ソシャゲ理論
アレンは、41階層に設置していた試練の廊下の罠を、ダンジョンランドにも設置した。
理由は単純だった。
41階層まで到達できる冒険者は少ない。
せっかく体力を奪う仕組みを考えたのに、挑戦する人間が限られていては、稼げるダンジョンポイントにも限界がある。
ならば、もっと多くの人間に挑戦してもらえばいい。
そう考えたアレンは、試練の廊下をダンジョンランドの一角に設置したのだった。
ルールは簡単だ。
廊下を進むと、1メートル進むごとに体力を奪われる。
ただし、戻るときには体力を奪われない。
無理だと思ったら、引き返せばいい。挑戦すること自体に危険はない。
そして、廊下には1メートルごとにGFEDCBASの順でラインが引かれている。
各ラインまで到達すれば、その段階に応じた認定証がもらえる仕組みだ。
Gから始まり、F、E、D、C、B、A、そしてS。
先へ進むほど認定の難易度は上がっていく。
もちろん、奪った体力はダンジョンポイントになる。
アレンにとっては、挑戦者が廊下を進んでくれるだけでポイントが増えるのだ。
「紙切れ1枚でダンジョンポイントが増える。ボロい商売だな」
認定証の作成に必要なのは紙くらいのものだ。
挑戦者がどこまで進んだかを確認し、到達したラインに応じた認定証を渡す。
それだけである。
しかも、冒険者だけが挑戦しているわけではなかった。
ダンジョンランドを訪れた一般客の中にも、興味を持つ者が現れたのだ。
「俺もやってみようかな」
「冒険者じゃなくても挑戦できるのか?」
「認定証がもらえるなら、記念にやってみるか」
そんな声が聞こえるようになり、実際に廊下へ入っていく者も出てきた。
さらに、挑戦者を見守る人々まで現れた。
「頑張れ! あと少しだ!」
「そこまで行けるのか?」
「無理するなよ。戻るなら今だぞ!」
挑戦者がどこまで進めるのか、周囲の人間も興味津々だった。
本人が苦しみながら一歩ずつ進む姿を見て、応援する者もいれば、自分ならどこまで行けるか考える者もいる。
挑戦者が増えれば、見物人も増える。
見物人が増えれば、自分も挑戦してみようという人間も出てくる。
こうして試練の廊下は、ダンジョンランドの新しいアトラクションとして少しずつ定着していった。
その様子を見ながら、アレンは考えていた。
少数の廃課金から大量にポイントを取るのと、多数の微課金から少しずつポイントを取るのでは、どちらが美味しい商売なのだろうか。
もちろん、廃課金の存在はありがたい。
しかし、廃課金してくれる人間は限られている。
一方、少額なら払ってもいいと思う人間は大勢いる。
一人から得られるポイントが少なくても、人数が増えれば話は変わる。
「一人から大量に取るより、大勢から少しずつ取る方がいいかもしれないな」
アレンは、試練の廊下を眺めた。
認定証を手に喜ぶ者。
次こそは上のランクを目指そうと意気込む者。
挑戦者を見守りながら、自分も挑戦するか迷っている者。
その誰もが、アレンにとっては貴重なダンジョンポイントの供給源だった。
「……これ、他にも応用できそうだな」
アレンの頭の中で、新しい商売の可能性が広がっていく。
ダンジョンランドは、今日も順調に発展していた。




