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Cランク冒険者の壁

アレンは三十階層の様子を見に来ていた。


ここは、このダンジョンにおける一つの到達点になっている。


三十階層のボスを倒すことができれば、Cランク冒険者として認定される。


つまり、このボスはCランク冒険者と、それより上の冒険者を分ける壁になる。


「とはいえ、簡単に倒される可能性も考えてたんだけどな」


アレンがマスタールームから様子を確認すると、ボス部屋では一組のパーティーが戦っていた。


「右!」


「分かってる!」


前衛がボスの攻撃を受け止め、後衛がその隙に攻撃を叩き込む。


連携自体は悪くない。


むしろ、かなり上手い。


それでもボスは倒れない。


「まだか……!」


攻撃を続ける冒険者たち。


しかし、ボスの体力はなかなか減らない。


やがて前衛の一人が息を切らし始めた。


「一度下がるぞ!」


「まだ戦える!」


「無理するな!」


パーティーは距離を取った。


三十階層では、危険を感じた場合に退却できる。


無理に戦い続けて命を落とす必要はない。


そのため、これまで三十階層で死者は出ていなかった。


「退却できるようにしておいて正解だったな」


アレンは戦闘を眺めながら呟いた。


ボスは強い。


しかし、理不尽な強さにはしていない。


ちゃんと戦えば勝てる。


ただし、それには相応の実力が必要になる。


「Cランクの壁になってるな」


Cランク冒険者になったからといって、すぐに余裕を持って倒せるような相手ではない。


ここから先は、単純にランクが一つ上がるだけではない。


装備、戦術、連携、判断力。


それらを一段階上げる必要がある。


同じCランク認定用のボスでも、ダンジョンによって強さには差がある。


認定基準は同じでも、ボスの強さまで完全に統一されているわけではない。


その中でも、アレンのダンジョンの三十階層ボスは強い方だった。


「他のダンジョンなら倒せたけど、ここでは勝てないって冒険者も出てきそうだな」


アレンは少し離れた場所にある待機スペースを見る。


そこには次の挑戦者たちが並んでいた。


「……あれ?」


かなりの人数がいる。


三十階層まで到達できる冒険者自体が少ない。


その上、ボスを倒せるパーティーとなるとさらに少なくなる。


そしてもう一つ問題があった。


「戦闘時間が長い」


一組のパーティーがボスと戦っている間、次のパーティーは待つしかない。


十分。


二十分。


三十分。


戦闘が長引けば、その分だけ後ろの冒険者たちの待ち時間も伸びる。


「勝てる冒険者が少ないだけじゃなくて、勝てるパーティーも時間がかかるんだよな」


ようやく戦闘が終わった。


ボスを倒したパーティーが歓声を上げる。


そして次のパーティーがボス部屋へ入っていく。


「これ、順番待ちが大変だな」


アレンは腕を組んだ。


ボスが強いことそのものは問題ではない。


三十階層はCランク冒険者としての実力を試す場所なのだから、簡単に突破されても困る。


だが、あまりにも一組あたりの戦闘時間が長いのも問題だった。


「三十分以内に倒せなかったら、強制排出するか」


そうすれば、一組がいつまでもボス部屋を占領することはなくなる。


勝てないと判断したパーティーも、三十分で自動的に外へ出される。


「それなら挑戦できる人数も増える」


アレンはさらに考える。


「ただ、そうすると今度は……」


ボスを見た。


三十分という時間制限ができるなら、冒険者側にも準備が必要になる。


ただ長時間粘るだけでは勝てなくなる。


火力を上げる必要がある。


攻撃を受け続けられる装備も必要になる。


そして、そのためには――。


「ボスドロップで装備を強化してもらわないといけないな」


アレンは思わず納得する。


せっかく三十階層まで来てもらっている。


そこでボスを倒した冒険者には、次の挑戦に繋がるものを渡した方がいい。


装備を強化する。


強くなった冒険者が、また次の階層へ挑戦する。


そうすれば、ダンジョンの攻略も循環する。


「ボスを倒すために装備が必要で、装備を強くするためにボスを倒す……」


アレンは少し考えた。


「まあ、ゲームでもよくあるやつだな」


問題は、何を落とすかだ。


強すぎる装備を出せば、今度はバランスが崩れる。


弱すぎれば、誰も欲しがらない。


「三十階層なんだから、それなりの物にしないとな」


アレンはボスドロップの内容を考え始める。


武器か。


防具か。


あるいは装備を強化できる素材か。


三十階層のボスは、ただ冒険者を止めるための壁ではない。


その壁を越えた冒険者が、さらに強くなるための場所にもする。


「まずは三十分制限を入れて、それからドロップを調整するか」


アレンは再びボス部屋を見る。


ちょうど次のパーティーが戦闘を始めたところだった。


「……こっちも、まだまだ改良するところがあるな」


三十階層は完成した。


しかし、アレンにとってダンジョンは完成して終わりではない。


冒険者が増えれば、問題も変わる。


そして、その問題を見つけるたびに、アレンはまたダンジョンを改良していくのだった。

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