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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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権力構造

「なぁ、セレスティア」


「どうしたの?」


「俺にはお前が王妃に見えるんだけど」


「どうしてそう思うの?」


 セレスティアは不思議そうに首を傾げた。


「いや、最近のお前を見ていると、王国のことを何でも決めているように見えるんだよ。貴族との交渉も、経済政策も、他国との関係も。お前が国を動かしているように見える」


「動かしてるわよ」


「……は?」


「だから、動かしてるわよ。国の運営に関わっているんだから、当たり前でしょう?」


 あまりにもあっさりとした返答だった。


 アレンは思わずセレスティアの顔を見つめた。


「いや、待て。国を動かすのは王様や王妃様の仕事じゃないのか?」


「そうね。でも、うちの国は王家の力があまり強くないのよ」


「どういうことだ?」


 アレンは首を傾げた。


 王家といえば、国の頂点に立つ存在だ。


 もちろん貴族たちにも権力はあるだろうが、王家が国をまとめる中心になっているものだと思っていた。


「王家は私に逆らう力がないのよ」


「……お前、さらっととんでもないことを言ってないか?」


「そうかしら?」


「王家が、お前に逆らえない?」


「ええ」


「王様も?」


「もちろん、王様もよ」


 セレスティアは何でもないことのように頷いた。


「いやいやいや。どういう状況なんだよ!」


 アレンは思わず声を上げた。


 王家がセレスティアに逆らえない。


 それはつまり、国の頂点に立つはずの王家よりも、セレスティア個人の影響力が強いということではないか。


「王妃様もなのか?」


「王妃様は別よ」


「別?」


「王妃様は実家の力が弱いのよ」


「ああ、なるほど……って、なるほどじゃないだろ!」


 アレンはすぐに突っ込んだ。


「実家の力が弱いと、王妃様はどうなるんだ?」


「王妃様自身にはカリスマ性があるから、支持している人は多いわ。王家の中にも、貴族の中にもね」


「つまり、実家の後ろ盾が弱くても、本人の人望で立場を維持しているわけか」


「そういうことね」


「それで国がうまくいくのか?」


「うまくいっているでしょう?」


「いや、そうなんだけどさ……」


 アレンは頭を抱えた。


 王家の権力が弱く、王妃の実家も強くない。


 それなのに、セレスティアが国を動かしている。


 聞けば聞くほど、王国の権力構造が分からなくなってきた。


「お前、いったいどれだけ力を持ってるんだよ」


「どれくらいかしらね……」


 セレスティアは少し考え込んだ。


「経済面なら、私の実家とフローラの実家を合わせれば、王家を上回るくらいかしら」


「……は?」


「それから、武力なら私の実家とリリアの実家を合わせれば、王家を上回るくらいね」


「…………」


 アレンは黙り込んだ。


 経済はセレスティアとフローラ。


 武力はセレスティアとリリア。


 それぞれの分野で、王家を上回る勢力が存在している。


 しかも、その両方にセレスティアの実家が関わっているのだ。


「ちょっと待て。つまり、お前の実家は経済にも武力にも強いのか?」


「ええ」


「そこにフローラの実家が経済面で加わり、リリアの実家が武力面で加わると、王家を上回るわけだな?」


「そういうことよ」


「……もうお前が王になれよ」


 アレンは思わず本音を漏らした。


「王家より経済力も武力も強い勢力に関わっていて、実際に国を動かしてるんだろ? だったら、最初からお前が王になったほうが早いんじゃないか?」


「何を言っているのよ。私はすでに王妃に内定しているわよ」


「ああ、そうだったな」


 アレンは納得したように頷いた。


 そういえば、セレスティアは将来の王妃になる予定だった。


 すでに王妃の座が決まっているのだから、わざわざ王を目指す必要もないのだろう。


 ……いや、待て。


 アレンはふと気づいた。


「なあ、セレスティア」


「何?」


「王様になる予定の人って、どんな人なんだ?」


「私の旦那様になる人よ」


「いや、それは分かってる」


「とても素敵な方よ」


「そうか……」


 アレンは少し考えた。


 王家の権力は弱い。


 経済力も武力も、セレスティアたちの勢力のほうが強い。


 そして、セレスティア自身が国を動かしている。


 そんな状況で王様になるというのは、いったいどんな気分なのだろうか。


「……王様、苦労しそうだな」


「そうかしら?」


「だって、お前が全部決めるんだろ?」


「必要なことは私が決めるけれど、旦那様にもきちんと相談するわよ」


「それ、相談という名の事後報告にならないか?」


「失礼ね。ちゃんと意見も聞くわよ」


「意見が採用されるとは言ってないよな?」


「あなた、今日は妙に鋭いわね」


「普段からこれくらい鋭いぞ!」


 アレンは抗議した。


 しかし、セレスティアは涼しい顔をしていた。


「そうだわ、アレン」


「今度は何だ?」


 セレスティアは、にっこりと微笑んだ。


「私の旦那様の王の座が空いてますよ。狙います?」


「間に合ってます」


 アレンは即答した。


「即答なのね」


「当たり前だろ! ダンジョンの管理だけでも忙しいのに、国の運営までやってられるか!」


「でも、あなたならできそうじゃない?」


「できるかどうかと、やりたいかどうかは別だ!」


「残念ね」


「何が残念なんだよ!」


 セレスティアは楽しそうに笑った。


 アレンは、王様にならずに済んだことを心の底から喜んだ。


 権力も名誉もいらない。


 ただ、ダンジョンでのんびり暮らしたいだけなのだ。


 もっとも、セレスティアが王妃になったあとも、ダンジョンを巡っていろいろな問題が持ち込まれることになるのだが……。

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