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王国の対応

アレンはダンジョンの拡張を進めていた。


冒険者たちは、これまで何度もダンジョンへ挑み、少しずつ強くなっている。


今までの階層では、物足りなくなってきた冒険者も増えていた。


「そろそろ、今の冒険者たちに合った場所を作るか」


アレンはダンジョンコアに指示を出した。


新たに階層を増やしていく。


二十階層を越え、さらにその先へ。


そして、三十階層。


ここには、Cランク相当のボスを配置する。


「ここを倒せたらCランクってことにすればいいな」


今の冒険者たちなら、Cランクを目指すのにちょうどいい。


これまでのダンジョンでは、冒険者の成長に対して、挑戦できる場所が足りなくなっていた。


しかし、これで釣り合う。


ダンジョンのランクと、冒険者の実力。


「よし、これでいい」


さらにアレンは、その先に三十一階層を作った。


だが、三十一階層は解放しない。


そこに配置するのは――エンシェントドラゴン。


今の冒険者たちが挑む場所ではない。


いつか、三十階層を突破した冒険者たちがさらに成長したとき、その先にある目標だ。


「三十一階層は、まだ秘密だな」


アレンは満足そうに頷いた。


こうしてダンジョンは三十一階層まで完成した。


冒険者に解放されたのは三十階層まで。


三十階層のボスを倒せれば、Cランク冒険者として認められる。


今の冒険者たちにとって、ちょうどいい目標だった。


アレンはダンジョンの様子を眺めながら思う。


「これなら、もっと冒険者が強くなれるな」


ダンジョンの成長と、冒険者の成長。


その二つが、ようやく同じところまで追いついた。



その頃、王妃はダンジョンについて考えていた。


これまで王妃にとって、ダンジョンとは王国にとって貴重な資源だった。


魔石が手に入り、珍しい素材が手に入り、最近では宝石や酒、見たこともない品まで手に入る。


冒険者が集まり、周辺の町も発展している。


王国にとって、これほど便利な場所はない。


だが――。


「……ドラゴン」


王妃は小さく呟いた。


あのダンジョンには、エンシェントドラゴンがいる。


それも、ただの噂ではない。


実際にその存在が確認されている。


もし、あのドラゴンがダンジョンの外へ出てきたら。


王妃はそこまで考えて、表情を曇らせた。


「国軍でも、かなわないでしょうね」


もちろん、王国にも強力な騎士団はある。


優秀な魔法使いもいる。


しかし、エンシェントドラゴンを相手にして勝てるとは思えない。


そして、さらに恐ろしい可能性がある。


スタンピートだ。


ダンジョンから大量の魔物が溢れ出す現象。


もし、それがこのダンジョンで起きたら。


しかも、その中にエンシェントドラゴンまで混ざっていたら。


「……国が滅ぶわ」


王妃は真剣な顔で呟いた。


そもそも、スタンピートがなぜ発生するのか。


正確な条件は分かっていない。


長年の冒険者たちの経験から、


「ダンジョンを放置するとスタンピートが起きる」


そう考えられているだけだ。


だからこそ、どこの国でもダンジョンは定期的に冒険者を送り込み、魔物を間引く。


危険だからではない。


ダンジョンを放置することの方が危険だからだ。


そして、もう一つ。


王妃は昔の記録を思い出していた。


「ダンジョンにゴミを捨てるな、だったわね」


ダンジョンをゴミ捨て場として利用していた町があった。


町の者たちは、不要になった物をダンジョンへ捨てればいいと考えた。


魔物がいる場所なのだから、ゴミを捨てても問題ない。


そう思っていたのだ。


だが、その町はスタンピートによって滅びた。


ゴミを捨てたことが直接の原因だったのか。


それとも、別の条件が重なったのか。


それすら分かっていない。


ただ一つ分かっているのは、


ダンジョンを軽く扱った町が滅んだ。


その事実だけだった。


王妃は椅子から立ち上がった。


「近衛隊長を呼んでちょうだい」


しばらくすると、近衛隊長が部屋へ入ってきた。


「お呼びでしょうか、王妃様」


「ええ」


王妃は机の上に置いていた品を手に取った。


「これをダンジョンへ持っていって」


近衛隊長が品を見る。


「……こちらを、ですか?」


「そうよ」


王妃は頷いた。


そして、その隣に置かれていた封筒を指差す。


「これも一緒に」


「承知しました」


近衛隊長が受け取ろうとすると、王妃はもう一つ言葉を付け加えた。


「そして、宝くじ箱に入れてきてちょうだい」


「宝くじ箱に?」


「ええ」


王妃はダンジョンについて、もう一度考える。


今までなら、王国がダンジョンを利用することばかり考えていた。


しかし、それでは駄目なのかもしれない。


あのダンジョンには、エンシェントドラゴンがいる。


そして、そもそもダンジョンという存在そのものが、まだ人間には分からないことだらけなのだ。


ならば。


「王国は、ダンジョンと友好関係を築く必要があるわ」


王妃ははっきりと言った。


近衛隊長は一瞬だけ驚いた。


しかし、すぐに頭を下げる。


「分かりました」


「頼んだわよ」


「お任せください」


近衛隊長は品と封筒を受け取ると、部屋を出ていった。


王妃は一人になった部屋で、静かに窓の外を眺める。


ダンジョンを敵にする必要はない。


かといって、ただの資源として扱うのも危険だ。


ならば――。


まずは友好的な関係を築く。


それが今できる、最も現実的な方法だった。

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