ダンジョン探索4
五階層を見終えたアレンは、さらに上の階層へ向かった。
六階層。
「……ん?」
階段を上がったアレンは、少し首を傾げた。
六階層では、冒険者たちの様子が二つに分かれていた。
「そろそろ七階層に行ってみようぜ」
「そうだな。六階層にも慣れてきたし、もっと上を目指そう」
そう話しながら、上の階層を目指す冒険者たち。
その一方で、
「俺は六階層でいいかな」
「俺も。ここなら安定して稼げるし」
「無理して上に行く必要もないだろ」
そんな冒険者たちもいた。
「……Gランク冒険者で満足って、どんだけ志が低いんだよ」
アレンは呆れた。
しかし、少し考えているうちに、その理由に気づいた。
「あっ……」
ガチャだった。
このダンジョンでは、上の階層へ行くほど、ガチャ一回に必要な魔石の数が少なくなる。
ところが――。
「六階層から九階層まで、必要な魔石の数を変えてないんだった」
アレンは思い出した。
魔石そのものには価値がない。
価値があるのは、魔石を使って回すガチャの景品だ。
本来なら上の階層へ行くほど、少ない魔石でガチャを回せるようになる。
だが、六階層から九階層までは必要な魔石の数が同じ。
「そりゃ六階層でいいって奴も出るか」
わざわざ危険を冒して上の階層へ行っても、ガチャを回すために必要な魔石の数は変わらない。
六階層で安定して魔石を集められるなら、そこでガチャを回して稼ぐ。
そう考える冒険者が出ても不思議ではなかった。
「これは俺の設定ミスだな」
アレンは頭を掻いた。
ただ、全員が六階層で満足しているわけではない。
七階層では、さらに上を目指す冒険者たちがいた。
「早く八階層まで行けるようになりたいな」
「八階層を抜けたら九階層だろ」
「九階層まで行ければ、十階層が見えてくる」
八階層でも、
「もっと上を目指そうぜ」
九階層では、
「もう少しだ!」
「早く十階層で戦えるようになりたい!」
そんな声が聞こえてくる。
「十階層まで行ければ、稼ぎが一気に増えるからな!」
「今の稼ぎとは全然違うらしいぞ!」
「だったら早く十階層で戦えるようにならないとな!」
十階層で戦えるようになると、稼ぎが大きく跳ね上がる。
だからこそ、冒険者たちは少しでも早く十階層で戦えるようになろうとしていた。
「なるほどな」
アレンは頷いた。
「そりゃ目指すわけだ」
そして、アレンは十階層へ向かった。
「……え?」
十階層に到着したアレンは、思わず足を止めた。
冒険者だけではない。
普通の人間が大勢いる。
買い物をしている人。
食事をしている人。
仕事をしている人。
冒険者には見えない人まで、当たり前のように十階層を歩いていた。
「俺、十階層ってもっと冒険者ばっかりになると思ってたんだけど……」
アレンの想像とは違い、十階層には冒険者以外の人間もかなり多かった。
その理由はすぐに分かった。
一階層から十階層まで、エレベーターで直接移動できる。
しかも十階層のモンスターは冒険者を襲わない。
「……そりゃ普通の人も来るか」
一階層からエレベーターに乗れば、途中の階層を歩く必要もない。
安全に十階層まで来られる。
さらに十階層には、ここでしか手に入らないものもある。
「稼ぎたい冒険者だけじゃなくて、普通の人も来る場所になってるのか」
アレンは周囲を見回した。
そして、そのまま十階層の奥へ進む。
向かった先はボス部屋だった。
そこには長い列ができていた。
「今日こそ倒すぞ!」
「前回はあと少しだった!」
「次は俺たちの番だ!」
どうやらボスへの挑戦待ちの列らしい。
「ちゃんと挑戦する奴もいるんだな」
アレンは列を眺めた。
すると、しばらくしてボス部屋から冒険者が出てきた。
「……無理だな」
「今回は撤退しよう」
冒険者たちはそのまま部屋の外へ出ていく。
すると、ボスは追いかけてこなかった。
「……追ってこないのか」
アレンは少し安心した。
挑戦者が勝てないと判断して部屋から出れば、そこで戦闘は終わる。
「安心設計だな」
アレンは満足そうに頷いた。
そして、さらに奥へ進む。
十一階層への入口が見えてきた。
「ここが十一階層か」
アレンが入口へ近づく。
「止まってください」
「ん?」
突然、声を掛けられた。
入口の前には、見慣れない人物が立っている。
「十一階層への入場には資格が必要です」
「資格?」
「Fランク以上の冒険者のみ入場できます」
アレンは入口を見た。
そして、入口を守るように立っている人物を見る。
「……いつから警備員が常駐してるんだよ」
自分が作ったはずのダンジョンなのに。
知らない間に人が増え、町ができ、階層ごとに役割が生まれ、ついには入口に警備員まで立っている。
「なんか……俺が知らないところで勝手に発展してないか?」
アレンは、複雑な顔で十一階層の入口を見つめた。




