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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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推し活

「アレン、給料を上げて!」


 アレンがマイルームでくつろいでいると、アリスがいきなり訴えてきた。


「なんだ、藪から棒に。給料は人並みに上げてるだろ」


「足りないのよ!」


「何に使ってるんだよ」


「フルーツと、前世で好きだった推し活グッズよ!」


「それで金欠になっても知らんがな」


 アレンは呆れた顔をした。


「あなたと違って、私には食事も必要なのよ!」


「いや、俺だって食事くらいするぞ?」


「あなた、マイルームで好き勝手に暮らしてるじゃない! ダンジョンマスターだからお金に困らないし!」


「ダンジョンポイントと給料は別物だ。それに、俺だって無駄遣いはしていない」


「私だって無駄遣いなんかしてないわよ! 推し活は必要経費なの!」


「その必要経費で生活が破綻しかけてるんだろうが」


「だから給料を上げてって言ってるの!」


「嫌だね。冒険者活動でもして金を稼げよ」


「無理よ! 私、戦えないもん!」


「だったら身の丈に合った生活をしろ」


「使った金額は愛の深さよ!」


「その愛を少しは財布に向けろ」


 アレンは取り合わなかった。


 そもそも、アリスの給料は人並みどころか、十分に生活できる金額を支給している。


 それで足りないというのなら、原因は明白だった。


 推し活である。


 アリスは前世で好きだった人物のグッズを見つけると、ついつい買ってしまう。


 さらに、フルーツにも目がない。


 高級なフルーツを見つければ買い、限定品のグッズが出れば買う。


 そんな生活を続けていれば、いくら給料があっても足りない。


「とにかく、給料を上げてほしければ成果を出せ」


「成果って、何よ?」


「俺に聞くな。自分で考えろ」


「……」


 アリスはしばらく考え込んでいたが、やがてニヤリと笑った。


「アレン、覗きが趣味だってバラすわよ?」


「お前、それしか交渉材料がないのか!」


「効果はあると思うわ!」


「もうバレてるし、一緒に土下座したじゃないか!」


「それでも、まだ隠しておきたいことくらいあるでしょう?」


「お前なぁ……」


 アレンは頭を抱えた。


 どうして給料の話をしていたはずなのに、こんな方向に進むのだろうか。


「何か手はないの?」


 アリスが食い下がる。


「……お前もプロマイドを出してみるか?」


「え?」


「プロマイドを売って、その売り上げに応じて給料を上げてやるぞ」


 アレンとしては、適当に言っただけだった。


 アリスのプロマイドが売れるとは思っていない。


「町娘を誰が欲しがるのよ!」


「自分で言うなよ……」


 しかし、アリスはそこで諦めなかった。


 腕を組み、しばらく考え込む。


 そして、突然顔を輝かせた。


「そうだ! アイデアが出たわ!」


「嫌な予感しかしないんだが」


「アレン、あなたのドッペルを使えばいいのよ!」


「俺の?」


「そう! あなたがセレスティア様やフローラ様、シャルロッテ様、エレナ様に化けるの!」


「待て。なんで俺がそんなことをしなきゃならないんだ?」


「服を変えて、ポーズを変えて、いろんな写真を撮るのよ! 私が撮影担当ね!」


「いや、だから……」


「売れたら、売り上げの一部を私がもらう。それでどう?」


「お前、最初から自分の取り分まで計算してたのかよ!」


「商売は利益が大事よ!」


 さっきまで給料が足りないと騒いでいた人間とは思えないほど、アリスの目は輝いていた。


 アレンは深いため息をついた。


「……まあ、俺がドッペルで化けるだけなら、別にいいか」


「決まりね!」


 こうして、プロマイド撮影会が始まった。


 アレンのドッペルがセレスティアに化ける。


 服装を変え、ポーズを変え、優雅な微笑みを浮かべる。


 次はフローラ。


 華やかな衣装に身を包み、少しお嬢様らしいポーズを取る。


 続いてシャルロッテ。


 そしてエレナ。


 それぞれの衣装を用意し、表情やポーズを変えながら、アリスが次々と撮影していく。


「いいわ! その角度よ!」


「お前、撮影の才能があるんじゃないか?」


「当然よ! 推し活で培った知識を舐めないで!」


「その知識、もっと別のことに使えないのか?」


「今、使ってるじゃない!」


 アリスは撮影した写真を確認し、満足そうに頷いた。


 そして、プロマイドの販売が始まった。


 結果は――。


 飛ぶように売れた。


 セレスティアのプロマイドはもちろん、フローラやシャルロッテ、エレナのプロマイドも大人気。


 衣装違い、ポーズ違いの写真まで、次々と売れていく。


 同じ人物の写真でも、衣装やポーズが違えば別の商品。


 推し活に詳しいアリスは、そのあたりも抜かりなかった。


「アレン! 大成功よ!」


「……マジか」


 売り上げを確認したアレンは、思わず目を疑った。


 まさか、こんなに売れるとは思っていなかった。


「約束どおり、売り上げの一部をもらうわね!」


「……ああ」


 アレンは渋々、アリスに取り分を渡した。


 これでアリスの金欠問題は解決する。


 少なくとも、本人はそう思っていた。


 しかし――。


 数日後。


 アレンとアリスは、今日も揃って土下座していた。


「「申し訳ありませんでした!」」


 二人の前には、怒りに満ちた視線を向ける女性たちがいた。


 プロマイドが売れたこと自体は問題ではなかった。


 問題は、本人たちに無断で、本人そっくりのプロマイドを大量販売したことだった。


 しかも、その撮影を主導したのはアリス。


 実際に化けていたのはアレン。


 当然、二人とも言い逃れはできなかった。


「……アレン」


「はい」


「……アリス」


「はい」


「説明していただけますか?」


「「申し訳ありませんでした!」」


 こうして、アリスの給料アップを巡る騒動は、いつもどおり土下座で幕を閉じたのだった。

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