SSSダンジョン
60階層に到着したSランクパーティーは、目の前にある巨大な扉を見上げていた。
「……ここが60階層のボス部屋か」
「51階層から全部Aランクモンスターだったんだ。ここまで来た以上、Aランクより上が出てくるだろうな」
全員が同じことを考えていた。
「Sランクボスじゃないか?」
「俺もそう思う」
「だとしたら、俺たちだけじゃ無理だな」
Sランク冒険者。
それでも、Sランクボスを相手に一人のパーティーだけで勝てるとは思っていない。
「Sランクパーティーが何組か集まって、レイドを組んでどうかってところじゃないか?」
「それくらいは必要だろうな」
普段なら、そんな相手が待っている可能性があるボス部屋には入らない。
だが、このダンジョンには退却できる手段がある。
「姿だけ確認して帰るのはどうだ?」
「姿を見るだけ?」
「そう。戦わない。相手の姿や大きさを確認して、ギルドに報告する」
「それなら意味はあるな」
「勝てない相手と戦う必要はない」
全員が頷いた。
「絶対に戦うなよ」
リーダーが全員を見回す。
「姿を見るだけだ。攻撃するな。近づくな。少しでも危険を感じたら、すぐに戻る」
「分かってる」
「絶対だぞ」
念を押してから、ボス部屋の扉を開ける。
ギィィィ……。
扉が開く。
一歩。
二歩。
そして、全員が奥を見る。
「…………」
言葉が出なかった。
巨大な身体。
圧倒的な存在感。
その姿を見ただけで、身体が本能的に危険を訴えてくる。
「……エンシェントドラゴン」
誰かが呟いた。
「間違えました」
「撤退!」
次の瞬間。
Sランクパーティーは全員でダッシュしていた。
「閉めろ!」
「早く!」
ボス部屋から飛び出し、扉を閉める。
全員が扉から離れたところで、ようやく足を止めた。
「……はぁ……はぁ……」
「なんだよ、あれ……」
「無理だろ!」
「Sランクボスとか、そういう話じゃないぞ!」
全員が騒然としていた。
「姿を見ただけだぞ?」
「それだけで意識を失いそうになったぞ!」
「戦うなって言って正解だったな!」
さっきまで、Sランクボスならレイドを組めば戦えるかもしれない。
そんな話をしていた。
だが、今は誰もそんなことを言わない。
「あれは……俺たちが戦う相手じゃない」
「同感だ」
「絶対に戦うな。ギルドに報告するぞ」
「そうしよう」
Sランクパーティーは即座に撤退を決めた。
そして1階層へ戻ると、すぐにギルドへ向かった。
「60階層を確認しました」
「60階層のボスは?」
ギルド職員が尋ねる。
Sランクパーティーのリーダーは、少し間を置いて答えた。
「エンシェントドラゴンです」
「……エンシェントドラゴン?」
「はい。間違いありません」
ギルド内に緊張が走る。
60階層。
そこに存在していたのは、Sランクを超える存在だった。
これまで確認されたダンジョンに、そのような階層は存在しない。
そして――。
この日、このダンジョンは世界で初めて確認されたSSSランクダンジョンとして認定されることになった。




