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城下町の魔法少女  作者: あしま
第四章 剣王祭
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リック・パーソンの剣王祭2

 競技用魔法剣。


 剣王祭で使用される武具であり、シバースが魔力を送り込むだけで殺傷能力の無い魔法剣を作り出す事ができる魔法具である。


 やっぱりというか当然というか、エルダーヴァイン社製。


 約300年ほど前、戦争が減り実戦経験の乏しくなった軍に対して、より実戦に近い形の訓練ができるようにと考案し開発されたのが起源。


 しかしながら使用するにはシバースが絶えず魔力を流し込む必要がある事。殺傷能力が無く怪我の心配は無いけれど、それによって緊張感が無くなり、あまり訓練にならなかった事など評判が悪く、程無く使用されなくなりました。


 それからしばらくして、せっかく開発したのに勿体ない、何か有効な活用法はないか?と模索してた所、剣術競技で使用してみては?となり、剣王祭の前身となる競技会が始まり、200年前に国が主催するようになって現在に至ります。


 なお、現在の技術なら、最初に一定の魔力を流し込めば、常に魔力を送り込まなくても2時間くらいなら効果を維持できる魔法具が開発可能なのだけれど、伝統を重んじる主催者側の意向で開発されないんだとか…



 以上が、普段口数の少ないエルダーヴァイン家当主ダリオさんがやたら饒舌に語った、競技用魔法剣の成り立ちをかいつまんだ話となります。


 相変わらずどういう原理かはさっぱり分かりません。



 さて、映像でしか見たことの無い憧れの魔法具を前にして、さぞやテンション上がってるのではないかと思われたパーソンくんですが、意外とそこには食い付かない。


 それは何故かというと、今から自分と模擬戦をするという人物、メリル・ジョイスが気になってそれどころではないから。


 クルーア・ジョイスの母君である事は聞かされているけど、何故彼女が今楽しそうに模擬戦の準備をしてるのかが分からない。


 何しろ、その出で立ちからは、剣を振るう姿がとても想像できない。


 クルーア・ジョイスの能力はパラノーマルのそれとは別物らしいけれど、その母親もまた同様の能力の持ち主という可能性はあるのだろうか?


 それにしてもだ…


 クルーア・ジョイスの母親という事は、自分の母親と同世代かそれより上のはずである。


 しかし、見た目はやたらに若い…いやノエルさんにしてもだけれど年齢不詳にもほどがある。


「リックくんのパートナーはフェリアちゃんがやってくれる?」


 しかし、一声発するとやはりなんというか…まあ母と同世代なんだなぁ…と感じるのであります。


「はい…わかりました」


「メリルの方はどうするの~」


「アタシの方は…そうだな…せっかくだからリカちゃんやってみる?」


「え?…私ですか?」


 さて、そんな感じで組分けが決まったようで


「そんなに難しくは無いですよ?」


 と、今はダリオさんがピンク髪少女に魔法具の使い方を手ほどきしてる。


 なるほど、彼女もシバースだったのか。


 そういえば、今日呼び出された場所がここ聖グリュフィス聖堂だったのも、最初からこの模擬戦を想定しての事だったのだろう。


 いろいろと納得し始めるパーソンくんだけれども、やはりその模擬戦の相手がメリルさんなのがよく分からない。


 なので


「準備はできたか?リック」


 言いながらこちらに歩いてきたフェリア先生に


「あ、あの…なんで模擬戦の相手がメリルさんなんですか?」


 小声で聞いてみると


「言ってなかったか?あの人がお前に紹介する推薦人だよ」


 という答えが返ってくる。


 なるほど推薦人か、それなら納得が…いや、待て。


 剣王祭の推薦権を持っているのは貴族。それも過去にパラノーマルを輩出した事で貴族階級になった家の当主だけだったはず…


 いや、現役のパラノーマルにも推薦権は有るのか?


 確か近衛のスカーレット・イヅチが「私じゃ出場者だから推薦人にはなれない」と言っていた気がした。


 だとしても


「あの…メリルさんて何者なんですか?」


 言ってはなんだが、孤児院で働いてる一般人にしか見えない女性が、剣王祭の推薦権を持っているのは意味が分からない。


 だから当然の疑問をフェリア先生に投げ掛けた。


「メリルさんは強いよ…」


 いや、そういう事を聞いたのじゃないのだが…ん?


