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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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電子決済

アレンは、ダンジョンに紙幣の概念を持ち込んだ。


 それまで金貨や銀貨を持ち歩いていた住民にとって、紙幣は画期的なものだった。


 金貨を大量に持ち歩く必要がなくなり、買い物も楽になった。


 紙幣への交換は交換所で行われており、金貨を持ち込めば紙幣と交換してもらえる。


 ただし、交換所の機能はそれだけだった。


 そんな中、アレンは新たなことを考えていた。


「電子決済を普及させたいな」


 紙幣すら持ち歩かずに買い物ができる。


 前世では当たり前だった仕組みだが、この世界には存在しない。


 ギルドカードを使って決済できれば、冒険者にとっても便利だろう。


 しかし、そのためには問題があった。


 カードで支払いをするには、どこかでお金を管理しなければならない。


 そこでアレンは、銀行という概念を普及させることにした。


 銀行の仕事は単純だ。


 住民からお金を預かり、預金として管理する。


 お金を引き出したくなったら、紙幣か金貨で返す。


 それだけである。


 利子はつかない。


 預かったお金を誰かに貸し出すこともない。


 銀行が儲かる仕組みではなかった。


 しかし、アレンにとって銀行の利益は重要ではなかった。


 住民が大金を持ち歩かなくて済むようになれば、それだけで十分に価値がある。


 特に冒険者は、ダンジョンで大金を稼ぐことがある。


 大量の金貨や紙幣を持ち歩けば、盗難の心配もあるし、買い物のたびに数えるのも面倒だ。


 銀行に預けておけば、必要なときに必要な分だけ引き出せる。


 それだけでも便利だった。


 そして、銀行にお金を預けた住民には、専用のカードが渡された。


 預金残高は銀行が管理している。


 カードを使えば、その預金から代金を支払うことができる。


 ダンジョン内にあるアレンの直営店では、カード決済に対応することにした。


 飲食店でも、土産物店でも、映画館でも使える。


 冒険者が魔石を換金して得たお金を銀行に預ければ、あとはカード一枚で買い物ができるのだ。


 サービスを開始すると、評判は上々だった。


「これなら大金を持ち歩かなくていいな!」


「わざわざ紙幣を数えなくてもいいのか」


「買い物が楽になったぞ!」


 特に冒険者からの評判がよかった。


 ダンジョンで稼いだお金を銀行に預け、必要なときだけ引き出せばいい。


 普段の買い物ならカードで済ませられる。


 こうして銀行には、次々と預金が集まっていった。


 気づけば、かなりの金額が預けられていた。


 もっとも、アレンにとっては何の利益にもなっていない。


 利子をつけるわけでもなく、預かったお金を貸し出すわけでもない。


 銀行を運営する手間を考えれば、むしろ赤字である。


「まあ、住民の満足度が上がるならいいか」


 アレンはそう考えていた。


 ダンジョンに住み続けたいと思ってもらえれば、それだけでも意味がある。


 ダンジョンランドを発展させるための投資だと思えば、やらない理由はなかった。


 そんなある日。


 セレスティアがアレンのもとを訪れた。


「アレン、銀行を始めたそうね」


「そうだぞ」


「預金を預かって、必要なときに引き出せるようにする。さらに、カードを使えば買い物もできる。とてもいい仕組みだと思うわ」


「便利だろ?」


「ええ。大金を持ち歩く必要がなくなるし、盗難の危険も減る。住民にとって大きなメリットがあるわね」


 セレスティアは素直に感心していた。


 銀行という仕組み自体は理解できる。


 お金を預けて、必要なときに引き出す。


 何も難しいことはない。


 しかし、彼女には一つだけ理解できないことがあった。


「ところで、アレン」


「なんだ?」


「カードで支払いができるというのは、どういう仕組みなの?」


「どういうって、カードを使えば預金から代金が引き落とされるんだよ」


「それは分かるわ。でも、どうしてカードを出すだけでお金を支払ったことになるの?」


「銀行が預金を管理しているからだな」


「銀行が管理していることと、カードで支払えることに、どういう関係があるの?」


「……」


 アレンは少し考えた。


 どう説明すればいいのだろう。


 そもそも、前世では当たり前に使っていた仕組みだ。


 カードを使えば決済できる。


 そういうものだとしか思っていなかった。


「カードを使うと、銀行に支払いの情報が伝わるんだよ」


「どうやって?」


「……そういう仕組みだ」


「アレン?」


「細かいことは気にするな」


「気になるわよ!」


 セレスティアは納得できなかった。


 銀行の仕組みは理解できる。


 預金を管理することも、預けたお金を返すことも分かる。


 だが、カードを使うだけで、離れた場所にある銀行の預金が減るという仕組みが理解できないのだ。


 結局、セレスティアはカード決済の仕組みを理解できなかった。


 その結果、銀行とカード決済はダンジョン内でしか普及しなかった。


 アレンの直営店なら、アレンが用意した仕組みをそのまま使える。


 しかし、ダンジョンの外に広めようとすると、仕組みを理解し、同じように運用できる人間が必要になる。


 銀行を作ること自体はできても、カード決済まで再現するのは難しかった。


「まあ、ダンジョンの中で使えれば十分か」


 アレンは深く考えないことにした。


 もともと住民の利便性を高めるために始めたことだ。


 ダンジョン内で便利に使えているなら、それでいい。


 一方、セレスティアは諦めていなかった。


 銀行という仕組みは理解できた。


 預金を預かり、必要なときに返す。


 これは王国でも導入できるだろう。


 しかし、カード決済だけは分からない。


「……もう少し勉強する必要がありそうね」


 こうして、アレンが何気なく始めた銀行は好評を博した。


 ただし、電子決済の仕組みを理解できる者が現れるまでは、ダンジョンの外に広がることはなかったのだった。

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