バーチャル試着サービス
アレンは画期的なアイデアを思いついた。
服を買うとき、実際に試着してみなければ自分に似合うかどうか分からない。しかし、何着も試着するのは面倒だし、店員に何度も服を持ってきてもらうのも気が引ける。
そこでアレンは考えた。
白い服を着てもらい、そこに別の服の映像を投写すればいいのではないか。
これなら実際に着替えることなく、さまざまな服を試すことができる。気に入った服があれば、そのまま購入すればいい。
服屋にとっても客にとっても便利な、画期的なサービスだ。
ただし、しょうもないミスで台無しにしなければ、の話だが。
「これは流行る!」
アレンは勝利を確信していた。
さっそく試作品を用意すると、セレスティアに仕組みを説明して協力を頼んだ。
「つまり、この白い服を着ていれば、好きな服を試着したように見えるということね?」
「ああ。実際に着替える必要はない。ドレスだろうが、普段着だろうが、好きなだけ試せるぞ」
「それは便利ね。いちいち着替えるのは大変だもの」
「だろ? 服を買う前に似合うかどうか分かるんだ。店側も試着室をたくさん用意する必要がなくなる」
「確かに画期的ね」
セレスティアは感心したように頷いた。
しかし、白い服を見下ろすと、少し不満そうな顔をした。
「でも、投写する前の白い服はダサいわね」
「そこは仕方ないだろ。試着用なんだから」
「もう少しおしゃれなものはなかったの?」
「そんなことを言っていたら、試着する前に服を買うことになるだろ」
「それもそうね」
セレスティアは納得した。
「じゃあ、さっそくいくぞ!」
アレンがカメラを操作する。
すると、セレスティアの白い服の上に、豪華なドレスが投写された。
「おお、いいじゃないか!」
「……なんで背中が出てるのよ」
映し出されたのは、背中が大きく開いた華やかなドレスだった。
スカートには幾重にもフリルが重なり、胸元や腰には豪華な装飾が施されている。
どう見ても、悪役令嬢が着ていそうなドレスである。
「いや、似合ってるぞ」
「そういう問題じゃないでしょう! どうしてこんなに背中が開いているのよ!」
「デザインだろ?」
「そんなことは分かっているわよ!」
セレスティアは呆れたようにため息をついた。
しかし、アレンはまったく気にしていない。
「ついでにこれを持ってくれ」
アレンは扇子と日傘を取り出し、セレスティアに渡した。
「なんでよ?」
「いいから、いいから」
セレスティアは不満そうにしながらも、扇子と日傘を手に取った。
豪華なドレスに扇子、そして日傘。
セレスティアが優雅に立つと、そこには絵に描いたような悪役令嬢が完成していた。
アレンは満足そうに頷いた。
「俺はお前ほど似合うやつを知らない」
「ありがとう」
セレスティアは素直に礼を言った。
どうやら、自分の美しさを褒められたと思っているらしい。
まさか悪役令嬢の格好が似合うと言われているとは、夢にも思っていなかった。
「よし、次いくぞ!」
アレンが操作すると、今度は黒を基調とした落ち着いたドレスに切り替わった。
先ほどの派手なドレスとは違い、装飾は控えめだ。それでも上品な華やかさがあり、貴族の令嬢が着るには申し分ない。
「これはどうだ?」
「さっきより落ち着いた感じね。こちらのほうが好みかもしれないわ」
「なるほどな。じゃあ、次はどうだ?」
今度は赤を基調とした、宝石をふんだんにあしらった派手なドレス。
その次は、フリルが大量についた可愛らしいドレス。
さらに、青を基調とした清楚なドレスまで登場した。
アレンは次々と衣装を切り替えていく。
「これは少し派手すぎるかしら」
「いや、似合ってるぞ」
「そう?」
「やっぱ美人だなお前」
「それはどうも」
セレスティアは褒め言葉を受け流しながら、次々と変わる衣装を確認していた。
実際に着替えているわけではないので、服を脱いだり着たりする手間は一切ない。
気に入らなければ、すぐに別の衣装に変更できる。
「これは便利ね。実際に服を買うときにも役立ちそうだわ」
「だろ? しかも、店に置いていない服だって映像さえ用意すれば試せるんだ」
「それなら、注文する前にデザインを確認することもできるわね」
「そういうことだ!」
アレンは得意げに胸を張った。
自分の考えたサービスが、セレスティアにも評価されたのだ。
これなら間違いなく流行る。
アレンは確信していた。
「よし、次いくぞ!」
アレンはさらに別の衣装を投写しようと、カメラを操作した。
しかし、次に映し出されたのはドレスではなかった。
セレスティアの裸姿が、そのまま投写されてしまったのだ。
「………………」
「………………」
しばらく沈黙が続いた。
セレスティアは自分の姿を確認すると、不思議そうに首を傾げた。
「……これは透明なドレスかしら?」
「セットし忘れただけだ。すまん!」
「そう」
セレスティアはあっさりと頷いた。
アレンは思わず尋ねた。
「隠さないのか?」
「見られて恥ずかしい身体はしていないわ」
「綺麗だ」
「感想を求めていないわよ!」




