SランクパーティーとAランクボス
Sランクパーティーは、50階層のボス部屋へ入った。
扉が閉まる。
その先に待っていたのは、Aランクボス。
「……Aランクか」
「俺たちが今まで倒してきた中でも、最高ランクだな」
Sランクパーティーだからといって、Sランクの魔物を倒した経験があるわけではない。
彼らがこれまで倒してきた最高ランクの魔物は、Aランクだった。
Sランクの魔物と戦ったこともない。
まして、勝てるかどうか分からない相手と、命を懸けて戦うつもりもなかった。
「Sランクの魔物とは戦ったことがないからな」
「勝てるか負けるか分からない相手に挑む必要はない」
「だが、Aランクなら話は別だ」
何度も倒した経験がある。
もちろん、簡単な相手ではない。
Aランクボスともなれば、強敵だ。
それでも――。
「俺たちならやれる」
「そうだな」
これまで積み重ねてきた経験がある。
自分たちの実力にも自信がある。
「行くぞ」
戦闘が始まった。
Aランクボスが動く。
その一撃を見て、全員が身構えた。
「速い!」
攻撃をかわす。
続けて別の攻撃が飛んでくる。
「まだだ!」
盾役が受け止める。
その瞬間、魔法使いが距離を取った。
「攻撃するぞ!」
魔法が飛ぶ。
しかし、ボスは大きく体勢を崩さない。
「効いてはいる!」
「だが、ダメージが少ない!」
一行はすぐに攻め込まなかった。
Aランクボスともなれば、単純に強いだけとは限らない。
初見でしか分からない特殊な攻撃があるかもしれない。
突然、戦い方が変わるかもしれない。
一度の判断ミスが致命傷になる。
「まずは攻撃を見ろ!」
「了解!」
相手の動きを観察する。
攻撃の前兆。
間合い。
攻撃後の隙。
何度も確認する。
そして、わずかな隙を見つけた。
「今だ!」
一気に踏み込む。
剣がボスを捉える。
だが――。
「浅い!」
ダメージは入った。
しかし、思ったほどではない。
「硬いな」
「焦るな。長期戦になる」
一撃で倒せる相手ではない。
それどころか、こちらの攻撃を何度も当てて、ようやく少しずつ削れていく。
ならば、やることは一つ。
「無理に攻めるな!」
「確実に削るぞ!」
攻撃を避ける。
防ぐ。
隙を探す。
見つければ攻撃する。
また距離を取る。
その繰り返しだった。
時間だけが過ぎていく。
「まだ倒れないか!」
「こっちもまだ動ける!」
疲労が蓄積していく。
それでも、一人も焦らなかった。
ここまで来たのは偶然ではない。
Aランクボスを何度も倒してきた経験がある。
そして今、目の前にいる相手もAランクだ。
「あと少しだ!」
「押し切るぞ!」
長い戦闘の果てに、ついにボスの動きが止まった。
巨体が崩れ落ちる。
「……倒した」
「勝ったぞ!」
Sランクパーティー全員が息を吐いた。
Aランクボス。
決して楽な戦いではなかった。
だが――勝った。
「やったな」
「ああ」
そのとき、ボス部屋の中に宝箱が現れた。
「宝箱か」
慎重に確認する。
罠がないことを確かめてから、蓋を開ける。
「装備品だな」
「それと……」
「カードか?」
40階層のときと同じようなカードが入っていた。
そして、ボスを倒したことで次の階層へ続く道も開いている。
「これで51階層にも行ける」
だが、誰もすぐには動かなかった。
「……なあ」
「なんだ?」
「俺、もう帰りたいんだけど」
全員が黙った。
「分かる」
「俺もだ」
50階層のAランクボスとの長期戦。
さすがに疲れた。
「でも、ギルドには報告しないとな」
「そうだ」
「ここまで攻略したんだ。報告は必要だ」
一度戻れば、またボスを倒さなければならない可能性がある。
それでも、報告しないわけにはいかない。
「……帰るか」
「そうだな」
一人が小さく頷く。
「決して布団で寝たいから帰るわけじゃないぞ」
「そうだ。ギルドへの報告が必要だから帰るんだ」
「風呂に入りたいからじゃない」
「もちろんだ」
全員が真剣な顔で頷いた。
「……じゃあ、帰るぞ」
誰も口には出さなかった。
だが、全員が同じことを考えていた。
――今日はホテルの布団で寝たい。




