クイズダンジョン
アレンとアリスは、エレナの前で土下座していた。
「申し訳ありませんでした!」
二人の声が揃って響く。
そもそもの始まりは、アリスだった。
冒険者以外の人間にもダンジョンに来てもらう方法はないか。そんなことを考えていたアリスが、ある日、画期的なアイデアを思いついたのだ。
「アレン様! クイズダンジョンを作りましょう!」
「クイズダンジョン?」
「はい! 冒険者はモンスターと戦うためにダンジョンに来ます。でも、戦うことが苦手な人は、わざわざダンジョンに来ようとは思いませんよね?」
「まあ、そうだな」
「だったら、戦わなくても楽しめる場所を作ればいいんです!」
アリスは力説した。
ダンジョンには、冒険者以外にも楽しめる可能性がある。
家族連れや友人同士でも遊べるアトラクションを用意すれば、これまでダンジョンに縁のなかった人たちにも興味を持ってもらえるかもしれない。
「なるほど。面白そうだな」
「でしょう!」
こうして、モンスターの出現しないクイズダンジョンのエリアが開設された。
最初に用意したのは、○×クイズだった。
問題を読み、正しいと思えば○、間違っていると思えば×のエリアに進む。
もちろん、普通に正解するだけでは面白くない。
そこで、間違えた者には泥を被る仕掛けを用意した。
間違えた瞬間、頭上から泥が降ってくる。
安全性には配慮しているが、泥まみれになることには変わりない。
友人同士で参加すれば、誰かが間違えるたびに笑いが起きた。
自分が泥を被れば悔しがり、友人が泥を被れば大笑いする。
正解することだけでなく、間違えたときの反応まで含めて楽しめるアトラクションになった。
次に作ったのは、謎解きダンジョンだった。
各階層には、さまざまなキーワードが散りばめられている。
壁の文章や部屋に置かれた道具、何気なく描かれた絵。そうしたものに隠されたヒントを集め、謎を解かなければ次の階層に進めない。
一つの階層だけを見ていても答えは分からない。
前の階層で見つけたキーワードが、後の階層で重要な意味を持つこともある。
参加者たちは仲間と相談しながら、ああでもない、こうでもないと頭を悩ませた。
戦闘能力は必要ない。
必要なのは観察力と発想力、そして諦めずに考え続けることだった。
こうして、クイズダンジョンはアトラクションとして人気を集めるようになった。
ところが、アレンには気になることがあった。
「アリス、クイズダンジョンは人気が出ているんだよな?」
「はい! 挑戦する方も増えています!」
「それなら、ダンジョンに来る人間も増えているのか?」
「……いえ、そこまでは」
アリスが申し訳なさそうに答えた。
クイズダンジョンで遊んでいるのは、もともとダンジョンに来ていた人間が中心だった。
新しいアトラクションとしては成功したが、それを目的にダンジョンの外から人を呼び込むところまでは至っていない。
「うーん、難しいな。もっと面白い問題を用意すれば、外からも人が来るようになるか?」
「そうですね! 問題の種類を増やしてみましょう!」
こうして、アレンとアリスは新しいクイズの問題を考え始めた。
一般常識、雑学、ひっかけ問題。
さまざまな問題を考えていくうちに、アレンは一つの問題を思いついた。
――エレナのお尻には、ほくろがある。○か×か。
アレンは、これは面白いと考えた。
そして、その問題をクイズダンジョンに追加した。
ところが、それがエレナにバレた。
現在、アレンとアリスはエレナの前で土下座している。
「アレン様?」
「はい……」
「どうして、私のお尻にほくろがあるかどうかを、クイズの問題にしたのかしら?」
「問題のバリエーションを増やそうと思いまして……」
「そういうことを聞いているのではありませんわ」
エレナの声が少し低くなった。
「そもそも、どうしてそんな問題を思いついたのですか?」
「……面白そうだったから?」
「アレン様?」
「申し訳ありませんでした!」
アレンは再び頭を下げた。
しかし、エレナはまだ納得していなかった。
「それで、アレン様」
「はい……」
「私のお尻に、ほくろはあるのかしら?」
「……」
アレンは黙り込んだ。
隣では、アリスも息を潜めている。
そして、エレナは思わず口にした。
「何で知ってるんです」
「アレン様?」
「申し訳ありませんでした!」
アレンは再び、全力で土下座した。




