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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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万能ドッペル

アレンのダンジョンには、ドッペルという存在がいる。


 アレンが生み出したドッペルは、かなり便利な存在だった。


 最大の特徴は、ステータスを自由に振れること。


 必要な能力にポイントを振れば、それに合わせて役割を変えることができる。


 前衛が足りなければ、力と耐久力を上げる。


 魔法使いが足りなければ、魔力を伸ばす。


 回復役が足りなければ、回復系の能力を伸ばす。


 斥候が必要なら、素早さや感知能力を重視する。


 普通の冒険者なら、長い時間をかけて身につける必要がある。


 しかしドッペルなら、必要になった職業に合わせて調整すればいい。


 アレンにとっては、非常に使い勝手のいい存在だった。


 そして、その能力が冒険者たちの間で思わぬ形で活躍するようになっていた。


「お前はもう必要ない」


「……分かった」


 パーティーから追放された冒険者がいる。


 理由は様々だ。


 火力が足りない。


 防御が足りない。


 求められている役割を果たせない。


 あるいは、単純にパーティーの方針と合わなくなった。


 以前なら、追放された冒険者が新しいパーティーを見つけるのは簡単ではなかった。


 冒険者は、それぞれが必要な役割を持っている。


 前衛ばかり集めても仕方がない。


 魔法使いばかりでも困る。


 回復役がいなければ長く戦えない。


 そのため、ちょうどいい人材を探すのは意外と難しい。


 しかし、アレンのダンジョンには世界中から冒険者が集まっている。


 パーティーを組み直す機会も増えていた。


 そして、そこにドッペルが入り込む。


「君、新しいパーティーを探しているのか?」


「ああ」


「それなら、ちょうどいいパーティーがある」


「本当か?」


「今、魔法使いを探している」


「俺は魔法使いじゃないぞ」


「問題ない」


「問題ないのか?」


「行ってみれば分かる」


 追放された冒険者は、半信半疑でドッペルについていく。


 そして紹介されたパーティーに加入する。


「よろしく頼む」


「ああ、よろしく」


 こうして、一人の冒険者が新しい仲間を得る。


 ただし――。


 そのパーティーには、もう一人いる。


 ドッペルだ。


 もちろん、誰もそれに気づいていない。


 見た目は普通の冒険者。


 会話も普通。


 戦闘も普通にこなす。


 だから、仲間たちは何の疑問も持たない。


「これで人数も揃ったな」


「ああ」


「じゃあ、行こう」


 パーティーはダンジョンへ向かった。


 そして戦闘が始まる。


 モンスターが現れる。


「来るぞ!」


 冒険者たちが身構える。


 前衛が盾を構える。


 魔法使いが詠唱を始める。


 回復役が後方へ下がる。


 そして――。


 ドッペルには、モンスターが寄ってこない。


「……」


「……」


 冒険者たちは少しだけ違和感を覚える。


「なんか、あいつだけ狙われなくないか?」


「そういえば……」


 モンスターは他の冒険者を狙っている。


 しかし、ドッペルにはほとんど向かわない。


「まあ、いいんじゃないか?」


「助かってるしな」


「そうだな」


 深く考えることはなかった。


 むしろ、狙われないなら便利だ。


 そう思って、そのまま戦闘を続ける。


 ドッペルも何事もなかったかのように戦う。


 必要なときには攻撃する。


 必要なら魔法を使う。


 回復役が足りなければ回復する。


 そのパーティーに足りない役割を、きっちりと埋めていく。


 別のパーティーでは、前衛が足りなかった。


 そこへドッペルが入る。


 また別のパーティーでは、回復役が足りなかった。


 そこにもドッペルが入る。


 魔法使いが足りなければ魔法使い。


 斥候が足りなければ斥候。


 必要な職業に合わせて、アレンがステータスを調整する。


 ドッペルは、まるでゲームのNPCだった。


 ユーザーである冒険者がNPCを一人連れて、ソロパーティーでダンジョンに挑んでいる。


 そんな状態になっていた。


 しかも、そのNPCが仲間にドッペルだと気づかれることはない。


 ただ一つ。


 モンスターに狙われないことだけは、たびたび不思議がられていた。


「そういえば、あいつってなんでモンスターに狙われないんだ?」


「知らない」


「特殊なスキルでもあるのか?」


「本人に聞けば?」


「……今度聞いてみるか」


 だが、聞かれたところでドッペルは普通に答えるだけだ。


 正体を知られることはない。


 そして今日も、足りない職業を埋めるために新しいパーティーへ送り込まれていく。


 アレンのダンジョンでは、冒険者が増えたことでパーティーの組み替えも活発になった。


 追放された冒険者も、新しい場所を見つけやすくなった。


 そして、足りない職業をドッペルが補う。


 冒険者たちが知らないところで、ダンジョンの環境は少しずつ調整されていた。


 しかし――。


 その調整をしている本人はというと。


「……」


 マスタールームでゲームをしていた。


 画面を見つめ、コントローラーを操作する。


 冒険者たちがパーティーを組み直している間も。


 追放された冒険者が新しい仲間を見つけている間も。


 ドッペルが足りない職業を補っている間も。


 アレンは特に気にしていない。


「よし」


 ゲームのステージをクリアする。


「次はこれか」


 そして、またゲームを始める。


 ダンジョンの裏側では、ドッペルが今日も働いている。


 そのおかげで冒険者たちは快適にダンジョンを攻略できている。


 だが、アレン本人は――。


「これが本当のニート生活だな」


 今日もマスタールームでゲームを楽しんでいた。

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