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ダンジョン探索2

アレンは気を取り直して、別の場所へ向かうことにした。


「次は鉱山エリアでも見てみるか」


 一階層の中を循環バスで移動する。


 しばらくすると、町並みが途切れ、鉱山エリアへと入った。


 そこでアレンが見たのは、何人もの人間が壁に向かってつるはしを振る光景だった。


 カンッ。


 カンッ。


 カンッ。


 岩壁を削り、鉄鉱石を取り出している。


「結構いるな」


 採掘している人数は少なくない。


 しかし、鉱山として考えれば不思議なほど整然としていた。


 地下へ掘り進めているわけではない。


 ダンジョンの壁を横から掘っているだけだ。


 しかも、最大の特徴がある。


 いくら掘っても、翌日には壁が元通りになる。


「これなら掘り尽くす心配もないしな」


 さらに普通の鉱山なら当然考えなければならない問題もない。


 地下水が出てこない。


 坑道が崩落する危険もない。


 掘った場所そのものが翌日には元に戻るため、採掘場所がなくなることもない。


 安全性だけを見れば、普通の鉱山とは比較にならなかった。


 この鉱山エリアは、すでに王国内の鉄生産にも大きな影響を与えている。


 国内で産出される鉄のうち、実に二割がこのダンジョンから採掘されたものになっていた。


「二割……」


 アレンは少し驚いた。


 ただ壁を掘らせているだけなのに、国全体の鉄生産の五分の一を担っている。


 そして鉱山の周辺を見れば、その理由も分かった。


 工房が多い。


 採掘した鉄鉱石を、そのまま加工できるようになっているのだ。


 鍛冶師たちが鉄を熱し、叩き、形を変えている。


 さらに、十階層から運ばれてきたインゴットまで運び込まれていた。


「十階層のインゴットガチャで出たやつも、ここで加工してるのか」


 ダンジョンの中で採掘し、ダンジョンの中で加工する。


 いつの間にか、鉱山を中心とした産業地区まで出来上がっていた。


 そして、その中には見慣れない種族もいた。


「……ドワーフ?」


 小柄な体。


 太い腕。


 作業着姿で金属を眺めている。


 どう見てもドワーフだった。


 アレンが少し離れた場所から眺めていると、近くの工房から声が聞こえてきた。


「やっぱり、この金属は面白いな」


「ジェラルミンだったか? こんな軽いのに、そこそこ強い」


「アルミも驚きだ。これほど軽い金属があるとは思わなかった」


「俺はステンレスが気に入ったぞ。錆びにくいというのがいい」


「俺はチタンだな。あれはもっと研究したい」


 ドワーフたちは、十階層から出てくる未知の金属について熱心に話していた。


 どうやら彼らは、これまで知られていなかった金属に興味を惹かれて、このダンジョンに住み着いたらしい。


「なるほどな……」


 アレンは納得した。


 そのまま通り過ぎようとしたところ、別のドワーフの声が聞こえてきた。


「しかし、銅が採れないのは困るな」


「そうなんだよ。鉄ばかりじゃなく、銅も欲しい」


「このダンジョンなら、銅の鉱脈くらい作ってくれないかな」


「誰に頼むんだよ」


「さあな」


 ドワーフたちは笑っている。


 アレンは足を止めた。


「銅か……」


 銅なら考えてもいい。


 鉄と同じように利用価値が高い。


 周囲には加工する工房もある。


 作れば、また人が長く滞在する理由にもなる。


「銅の鉱脈くらいなら、作ってみてもいいかな」


 アレンは小さく呟いた。


 しかし、そのとき別の声が聞こえた。


「銅もいいが、ミスリルの鉱脈があれば最高なんだがな」


「オリハルコンも欲しいぞ」


「金の鉱脈も欲しい」


「アダマンタイトなんて掘れたら、俺は一生ここに住むぞ」


「それは俺もだ」


 ドワーフたちは好き勝手に夢を語っている。


 アレンはその会話を聞きながら、無言になった。


「……それは駄目だな」


 銅なら考える。


 だが、オリハルコン、ミスリル、金、アダマンタイト。


 そこまでの鉱脈を用意する気はない。


 そんなものまで好き放題に掘れるようにしたら、ダンジョンの価値が変わりすぎる。


「欲しいって言われても、そこまではやらない」


 アレンはそう決めると、再び歩き始めた。


 自分のダンジョンなのに、住民の会話を聞いて初めて知ることばかりだった。


「……本当に一回、全部見て回った方がいいな」


 そう呟きながら、アレンは次の場所へ向かった。

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