王妃様ダンジョンに
王妃は純白のウェディングドレスに身を包み、鏡の前で最後の確認をしていた。
今日は特別な日だった。
しかし、結婚式があるわけではない。
向かう先はダンジョン。
そのために、王妃はあえてウェディングドレスを選んでいた。
「準備はできましたわね」
王妃はドレスの裾を整えると、王城の外へ向かった。
そこには、ダンジョンからもたらされたロールスロイスが待っている。
王妃が車へ向かうと、少し離れたところから王が姿を現した。
「私もついて行こう」
「陛下?」
「せっかくダンジョンへ行くのだ。私も一緒に――」
「駄目です」
即座に宰相が遮った。
「なぜだ!」
「王妃様から同行を頼まれておりません」
「……」
「今回、ダンジョンへ向かうのは王妃様です。陛下が勝手について行く話ではありません」
「しかし……」
王はロールスロイスを見る。
「一度くらい乗ってみたいではないか」
「なおさら駄目です」
「なぜだ!」
「王妃様の専用車両だからです」
王は黙り込んだ。
さらに宰相が続ける。
「それに、今回の訪問には王妃様お一人で来るよう、ダンジョン側から指定されています」
「そうなのか?」
「はい」
「……それなら仕方ない」
王は渋々諦めた。
王妃はそんな二人のやり取りを見ていた。
「では、行ってまいりますわ」
「ああ。気をつけてな」
王妃はロールスロイスに乗り込む。
王はその場に残った。
ロールスロイスは王城を出発し、ダンジョンへ向かった。
やがてダンジョン前へ到着すると、すでに騎士団が待機していた。
王妃が車から降りる。
騎士団長がすぐに前へ出た。
「王妃様、お待ちしておりました」
「ご苦労様です」
「宝くじ箱までの安全確保は完了しております。騎士団も配置についております」
周囲を見ると、ダンジョンの入口から内部にかけて騎士たちが配置されている。
王妃が通る場所を確保し、周囲を警戒していた。
「準備できました」
騎士団長が告げる。
「では、行きましょう」
王妃を中心に、一行がダンジョンへ入っていく。
その様子を、少し離れた場所からSランクパーティーが見ていた。
「王妃様だよな?」
「ああ」
「騎士団まであれだけ配置されているのか」
「それだけ重要な場所ってことだろうな」
Sランク冒険者たちは、王妃の一行を眺める。
かつては初心者冒険者が訪れるだけだったダンジョン。
それが今では、王族が訪問する場所になっている。
「国にとって大事なダンジョンなのは間違いないな」
誰もそれを否定しなかった。
王妃は騎士たちに守られながら、ダンジョンの中を進んでいく。
そして、目的地である宝くじ箱の前へ到着した。
「こちらです」
王妃は宝くじ箱を見る。
「ええ」
そして近衛騎士へ告げた。
「ここからは一人で参ります」
「承知しました」
近衛騎士が一礼する。
王妃は案内役の近衛騎士だけを伴い、さらに奥へ進んでいく。
やがて、大きな扉が見えてきた。
「王妃様、こちらがボス部屋です」
近衛騎士が扉の前で止まる。
王妃は扉を見上げる。
「分かりましたわ」
扉がゆっくりと開かれる。
王妃はドレスの裾を整えると、そのまま一人でボス部屋へ入っていった。




