Sランクパーティーの金銭事情
Sランク冒険者。
それは、人類の頂点に立つ冒険者たちだ。
一度の依頼で一億を超える報酬を得ることも、珍しくない。
「Sランク冒険者って、ものすごい金持ちなんだろうな」
そんなイメージを持つ者もいるだろう。
確かに、稼ぐ金額だけを見れば間違いなく大金持ちだ。
だが――。
「この剣、いくらだった?」
「五千万」
「こっちは?」
「四千万くらいだったな」
剣一本で数千万。
それも、一本あれば十分というわけではない。
相手によって必要な武器が変わる。
魔法に強い相手。
硬い相手。
素早い相手。
防御を重視しなければならない相手。
それぞれに合わせて武器や防具を使い分ける必要がある。
鎧も盾も安くはない。
さらに、武器は使っていれば消耗する。
修理も必要になる。
つまり――。
稼ぎが大きい分、経費も桁違いだった。
「Sランクになったから金が貯まる、ってわけじゃないんだよな」
「むしろ、金を使わないとSランクを維持できない」
実際、冒険者の間ではこんな話もある。
経費を惜しんで装備を更新せず、稼いだ金を貯め込む冒険者は大成しない。
強くなるために必要なものへ金を使わなければ、いずれ強敵に対応できなくなるからだ。
このSランクパーティーも同じだった。
稼いだ金は、ほとんど装備に回している。
「だから今回の報酬も、ありがたいけどな」
「全部使うことになるだろうな」
50階層まで攻略した今、彼らがやっているのは単純な買い物ではない。
これまで手に入れた装備を一つずつ並べ、50階層までのボスから手に入れたドロップ装備と比較していく。
「これは今使っている盾よりいい」
「こっちは今の鎧のほうが性能が高いな」
「この剣は使える」
「こっちは相手次第だな」
一つずつ確認していく。
Sランク冒険者にとって、装備は命そのものだ。
強そうだから使う。
高価だから使う。
そんな単純な話ではない。
自分たちがこれまで使ってきた装備と比較し、実際の戦闘で役に立つかを考える。
「50階層のドロップ装備、悪くないな」
「Aランクボスのドロップだからな」
「これなら……」
一人が装備を手に取り、少し考える。
「もう一度、50階層のボスと戦ってもいいな」
「報酬になる装備がこれだけ使えるなら、悪くない」
昨日は長時間の戦闘になった。
できれば、もう一度あんな戦いをしたくはない。
それでも――。
使える装備が手に入ると分かれば話は変わる。
「装備のためなら、もう一戦くらいはやるか」
「Sランク冒険者なんだから、それくらいはな」
彼らは新しく手に入れた装備を眺めながら、次の攻略について考え始めた。
稼ぐ。
使う。
そして、また強くなる。
Sランク冒険者にとって、それが当たり前の日常だった。