「へ?強い?」


 どういう事だ?


「と言っても、メリルさんが永世剣王になったのは、僕が生まれるよりずっと前だからね?僕も実際に戦う所を見た事は無いんだ」


 はい?今なんて言いました?


 フェリア先生は、メリルさんの事を『永世剣王』と呼んだのですか?


「え?永世剣王?」


「ああ、それも言ってなかったか?」


 はい、聞き間違いでは無い事をパーソンくんは確認しました。


 そういえばヴィジェ・シェリルが言ってたっけ。


 今この国のパラノーマルは6人。


 引退したシノドス・ミスト。


 パトリック・ジオット将軍。


 セガール・ベラトン、スカーレット・イヅチの現役二人。


 殺人鬼ヴィジェ・シェリル。


 そして、永世剣王…


「エステバン…」


 永世剣王エステバンは伝説的な人物。この国の国民なら、その人の話は誰でも少しくらいは聞いた事があるものだ。


 元孤児の女性で、エステバン家の前当主に能力を見いだされて養子になり、13歳の若さで剣王祭初優勝から5連覇して永世剣王に。


 その後、何かトラブルがあって、エステバン家とは絶縁。


 それがきっかけで近衛も辞める事になり、前の国王陛下から自由騎士の権利と称号を得る。


 その後の事は噂でしかないのだけれど、自分が育った孤児院に戻ったとかなんとか…


 ん?…育った孤児院?…



「では、始めてください!」


 いまだ思考の途中のパーソンくんを、シニャック老の掛け声が現実へ呼び戻し、模擬戦が開始される。


「リック君、準備は良いかしら?」


 呆けてるリック・パーソンに、メリル・ジョイスはすぐに攻撃を仕掛けたりはしない。


「は、はい!」


 リック・パーソンの力量を測るのが目的なのだから当然だけれど、しっかりと準備をさせてから


「じゃ、行くよ?」


 言って、大地を蹴る。


 しかし、その勢いに反してメリルの動きはゆったりと…


 というかほとんど動かない。


 とはいえ止まっているのとも違って、ゆっくりだけれど確実に近付いてくる。


 それはさながら、世界がスローモーションになったような感覚を与えて、リックを困惑させる。


 やがてそれは、リックの方がメリルへと吸い寄せられるような感覚へと変わった。


 次の瞬間、リックは僅かな空気が震えを感じる。


 それがリックの右側を走り、後方へ回り込むのを感じて、ようやく目の前のメリルが残像である事に気付く。


 が、遅い。振り返っていては間に合わない。


 リックは咄嗟に魔法剣を逆手に持ち替え、背中に当てるようにして防御する。


 メリルの剣筋によっては受ける事のできない、一種の賭けであったが功を奏し、魔法剣同士の衝突音とは思えない金属音が鳴り響く。


 不安定な体制でメリルの剣撃を受けたリックは、そのまま弾かれてしまうが、その勢いを利用して距離を取り、振り返ってメリルを正面に見据える。


 彼女は既に次の行動に移っている…またもスローモーション。


 リックはそれを当然残像だろうと予測し、全方位警戒をする。


 が、再び自分がメリルの方へと吸い寄せられる感覚に襲われた所で、残像と思い込んでたメリルは、突如猛烈に加速。


 魔法剣を両手持ちにして、力一杯リックに叩きつける。


 慌てはしたものの、それを受けるのは難しくはない。


 けれど、その衝撃でリックは一瞬ぐらついてしまい、次の瞬間メリルの姿を完全に見失う。


 残像すら見当たらないし、神経を研ぎ澄まし前後左右警戒しても気配さえ感じない。


 とはいえ、本当に消えた訳はないし、見える範囲にいないのであれば、そこは安全地帯に違いない。


 そう考えたリックは前方へ飛ぼうとするが、次の瞬間、悪寒を感じてリックが急ブレーキする。


 と、空からメリルが降ってきて大地に剣撃を当てる。


 間一髪でかわした形となった。



「チッ…」


 という、メリルの舌打ちが聞こえた訳ではないけれど、彼女が苛立っていると感じたノエルが


「やっぱり親子だね~」


 と呟いたのとほぼ同時。


 バックステップで距離を取ろうとするリックを風が包み込み、8人のメリル・ジョイスが取り囲む。

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