Sランクパーティーに依頼
あるSランク冒険者パーティーが、冒険者ギルドの応接室に呼ばれていた。
「それで、今回の依頼は?」
リーダーが向かいに座るギルド職員へ尋ねる。
「ダンジョンの調査依頼です」
「ダンジョン?」
パーティーのメンバーが顔を見合わせる。
ダンジョンの調査。
珍しい依頼ではない。
だが、問題はそのダンジョンだった。
「Cランクダンジョンですよね?」
「はい」
「……俺たちが行くような案件じゃないだろ」
リーダーは苦笑した。
Sランク冒険者が、Cランクダンジョンの調査。
もちろん調査そのものが危険というわけではない。
だが、Sランクともなれば、それに見合った依頼を受けることが多い。
わざわざ自分たちが出向かなくても、Cランク程度なら十分に調査できる冒険者はいくらでもいる。
「普通なら、その通りです」
ギルド職員は頷いた。
「ですが、今回のダンジョンは少し事情が違います」
「事情?」
「現在、37階層で攻略が止まっています」
部屋の空気が少し変わった。
「37階層?」
「はい。複数の高ランクパーティーが挑戦していますが、いまだにボスを倒せていません」
「Cランクダンジョンで?」
「それが問題なのです」
ギルド職員は資料を机の上に広げた。
これまでの攻略記録。
37階層へ到達したパーティー。
ボスとの戦闘記録。
撤退した理由。
判明している能力。
そして、現在までの攻略状況。
Sランク冒険者たちは資料へ目を通していく。
「……本当に止まってるな」
「しかも、挑戦したパーティーは一つじゃない」
「それでも誰も突破できていない」
リーダーが資料をめくる。
「それで、俺たちに何をしろと?」
「37階層の調査。そして可能であれば、攻略です」
「可能であれば、ね」
リーダーは資料から顔を上げた。
「37階層の先は?」
「分かっていません」
「分からない?」
「誰も突破できていない以上、その先の情報がないのです」
ギルド職員は続ける。
「だからこそ、今回の依頼をお願いしています」
これまでCランクと認定されていたダンジョン。
しかし、37階層から先が確認できない以上、本当に現在もCランク相当なのか判断できない。
もし37階層より先に、さらに強力なモンスターが配置されているなら。
「Bランク……」
メンバーの一人が呟く。
「あるいはAランク相当になっている可能性もあります」
ギルド職員の言葉に、全員が黙った。
ダンジョンのランクは、確認できている範囲だけで決められるものではない。
その先に何があるのか分からない。
それが今回の最大の問題だった。
「そして、このダンジョンは国が最も重要視しているダンジョンの一つです」
「そこまで?」
「はい。攻略が進むことで得られるものが大きい。だからこそ、37階層でいつまでも停滞しているわけにはいきません」
ギルド職員は一度言葉を切った。
「そこで、今回の依頼料です」
提示された金額を見た瞬間、パーティーの一人が目を見開いた。
「……これ、本当に?」
「本当です」
「調査依頼だぞ?」
「承知しています」
通常のダンジョン調査とは比較にならない金額だった。
それだけ国がこのダンジョンを重視しているということだ。
リーダーは提示された金額をしばらく眺めていた。
そして、口元を上げる。
「なるほどな」
他のメンバーも笑った。
「Sランク冒険者に声をかけるくらいなんだ。面白そうじゃないか」
「それに、誰も突破できない37階層だろ?」
「俺たちが突破できない依頼なんて、そうそうないぞ」
リーダーは立ち上がった。
「受けよう」
こうしてSランク冒険者パーティーは、Cランクダンジョンの調査依頼を引き受けることになった。




