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変換効率

アリスは悩んでいた。


 失った全財産を取り返すために、どうすれば効率よくお金を稼げるのか考えていたのだ。


 普通に働いて給料をもらっていては、いつまでたっても元の財産には戻らない。


 もっと効率のいい方法があるはずだ。


「日本では安いけど、こっちの世界では高い物を用意できればいいんだよね」


 アリスは頭の中で候補を並べていく。


 ダンジョンポイントで商品を用意し、それを売ってお金に換える。


 重要なのは、ダンジョンポイントに対して、どれだけ高い値段で売れるかだ。


「ガラスのコップ、鏡、真珠……」


 アリスは次々と候補を挙げていった。


「なるほど! 日本でも百年前には、まだ高嶺の花だった商品を選べばいいわけだ!」


 昔は高価だった物でも、技術が発達すれば安く大量に作れるようになる。


 つまり、この世界ではまだ高価な商品を、日本の技術で用意すれば大儲けできるはずだ。


 アリスは自分の考えに自信を深めていった。


 しかし、そんなアリスの考えを聞いていたアレンは、別のことを考えていた。


「魔法があるだけで、同じ人間だから進化の過程は似るわけだな」


 魔法という特殊な力が存在していても、人間の考えることまで大きく変わるわけではない。


 便利な物を求め、生活を豊かにし、技術を発展させていく。


 そう考えると、この世界でもいずれ日本と似たような発明が生まれるのかもしれない。


「だったら、まずはラジオがいずれ生まれそうだな」


 電波を利用した通信技術。


 この世界ではまだ一般的ではないが、いずれ誰かが発明しても不思議ではない。


 もっとも、アレンがラジオの登場を予想している間も、アリスは金儲けのことで頭がいっぱいだった。


「ねえ、アレン」


「どうした?」


「今月の給料はダンジョンポイントで頂戴!」


「別にいいけど、何をするんだ?」


「ダンジョンポイントの効率のいい変換を試すんだよ!」


 アリスは自信満々に答えた。


 いつもの給料をお金でもらうのではなく、ダンジョンポイントでもらう。


 そのポイントで商品を用意して売れば、普通に給料をもらうよりも多くのお金を手に入れられるかもしれない。


 うまくいけば、失った全財産を取り戻すための大きな一歩になる。


「定番はガチャで前に出したから、相場が下がってるぞ。いい物を見つけろよ」


 アレンは以前、ガチャの景品を使った金策を行っていた。


 しかし、同じ商品が市場に出回れば、希少価値は下がっていく。


 いくら元手が安くても、売値まで安くなってしまえば意味がない。


 アリスには、その失敗を繰り返してほしくなかった。


「大丈夫だもん! 自信あるもん!」


「まあ、頑張れ」


 アレンはそれ以上口を出さなかった。


 自分で考えた金策なのだから、まずは試してみればいい。


 うまくいけば新たな収入源になるし、失敗しても給料の範囲内なら大きな問題にはならない。


 そして、アリスはさっそく行動を開始した。


 最初に用意したのは、ガラスのコップだった。


 日本では大量生産され、安価で手に入るガラス製品。


 しかし、こちらの世界では製造に手間がかかる。


 ダンジョンポイントで用意すれば、安い元手で高く売れるはずだ。


 次に鏡。


 こちらも日本では珍しくないが、昔は高級品だった。


 そして最後に真珠。


 装飾品としての需要があり、うまく売れば大きな利益が期待できる。


「よし、これならいける!」


 アリスは三種類の商品を揃え、売りに出した。


 あとは結果を待つだけだ。


 これで給料を大幅に増やせる。


 失った全財産を取り戻す日も、そう遠くないかもしれない。


 アリスは期待に胸を膨らませた。


 そして、結果が出た。


 給料が若干増えた程度だった。


「なんでよー!」


 アリスの悲痛な叫びが響き渡った。


 そこへアレンがやってきた。


「何を騒いでるんだ?」


「鏡もガラスも真珠も、思ったほど儲からなかったのよ!」


「ああ、その辺は前に試したぞ」


「……え?」


「日本で安く手に入る物をこっちで売れば儲かるって話だろ? 俺だって最初に考えたよ」


「じゃあ、なんで教えてくれなかったのよ!」


「聞かれなかったからな。それに、もう市場に出回ってるから、今さらお前が売っても大した利益にはならないぞ」


「そんなぁ……」


 アリスが思いつく程度の金策など、アレンが思いつかないわけがなかった。


 当然、アレンはとっくに試していたのだ。


 しかも、先に市場へ流していたため、アリスが参入した頃には目新しさもなくなっていた。


「うう……。私の全財産を取り戻す計画が……」


「まあ、頑張れ」


「他人事だと思って!」


 アリスの嘆きが、再び響き渡った。

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