ボスラッシュ
アレンは考えていた。
30階層のボスを倒せるようになった冒険者たち。
確かに以前より強くなっている。
だが、それが本当の意味での成長なのかは分からない。
同じ相手と何度も戦って、攻撃パターンを覚えただけかもしれない。
「だったら、別の敵と戦わせればいいんだ」
アレンはある方法を思いついた。
30階層のボスとは違う敵を、次々と用意する。
一体倒せたから終わりではない。
別の敵が出てきて、さらに別の敵が出てくる。
それを突破していけば、本当に強くなったのかが分かるはずだ。
「よし、ボスラッシュだ」
アレンはさっそくポイントを使った。
31階層から39階層まで、新しい階層を作っていく。
そして、それぞれの階層にボスを一体ずつ配置した。
すべてCランク相当の魔物。
ただし、種類はできるだけ変える。
近接戦闘を得意とする魔物。
素早い魔物。
遠距離攻撃を使う魔物。
魔法を使う魔物。
防御力が高い魔物。
特殊な能力を持つ魔物。
同じ戦い方では攻略できないようにする。
「これなら、30階層のボスだけを倒せるようになった冒険者が、どこまで通用するのか分かるだろ」
そして39階層まで突破されたら、その先にはBランク魔物を配置する。
Cランクの限界を超えた冒険者が、Bランクに挑戦する。
アレンはそれを新しい目標にするつもりだった。
「これで冒険者の本当の強さが分かるはずだ」
準備を終えたアレンは、満足そうに頷いた。
だが、一つ大きな問題があった。
アレンは、Cランク魔物の強さを正確には知らない。
Cランクといっても、全員が同じ強さというわけではない。
Dランクに近いCランクもいれば、Bランクに近いCランクもいる。
それなのにアレンは、
「全部Cランクなら、だいたい同じくらいだろ」
くらいに考えていた。
そして、ボスの配置も強さ順にはしていなかった。
ただ、種類が被らないように並べただけだった。
その結果。
「……あれ?」
31階層。
突破。
32階層。
突破。
33階層。
突破。
34階層。
突破。
35階層。
突破。
36階層。
突破。
「早くない?」
アレンが思わず画面を二度見する。
冒険者たちは順調に進んでいた。
新しい敵が出てくるたびに最初は苦戦する。
だが、30階層のボスを倒してきたパーティーは、それまでに培った連携や戦闘経験を使って対応していく。
一度負けても、装備や戦術を整えて再挑戦する。
そして突破する。
「いや、待ってくれ」
アレンは急いでボスの設定を確認した。
そこでようやく気づく。
「30階層のボス、二番目に強いじゃん!」
強さ順に並べていない。
だから当然、30階層のボスより弱いCランクの魔物が前半に何体もいる。
冒険者からすれば、
「30階層のボスを倒せた」
という時点で、すでに31~36階層の敵に必要な戦闘力を持っていたのだ。
「しまった……」
アレンは頭を抱えた。
強さを測るためのボスラッシュだったのに、肝心のボスの強さを把握していなかった。
そして冒険者たちは、そんなアレンの事情など知るはずもない。
37階層。
ここで、ようやく足が止まった。
「進まないな」
アレンが画面を見る。
37階層のボスはリッチ。
これまでのボスとは明らかに違った。
近づけば危険。
遠くにいても魔法が飛んでくる。
これまでの戦い方だけでは対応できない。
冒険者たちは何度も挑戦した。
だが、突破できない。
「今の装備じゃ無理だ」
「攻撃が通らない」
「魔法対策も足りない」
そんな声が聞こえてくる。
何度挑戦しても、リッチを倒せない。
30階層のボスを倒した冒険者たちでさえ、37階層では完全に足止めされていた。
アレンはその様子を見ながら、ようやく少し納得した。
「なるほど……」
30階層までの攻略で身につけたものだけでは、ここから先には届かない。
そして、これは単純に攻撃パターンを覚えれば済む問題でもない。
装備を整える。
魔法への対策を考える。
戦い方を見直す。
場合によっては、今までとは違う仲間や役割が必要になるかもしれない。
「これはちゃんと壁になってるな」
アレンは37階層を見つめた。
31階層から36階層までは、思った以上にあっさり突破されてしまった。
だが、37階層のリッチは違う。
冒険者たちにとって、今までとは別の意味での壁になっている。
「……まあ、結果的には悪くないか」
アレンは小さく笑った。
最初の目的は、冒険者たちが本当に強くなったのかを確かめることだった。
そして今、はっきり分かった。
30階層のボスを倒せることと、Cランク相当の魔物なら何でも倒せることは、同じではない。
37階層のリッチが、それを証明してくれていた。




