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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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舞茸

アレンはマスタールームで、余ったポイントを眺めていた。


 最近はダンジョンの設備もかなり充実している。


 必要なものは大体揃っている。


 新しい施設を作ることもできるし、ダンジョンを広げることもできる。


 しかし、特に今すぐ必要なものがあるわけではない。


「余ったポイントで何しよう……」


 アレンはしばらく考えた。


 そして、ふと思った。


「……舞茸食べたい」


 なぜ舞茸なのか。


 理由はない。


 ただ、急に食べたくなった。


 そうなると、もう仕方がない。


「鍋にするか」


 舞茸を食べるなら鍋だ。


 アレンはいつものメンバーを呼ぶことにした。


 セレスティア、アリス、フローラ、クラリス。


 五人で鍋を囲む。


 ただし、季節は夏だった。


「……寒いですわね」


 セレスティアがこたつに入りながら呟く。


 部屋にはエアコンが効いている。


 外は暑いはずなのに、室内はかなり涼しい。


 その中で、全員がこたつに入っている。


 さらに、こたつの中央には鍋。


 温かい湯気が立ち上り、具材がぐつぐつと煮えている。


「これ、夏にやることなんですか?」


 フローラが尋ねる。


「鍋だからな」


「答えになっていませんよ」


「鍋にはこたつだろ」


「それは冬の話では?」


 クラリスも呆れたように鍋を眺める。


「わざわざエアコンで部屋を寒くして、その中でこたつに入る意味が分からない」


「俺も途中から分からなくなってきた」


「最初からではありませんか?」


「……そうかもしれない」


 アレンは素直に認めた。


 そもそもの始まりは、余ったポイントの使い道を考えていたら舞茸が食べたくなったことだった。


 そこから鍋になった。


 鍋ならこたつだと思った。


 しかし夏なので、部屋にはエアコンが必要になった。


 結果として、夏なのに冬のような環境が完成した。


「でも、鍋は寒い中やるのがいいですよね」


 アリスが言った。


「そうだろ?」


 アレンが頷く。


「だからエアコンを入れた」


「そこまでして……」


 セレスティアが呆れる。


「雰囲気が大事なんだ」


「雰囲気のために夏を冬に変えていますわよ?」


「まあ、いいじゃないか」


 アレンは鍋をつつく。


 実際、鍋は美味しかった。


 舞茸をはじめ、肉や野菜、豆腐など、具材が次々と減っていく。


「これ、美味しいですね」


 アリスも嬉しそうに鍋を食べている。


「舞茸もいい感じだ」


「アレン、最初からこれが食べたかったんですよね?」


 クラリスが聞く。


「ああ」


「ポイントの使い道を考えていたのに?」


「舞茸が食べたくなったからな」


「……ポイント関係ないですよね」


「関係ないな」


 クラリスはため息をついた。


 それでも、鍋を囲む時間そのものは悪くない。


 外が夏だということを忘れるくらい、部屋は涼しい。


 こたつの中は暖かい。


 目の前には熱い鍋。


 なんとも不思議な食事会だった。


 しばらくして、鍋の具材もかなり少なくなった。


「そろそろ締めにするか」


「雑炊ですね」


 アリスが反応する。


「そうだ」


 アレンは残った鍋の汁にご飯を入れた。


 少し煮込んでから、卵を落とす。


 卵がふわりと広がっていく。


「美味しそうです」


 アリスが鍋を覗き込む。


 そして、ふと気になった。


「そういえば、この鶏肉と卵はどこ産ですか?」


「アリスのダンジョン産だ」


「……」


 アリスの動きが止まった。


「鶏肉もですか?」


「はい」


「卵も?」


「はい」


「……」


 アリスは無言で鍋を見つめる。


 先ほどまで楽しそうにしていた表情が、少しずつ曇っていく。


「……どうした?」


 アレンが尋ねる。


「……」


 アリスは答えない。


 ただ、鍋の中に入っている鶏肉を見る。


 そして、卵を見る。


「……私の鶏……」


「ん?」


「……」


 アリスはしばらく固まっていた。


 やがて、ぽつりと呟く。


「……私の鶏が食べられた……」


「……」


 その場が静かになった。


 アリスは完全に落ち込んでいる。


 そんなアリスを横目に、アレンは完成した雑炊を一口食べた。


「うまい」


「アレン様……」


 アリスの声だけが、静かな部屋に響いた。

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