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60階層に到達

アレンはマスタールームの椅子に座り、ダンジョンコアに表示された攻略状況を眺めていた。


「まだ37階層か」


 31階層から36階層までは、順調に攻略が進んでいた。


 もちろん、簡単に突破できるわけではない。


 各階層のボスは、それまでの階層より明確に強くなっている。


 それでも冒険者たちは何度も挑戦し、ボスの攻撃を覚え、装備を整え、少しずつ攻略を進めてきた。


 アレンも、その様子を楽しみながら眺めていた。


 特に31階層から36階層のボスには、37階層攻略を意識した装備をドロップするよう設定している。


 魔法剣。


 魔法防御の高い鎧。


 魔法攻撃を防ぎやすい盾。


 ただ強い装備をばらまいているわけではない。


 それぞれを手に入れた冒険者が、実際に使いこなしながら強くなっていくことを想定している。


「装備を集めて、強くなって、それで37階層を突破する」


 アレンにとっては、ちょっとした育成ゲームのようなものだった。


 冒険者が新しい装備を手に入れるたびに、


「お、そこに気付いたか」


 などとマスタールームから眺めている。


 そして今、その冒険者たちは37階層で止まっていた。


「まあ、まだ先は長いしな」


 アレンは特に焦っていなかった。


 むしろ問題は、その先だった。


「39階層を突破できる冒険者が現れたら、40階層を作ろうと思ってたけど……」


 アレンは少し考える。


「先に作っておけばいいか」


 その場でダンジョンコアを操作した。


「40階層はBランクボス」


 設定を入力する。


 40階層を突破した先。


「41階層から49階層まではBランクモンスター」


 そして50階層。


「50階層はAランクボス」


 さらにその先。


「51階層から59階層まではAランクモンスター」


 最後に60階層。


 アレンは少しだけ考えてから、そこに配置するモンスターを決めた。


「60階層は……エンシェントドラゴンでいいな」


 設定完了。


 これで60階層までの準備は終わった。


「よし」


 アレンは満足そうに頷く。


 本来なら、39階層を突破する冒険者が現れてから40階層を作るつもりだった。


 だが、先に作っておいても問題はない。


 現在の攻略状況に応じて、到達した階層までしか入れないように設定してある。


 39階層までしか攻略されていなければ、40階層には進めない。


 40階層を突破したら41階層が解放される。


 そういう仕組みにしておけばいい。


「これなら、そのときになって急いで作る必要もない」


 アレンは椅子の背もたれに体を預けた。


「40階層に到着する冒険者が現れるのを楽しみに待つか」


 まだ37階層だ。


 40階層までは三つも階層が残っている。


 しかも37階層ですら、まだ突破できていない。


「当分攻略されないだろうな」


 アレンはそう考えていた。


 だが、アレンが思っていた以上に、37階層の攻略は難航していた。


 冒険者たちは何度も挑戦している。


 装備を揃えて挑み、戦い方を変えて挑み、メンバーを入れ替えて挑む。


 それでも突破できない。


 攻略に失敗するたびに、冒険者ギルドへ新しい情報が持ち込まれる。


「攻撃が重すぎる」


「魔法への対策が必要だ」


「装備を揃えただけでは足りない」


 挑戦する冒険者が増えるほど、37階層の情報も集まっていく。


 それでも突破者は現れなかった。


 ついには冒険者ギルドも、このままでは埒が明かないと判断する。


 通常の冒険者では難しい。


 ならば、さらに上の実力者に頼るしかない。


 そしてギルドが声をかけることになったのは――。


 Sランク冒険者パーティーだった。

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