか」
まあ、悲しむんでしょうね。会長と副会長ですから。
「悲しまないように、可愛くボーイッシュに仕上げて? セーラならできるでしょ?」
上目遣いでお願いです。小悪魔発動ですよ。
「はうっ! もちろん、お嬢様はどんな髪型でも愛らしくていらっしゃいます! お任せください!」
よし! やりました!
セーラが味方に付けば、怖い物はありません。カッコ可愛くしてもらいましょう!
セーラは私を鏡台に座らせると散髪用のエプロンを装着してくれました。
いつの間にか用意されたハサミが小気味良い音を立てて調髪していきます。
「かなり短めで」
「かなり短めですか・・・ 分かりました。お嬢様のご要望にお応えするのが侍女の努め。お任せください」
調髪が前髪へと至り、髪クズが目に入らないように私は目を閉じました。
軽快なハサミの音だけが心地良く響きます。髪を触られる気持ち良さに、ほんの少し微睡んでしまいそうになりました。
ハサミの音が止まり、私の髪を櫛が優しく梳いていきます。
「できましたよ、お嬢様」
「ほんと!?」
なんということでしょう。
エプロンが取り払われると、そこには小さな貴公子が座っていました。
柔らかで軽やかな金の髪は緩くウェーブがかかり、光に煌めいています。
先程までのお人形のような女の子らしい顔が、今は甘いマスクとなり、母親譲りの軽い垂れ目が、子供らしからぬ色気を醸し出しています。
「どういうこと!?」
「えっ!? お気に召しませんでしたか!?」
「いえ、お気に召しましたけど! そういうことではなく、私甘ロリドレス着てましたよね!?」
どういうことなのでしょう。
まるで儀礼用の軍服のような白スーツです。
上下白のスーツに、所々金糸を使った刺繍があしらわれ、柔らかな金髪と相まって王子よりも王子然としています。
一体いつ着替えさせられたのでしょうか。
むーんぷ○ずむぱわー、めいくあっぷ!というやつでしょうか。セーラむーん!
「髪型に合わせてお色直しさせていただきました。よくお似合いですよ」
「セーラって、本当に色々凄いね!」
「お褒めに預かり、光栄でございます」
いやあ、格好いい!
この私だったら私も婚約してもいいわ!
さっそく自慢しに行きましょう。
「セーラ! お母様に見せに行こう!」
「はい、お嬢様」
久々ですから首筋がスースーします。でも軽くて良いですよ!
心も体も軽やかに、お母様の下へ参ります。スキップしちゃいますよ。
あら、はしたなかったかしら? おほほっ
コンコン
「どうぞ」
「失礼します」
扉を開けて部屋に入ると、皆さんの目が見開かれました。
あっ、お父様が崩れ落ちました。
「おおっ! どうしたのだスカーレット!」
「あらあら、まあまあ!」
伯父様と伯母様が驚きの声を上げます。あれ? いつ来たんですか?
「ね、ねーねが、にーにになっちゃった!」
ガウェイン君のおメメがまん丸です。可愛いですね。
「あらあら、うふふっ」
お母様は一瞬驚いたかと思ったら、いつのまにかその手にカメラが出現しています。
お母様、実は収納魔法使えるのですね?
久々のカメラママンの目がキラリと光ります。
「あれ? なんで全員集合なの? まさか、また例の集会してたの?」
シャッターを切り続けるお母様とうなだれるお父様はさておき、善良な伯父様伯母様は慌て始めました。
「えっ、いや、その、ゴホン。あーなんだったかな?」
「あら、ほら、その、あれですよ、そう! エルゼ皇女!」
「エルゼ皇女?」
なんのこと?という顔をした伯父様の脇腹を、伯母様の肘が抉ります。
「うぐっ! もっと優しくでいいだろ! 思い出した! ゲイルマン帝国のエルゼ皇女がスカーレット達と友達になったのでキャメロット学園に留学したいと言ってきてな」
「まあ! そうなの!?」
エルゼも一緒の学園は楽しみですね! まだモルドレッド王子目当てなんでしょうか? 私達が目当てだったら嬉しいです。
「待ち遠しいなぁ! 早くこの貴公子スカーレットを見せたいのに!」
「にーに?」
ガウェイン君はまだ戸惑っています。私はガウェイン君を抱きしめました。
「ふふふっ、ねーねのままでいいのよ」
「ねーね!」
何だかテンションが上がってきました!
「いいね! 兄弟みたいよ! こっちに笑顔! おぅふ」
気分が良いので、カメラに向かってお色気小悪魔スマイルです。ついでにウインクなんかしちゃいますよ。
あっ、セーラが鼻を押さえています。久しぶりですね。
「いいね! いいよ!」
カメラママンは白熱しております。
「うむ、これはこれで良いな。美しい髪が惜しくもあるが」
「そうですねぇ。良いですねぇ。髪はまた伸びますし。でも、ウイッグじゃダメでしたの?」
伯父様伯母様も立ち直りました。貴公子スタイルもなかなか好評です。
「髪が長いと訓練中邪魔なの」
「訓練か。スカーレットが強くならなくても良いのではないか?」
「ううん、伯父様。先日も魔物が出てきたから、油断しちゃだめなの!」
「魔物か。原因が掴めていないのが問題だな」
「大丈夫さ、伯父上。もっと鍛えて、僕が何とかしてみせるよ」
思い出したように男役です。伯父様にも貴公子スマイルです。
「おぅふ、これは良いものだ!」
「良いものですね!」
「いいわ、いいわよ! 次はバラを咥えてみて!」
いや、それはちょっと。
セーラも差し出さなくていいですから。どこから出したんですか。あなたも収納持ちのんですか?
「奥様! 庭にコーラル・フラワーとソリダスターを植えることをお許しください」
どうしたの、セーラ?
「その心は?」
「コーラル・フラワーは別名『三時の貴公子』『午後三時の天使』、ソリダスターの花言葉は『永遠の少年』でございます」
「エクセレント! ASAPで手配して!」
ああ、ちょうど午後三時のお茶時ですもんね。って、違うよ!
あなた園芸が趣味だったんですか!?
何故そんなに花に詳しいのですか!?




