ポイント減少策
ポイントが増え続ける。
十九階層まで増やしても、まだ余裕がある。
アレンはマスタールームの画面を眺めながら考え込んでいた。
「どうやったらもっとポイントを使えるんだ?」
新しい階層を作るだけでは、消費量にも限界がある。
維持費は増えた。
それでもポイントは増えている。
「だったら、ダンジョンの中に何か作るしかないな」
アレンはダンジョンの構造を眺める。
そこで目に入ったのが、一階層だった。
一階層には、すでに多くの人が集まっている。
冒険者見習い。
孤児。
そして、魔石を求めてやってくる人々。
「一階層なら安全なんだよな」
モンスターは襲ってこない。
ならば――。
「採掘場でも作るか」
アレンはポイントを使って、一階層の一角を大きく改造した。
岩盤を掘り進め、鉱石が採れる区域を作る。
最初に設定したのは鉄だった。
「とりあえず鉄でいいだろ」
鉄なら使い道はいくらでもある。
武器。
農具。
建物。
道具。
町が大きくなればなるほど、必要になる金属だ。
そして、何より――。
「これならポイントも使える」
アレンにとっては、それが重要だった。
採掘区域が完成する。
一階層の一角に、これまでとは違う岩肌が現れた。
「鉄が採れるようになったぞ」
最初に発見した冒険者が、持ち帰った鉄鉱石を見せた。
その話はすぐに広がった。
「本当に鉄が採れるのか?」
「ああ。それも一階層だ」
「一階層って、あのモンスターが襲ってこないところか?」
「そうだ」
その一言で、さらに注目が集まった。
普通の鉱山なら、採掘には危険がつきまとう。
落盤。
魔物。
盗賊。
場所によっては、他の危険もある。
しかし、このダンジョンの一階層は違う。
モンスターが襲ってこない。
「安全に鉄を掘れるのか?」
「そういうことだ」
「それなら、採掘だけしに来てもいいじゃないか」
人が増えた。
冒険者だけではない。
採掘を目的にする者まで、一階層へやってくるようになった。
鉄鉱石を掘る者。
採掘した鉄を買い取る商人。
採掘道具を売る店。
食事を提供する店。
そして、採掘に来た人間を泊める宿。
ダンジョンの前に作られた町も、その影響を受けていた。
「今日も宿が満室です!」
「店の商品が足りません!」
「採掘道具をもっと仕入れてください!」
町には次々と人が流れ込んでくる。
最初はダンジョンを訪れる冒険者のために作られた町だった。
それが今では、冒険者だけではなく、採掘目的の人間まで集まっている。
町の建物が増える。
店が増える。
宿が増える。
人が増える。
それでも追いつかない。
「また移住希望者が来ています!」
「どこからだ?」
「国内のあちこちからです!」
町の人口は増え続けていた。
そして、ダンジョンに来る人間も増え続ける。
一階層では、今日も魔石を集める子供たちがいる。
そのすぐ近くでは、鉄鉱石を掘る採掘者たちがいる。
さらに奥では、冒険者たちが次の階層を目指している。
かつては、初心者しか来ない不人気なGランクダンジョンだった。
それが今では――。
「……人、多すぎないか?」
マスタールームから一階層を眺めていたアレンは、思わず呟いた。
ポイントを減らしたかった。
だから鉄の採掘区域を作った。
ただ、それだけだった。
「ポイントは……」
アレンが確認する。
「……減ってる」
今度こそ成功だ。
採掘区域の設置によって、ポイントは確実に消費されている。
アレンは満足そうに頷いた。
「よし」
だが、その直後。
またポイントが増えた。
「……」
アレンは画面を見つめる。
採掘区域による消費よりも、流れ込んでくる魔石による増加のほうが大きい。
「やっぱり増えるのかよ!」
アレンのダンジョンでは、今日も人が増えている。
ダンジョンの前の町も、人が増えている。
そして、ポイントも増えている。
何かを作ってポイントを減らそうとするたび、それが新しい人を呼び込み、さらにダンジョンを賑やかにしていく。
「……もう、好きにしてくれ」
アレンは椅子に座り直した。
こうして、アレンのダンジョンと、その前に作られた町の人口増加は止まらなくなっていった。




