ダンジョン前の町との連係
一方、その頃。
ダンジョンのマスタールームでは、アレンが別のことを考えていた。
「そろそろバスをどうするか決めないとな」
アレンが考えていたのは、ダンジョンとダンジョン前にできた町を結ぶバスだった。
ダンジョン内ではすでにバスが走っている。
問題は、ダンジョンの外だ。
「外で走らせるなら、誰かが運転しないといけないか」
無人で走らせることも考えたが、さすがにいきなりそんなものを町中で走らせるのは難しい。
ならば、運転手を用意すればいい。
あとは動力だ。
「ガソリンの代わりに魔石で動かせるようにすればいい」
ダンジョンには魔石が大量にある。
魔石を動力源として使えるように改造すること自体は、アレンにとってそれほど難しいことではなかった。
「これなら町とダンジョンの行き来も楽になるな」
冒険者だけではない。
商人も、職人も、宿泊客も、ダンジョンで働く人間も利用できる。
ダンジョン前の町は、すでにかなり大きくなっている。
それなら、移動手段を整えればさらに人が増えるだろう。
「まだまだダンジョンも大きくするつもりだしな」
アレンは今後の計画を考えていた。
新しい階層を作る。
設備を増やす。
町との行き来を便利にする。
やりたいことはいくらでもある。
まさか――。
自分が作った60階層に、今まさにSランクパーティーが到達しているなどとは思っていなかった。
そもそもアレンは、Sランクパーティーがダンジョンに来ていることすら知らない。
37階層のリッチを突破できる冒険者がなかなか現れない。
その様子を見て、アレンは思っていた。
「この調子なら、数ヶ月くらい放置しても大丈夫だろ」
37階層まで到達できる冒険者が少ない。
その先へ進める者など、まだまだ先になる。
だから、60階層まで攻略されることなど当分ないと思っていた。
そのため、60階層の設定も途中までしか確認していなかった。
本来なら――。
「60階層にはSランクボスを置く予定だったんだけどな」
アレンは知らない。
60階層に配置する予定だったSランクボスではなく、その先に配置するつもりだったエンシェントドラゴンが、そのまま60階層に残っていることを。
そして、想定より遥かに早く冒険者たちがそこまで到達したことも。
「まあ、まだ時間はあるだろ」
アレンはそう呟き、再びバスの計画へ意識を戻した。
「ダンジョンの外を走らせるなら、まずは車体を用意して……」
その頃、ギルドでは――。
世界で初めてのSSSランクダンジョンが誕生したと、大騒ぎになっていた。
その原因が、ダンジョンマスター本人の単純な設定ミスだとは誰も知らなかった。




