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広げすぎた1階層

アレンのダンジョン一階層は、いつの間にかとんでもない広さになっていた。


 理由は単純だった。


 人が増えて混雑する。


 アレンが広げる。


 また人が増える。


 アレンがまた広げる。


 ただ、それだけである。


 最初は冒険者が活動するには十分な広さだった。


 しかし、鉱石の採掘が始まると、採掘場所を広げた。


 人が増えて通路が混雑すると、通れる場所を広げた。


 さらに人が増えると、今度は全体を広げた。


 工房を作る者が現れても、特に区画を決めることはしなかった。


「空いてるところを使えばいいんじゃない?」


 アレンはそれくらいの感覚だった。


 住み始める者が現れても同じだった。


「邪魔にならないところなら好きにすればいいよ」


 結果。


 一階層は、とにかく広くなった。


「……広すぎない?」


 アレンはマスタールームから一階層を眺めながら呟いた。


『かなり広いです』


「どのくらい?」


『現在の面積は、一般的な村より広いです』


「……村より?」


『はい』


 アレンはしばらく黙った。


 別に村を作ろうとしたわけではない。


 人が増えたから広げただけだ。


 混雑したから広げただけだ。


 その結果、見渡す限りの空間が広がっている。


 ところどころに建物が建ち、工房が作られ、鉱石を掘っている者がいる。


 しかし、それ以上に何もない場所が多い。


「なんか……逆に何もなくなったな」


 一階層の中央付近には、特に何もなかった。


 人が歩いているだけだ。


 建物を建てる者もいるが、土地はいくらでも余っている。


 町の中では地価が上がり、家を建てる場所すら簡単には確保できなくなっているというのに。


 ダンジョンの中には、いくらでも土地がある。


 しかも魔獣に襲われない。


 それを知った人々が、さらに一階層へ流れ込んできた。


「町に住めないなら、ダンジョンに住めばいい」


「鉱石を掘るなら、ここに工房を作ればいい」


「外で暮らすより安全じゃないか?」


 そんな考えが広まり始めていた。


 最初は冒険者のための場所だった。


 それが採掘場所になり、工房ができ、住居まで作られ始めた。


 そして今では、下手な村より広い。


 ただし、村のように家が密集しているわけではない。


 とにかく広い。


 建物と建物の間に、妙に広い空間が残っている。


 人が増えても、アレンがそのたびに空間を拡張してしまうからだ。


「……俺、広げすぎたかな?」


『混雑は解消されています』


「それはそうだけど」


 アレンは一階層を見渡した。


 人が増える。


 土地が足りなくなる。


 アレンが広げる。


 土地が余る。


 また人が増える。


 どうやら、この繰り返しになっているらしい。


「まあ、土地が余ってるならいいか」


 アレンは深く考えるのをやめた。


 その頃、一階層では新しくやって来た商人が、空いている土地を見ながら首を傾げていた。


「……ここ、本当にダンジョンなのか?」


 その疑問に答えられる者は、もう一階層にはほとんどいなかった。

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