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宝石の行方

アレンのダンジョンから出たダイヤモンド、真珠、アクアマリン。


 その三つは今、王妃の手元にあった。


 王妃は机の上に並べられた宝石を眺める。


「素晴らしいわね」


 何度見ても、その評価は変わらない。


 真珠はこれまで王室が手にしてきたものとは明らかに違う。


 形が整っていて、表面も美しい。


 ダイヤモンドも透明度が高く、光を受けるたびに強い輝きを放つ。


 アクアマリンも澄んだ色合いをしている。


 どれも間違いなく一級品だった。


 ただ、一つだけ不満がある。


「……もう少し大きければよかったのだけれど」


 王妃がダイヤモンドを見る。


 品質には文句がない。


 むしろ、これほど美しいダイヤモンドは見たことがない。


 だからこそ、もっと大きなものが欲しくなる。


 アクアマリンも同じだった。


 真珠については、この大きさでも十分に満足している。


 しかし、ダイヤモンドとアクアマリンは、もっと大きなものがあれば王室の宝飾品として使いやすい。


 もちろん、今回の品が素晴らしいことに変わりはない。


 献上された際には、今後も同じものが手に入るとは限らないとも報告されていた。


 むしろ、二度と手に入らない可能性も高い。


「そうなると、大きなものを手に入れるのは難しいわね」


 王妃はため息をついた。


 さらに、ダイヤモンドについては別の報告も受けていた。


『我々に、これと同じものを作ってみろという挑戦状なのではないか』


 そんな可能性が高いというのだ。


 確かに、そう考えることもできる。


 見たことのないほど美しいダイヤモンドを一つだけ見せる。


 そして、同じものを作ってみろと言っている。


 もし本当にそうなら、かなり意地の悪い挑戦だ。


 王妃は試しに、王室お抱えの一流職人たちへ相談してみた。


「このダイヤモンドと同じ品質で、もっと大きなものを作ることはできるかしら?」


 職人たちは実物を確認する。


 何度も角度を変え、光に当て、細かく観察する。


 そして――


「無理です」


 あまりにも迷いのない返答だった。


「……無理?」


「はい。我々には不可能です」


「あなたたちは王室お抱えの職人でしょう?」


「だからこそ、分かるのです」


 職人はダイヤモンドを見つめた。


「この品質を再現すること自体が困難です。それをさらに大きくするとなれば……」


 そこで首を横に振る。


「一生をかけても、成功するとは思えません」


「一生……」


 王妃はダイヤモンドを見る。


 王室が誇る一流職人でさえ、再現できない。


 しかも、今あるダイヤモンドを大きくすることなど当然できない。


 大きなものが欲しければ、別のダイヤモンドそのものを手に入れるしかない。


 だが、それがいつ手に入るのかは分からない。


「では、ドワーフに聞いてみるというのは?」


 王妃が尋ねる。


 ドワーフなら、人間の職人にはない技術を持っているかもしれない。


 しかし、職人たちは微妙な顔をした。


「それは……」


「何か問題があるの?」


「ドワーフの技術が我々より優れている可能性は否定できません」


 職人は慎重に言葉を選ぶ。


「ですが、このダイヤモンドそのものを見せるのは危険です」


「傷をつけられる可能性があるから?」


「はい」


 王妃は黙り込んだ。


 今あるダイヤモンドは、二度と手に入らない可能性がある。


 そんな貴重なものを、試しにドワーフへ渡すわけにはいかない。


「……それは嫌ね」


 王妃は即座に判断した。


 もし傷でもつけられたら、取り返しがつかない。


 大きなダイヤモンドを作れるかもしれない。


 しかし、そのために今あるダイヤモンドを危険にさらす理由はない。


「ドワーフに相談するにしても、実物を見せるのはやめましょう」


「それがよろしいかと」


 王妃は三つの宝石を眺める。


 真珠。


 ダイヤモンド。


 アクアマリン。


 どれも素晴らしい。


 だからこそ、もっと欲しくなる。


 しかし、今のところ入手する方法がない。


「……本当に、困ったものね」


 王妃は宝石を箱へ戻した。


 結局、この三つは大切に保管しておくしかなかった。

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