王家管轄のダンジョン
アレンのダンジョンは、いつの間にか王家の管轄になっていた。
そもそも、ダンジョンの近くに町を作ることを決めたのも王妃だった。
ダンジョンから得られる利益。
集まってくる商人。
増え続ける冒険者。
そして、ダンジョンを中心に発展していく人の流れ。
それを見た王妃は、早い段階で判断した。
「ここは王家が管理するべきでしょう」
こうしてダンジョン周辺は王家の直轄領となった。
町の整備も王家主導で進められた。
税収は増える。
商業も活発になる。
ダンジョンから得られる資源や珍しい品々は、王家にとって莫大な利益を生み出していた。
しかも、利益はそれだけではない。
ダンジョンそのものが、人を集める巨大な施設になっている。
冒険者が集まり、商人が集まり、職人が集まる。
それに伴って宿や食堂、工房、運送業なども発展する。
王家の収入は増え続け、それに比例するように王家の影響力も強くなっていった。
そして、王家がダンジョンを利用する方法は、経済だけではなかった。
「他国からの難民が増えています」
ある日、家臣から報告を受けた国王は眉をひそめた。
「どのくらいだ?」
「今後さらに増える可能性があります」
他国の情勢が悪化し、国境を越えて逃れてくる人々が増えていた。
受け入れれば人道的な問題は解決できる。
しかし、王国内にも当然暮らしている人々がいる。
住居。
仕事。
食料。
土地。
何も考えずに大量の人間を受け入れれば、今度は国内で問題が起きる可能性がある。
そこで王妃が口にした。
「ダンジョンの中に住んでもらえばいいのではありませんか?」
国王が顔を上げる。
「ダンジョンに?」
「一階層は広大です。しかもモンスターに襲われません」
確かに、その通りだった。
アレンが何度も拡張した結果、一階層には大量の空き地がある。
道路まで整備されている。
無人の循環バスまで走っている。
生活するための環境として見れば、すでに十分すぎるほどだった。
「住居を用意し、生活できる環境を整えればよいでしょう」
こうして、他国から逃れてきた人々もダンジョン内で暮らせるようになった。
王国内の土地を急激に奪い合う必要はない。
既存の住民との接触も必要以上に増えない。
しかもダンジョン内には仕事もある。
採掘。
工房。
商売。
運送。
人が増えれば仕事も増える。
結果として、難民を受け入れることによる国内の混乱もかなり抑えられた。
「まさかダンジョンが、こんな使い方までできるとはな」
国王が感心する横で、王妃は満足そうに頷いていた。
だが、王妃には別の楽しみもあった。
「今月の献上品が届きました」
「まあ!」
王妃の表情が一気に明るくなる。
箱の中に入っていたのは、ダンジョンから産出された宝石だった。
毎月、新しい宝石が手に入る。
今月も見たことのない石が届いている。
「素敵……」
王妃は宝石を手に取り、光にかざす。
色合いを眺め、角度を変え、また眺める。
王家にとっては莫大な利益を生み出すダンジョン。
国王にとっては、国力を高める重要な場所。
家臣にとっては、王家の財政を支える場所。
そして王妃にとっては――
「来月はどんな宝石が届くのでしょう」
毎月、新しい宝石が届く場所だった。
王妃は宝石に囲まれながら、幸せそうに微笑んでいる。
一方、その頃。
当のダンジョンマスターであるアレンは、一階層を眺めていた。
「……なんで王家の直轄領になって、難民まで住んでるんだ?」
自分が始めたのは、ただの不人気ダンジョンの運営だったはずだ。
それが今では、王家の重要な収入源になっている。
町までできている。
人が住んでいる。
外国から来た人間まで暮らしている。
道路にはバスが走っている。
そして自分は、今日もダンジョンを拡張している。
「……まあ、ポイントが増えるからいいか」
アレンは深く考えることをやめた。
気づけば、ダンジョンを利用する人間が増えるたびに、アレンのポイントも増えている。
人が増える。
利用時間が増える。
ポイントが増える。
ポイントが増えたから、さらにダンジョンを拡張する。
そしてまた人が増える。
「これ、かなり儲かるな」
アレンは一階層を眺めながら、満足そうに頷いた。
もはやダンジョン運営というより、巨大な町を経営しているような状態になっていた。




