遺品回収商会
※このお話は世紀末な奴らがファンタジー世界で暴れているお話です。今回はファンタジーの地の世界の人のお話。
遺品回収します。そのお店にはそう書かれていた。
冒険者稼業をしているとその道半ばでうっかり命を落としてしまう者もそれなりに多い。少なくとも天寿を全うできる冒険者なんて冒険してるとは言えないだろう。この店【遺品回収商会】はそんな冒険中に無くなってしまった人の落としてしまった遺品を回収するサービスを生業としている隙間産業だ。
「はいはい、こっちの書類終わったらそっちの山片付けてね」
「ああ、こっちは終わったよ。やれやれ、それでもまだ午後いっぱいかかってしまいそうだ」
会長のゴルドレイクとその弟にして副会長のシルバリオはこの日、依頼に関する書類の整理で忙しかった。二人共まだ30代半ばにも関わらず、冒険者ギルドでは殿堂入りしている凄腕なのだが、現在は専ら遺品回収商会を切り盛りするのに手一杯で、実務は商会の部下に任せていることが多い。余程の難事が手漉きの時にこない限りは二人共書類仕事で忙殺されている。
午後を過ぎ、粗方書類が片付いたところで依頼の状況を確認していく。
「ストーン班帰還済み。水晶の遺跡内に残された折れた剣を回収。アメジスト班は明日の朝方に目処がつくようだ」
「ああ、よかった。こっちも問題ないようだよ。テツオ班が探索してた砂の回廊のペンダントもブレイ班の機械の塔の杖もちゃんと依頼主にお渡し完了したようだよ」
遺品回収商会では回収パーティを複数同時に動かし、それぞれの遺品回収を日夜行っている。
今日の回収依頼は彼らの帰還を以って終了となる。一通り今できることが終わった二人はようやく休憩である。あと1時間もあれば日が暮れるかどうかといった時分になっていた。
「しかし、本当によく死ぬなあ」
ゴルドレイクはタバコの紫煙を燻らせながらぽつりと漏らす。
「最近は特にだね。冒険者ギルドの方でも教育には力を入れているみたいだけど、全然間に合ってないんじゃないかな」
シルバリオはメイドに運ばせた紅茶を飲みながら言う。
「はっきり言ってこの商会が儲かるということはよく死人が出てるということだしな。あんまり死なれると俺たちの仕事が終わらん」
「まったくだ」
二人がそんな話をしていると緊急事態用のベルを鳴らす来客が。
「お願い、生き埋めになった仲間を助けて!」
依頼しにきた少女は少し離れた地方の領主の娘だった。貴族の道楽で冒険者になる者がいると聞いたこともあるが、ゴルドレイクもシルバリオもまずそんな輩は相手にしない。命がかかっている仕事に遊ぶや興味本位でこられては迷惑なのだ。しかしこの少女の目は道楽ではない。真剣さを感じる光を放っていた。二人は目でお互いの意思を確認し、少女の話を聞いた。
「って、大規模崩落の救助依頼だと!?」
「うちは遺品回収が専門なんだけどね・・・・・・」
回収するのが生死不明なので、あながち間違えではないが、むしろ冒険者ギルドに頼むべき仕事だと思われる。
「冒険者ギルドにはもう行ったの。でも対応できないって言われて・・・・・・それでここら辺で一番腕のいい人を探したら貴方達だって教えてもらえて・・・・・・」
「一番腕のいい、ねえ。そこまで言われては動かないといけないか」
「店の看板に泥は塗れないしね」
そういうと二人は準備し、直接依頼に取り掛かった。
「で、ここが問題の崩落したダンジョンか。って、これ入り口けっこう埋まってるな。今開けるからち少し離れててくれよ」
ゴルドレイクは土の精霊に働きかけ、トンネルを掘っていく。彼は精霊魔術のエキスパートとして名が売れているだけあり、かなりの速さで入り口は姿を見せた。
「中はかなり広いようだね。さっそく雑魚がお出ましのようだ」
そう言ってシルバリオは2本の剣を同時に抜くと、迷宮から飛び出てきた蛇の魔物を切り裂き、真っ先に中へ飛び込んでいった。シルバリオは銀の閃光の二つ名持ちであり、その強さは冒険者時代Sランクに該当した。大抵の敵はシルバリオが倒し、ゴルドレイクはそのサポートに徹するのが彼らのコンビプレイスタイルである。
「で、お嬢さん?お仲間はどんな格好で?」
中にはいると壁面がうっすらと発光しており、思ったより明るい迷宮である。ただし、これがすべてに適応できるかはまた別であり、念のためゴルドレイクは火の精霊を呼んで視界を確保する。
「ええと、大柄で、頭はハゲてて、トゲのついた防具をしている人と、鎧武者みたいな人、フードかぶった人もいます」
「山賊かな・・・・・・?」
「そういう冗談はちょっと・・・・・・」
二人が少女の仲間の特徴を聞いたもののいまいちピンとこないでいると、少女は奥を指差し叫んだ。
「後ろー!!」
なんとそこにはオーガのような生物が立っていた。シルバリオは慌てず、冷静に剣をふるい、まずはその両腕を斬ろうとするが、オーガもどきは手にした棍棒でその剣を受け止め、膂力のままに振り回し、逆にシルバリオを追い立てた。
「くらえ、サラマンダー!!」
ゴルドレイクはランタン代わりにしていたサラマンダーを援護のために発射した。2m程度の火の塊がシルバリオに襲い掛かるオーガもどきを焼く!
「きゃああああ!?」
少女はそれを見て叫ぶ。しかし二人にかまっている暇は無かった。オーガもどきは超高速で動き、奇妙な拳法を使い始めたのだ。
「ぐわあああ!?」
シルバリオはその拳法を防いだ結果、剣を折られ、サラマンダーはなんと消滅してしまった。
「まずい、まずいぞ、こんなところにこんな奴がいたなんて!!」
「落ち着け兄さん、まだやれる!!」
二人が決死の覚悟で突撃しようとしたそのとき
「ちょっとモヒー!!いい加減にしてよ!!迎えにきたんだから正気に戻りなさい!!」
「ん、クソ女じゃねえか、迎えにきたのか?」
少女はオーガもどきをあっさり懐柔していた。
遺品回収商会のチラシ
何でも捜索します。人骨、装備、財布、猫、遺品ならなんでもです。
何でも掘ります。人骨、お宝、掘るだけでも。
何でも潜ります。海、湖、沼、どこでも回収に。
遺品回収商会へようこそ。
※ちょこっとキャラ紹介
ゼロさん・・・・・・ 一人で先へ進んだ。今回出番はない。
小娘・・・・・・ かなり困った結果遺品回収商会に依頼した少女の正体。名前はまだない。
モヒー・・・・・・埋まっていた。もし掘り起こされなければそのままモンスターになっている。
ゴルドレイク&シルバリオ・・・・・・今回のゲスト。成功した冒険者はこうしてベンチャーを立ち上げている者も。HPはどちらも300前後、けっこう強いが危うくモヒーの餌食になるところだった。
たまには三人称に。




