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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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本当のニート生活

アレンのダンジョンによって、世界の物流には革命が起きていた。


 それまで、商品の価格を決める大きな要因の一つは、生産地からの距離だった。


 当然の話である。


 生産地から遠く離れた町へ商品を運ぶには、それだけ多くの費用がかかる。


 馬車を走らせる。


 護衛を雇う。


 宿泊する。


 食料を用意する。


 魔物や盗賊への対策も必要になる。


 長距離になればなるほど、それらの費用が商品の価格に上乗せされていく。


 だから同じ商品でも、生産地に近い町では安く、遠い町では高い。


 それが当たり前だった。


 ところが、ダンジョンが物流に組み込まれたことで、その常識が崩れ始めた。


 アレンのダンジョンを経由すれば、長距離を馬車で移動する必要がなくなる。


 さらにアレンが作った子ダンジョンも各地に存在する。


 これまで何日もかけて移動していた商人が、ダンジョンを利用することで大幅に移動時間を短縮できる。


 輸送にかかる費用が減れば、商品の価格も下げられる。


 最初は一部の商人が利用しているだけだった。


 だが、安く商品を運べると分かれば、利用しない理由がない。


「この商品、前より安くなってないか?」


「ダンジョンを使って運んだらしいぞ」


「なるほど……」


 商人たちはすぐに気づいた。


 ダンジョンを使うか使わないかで、商売の利益が大きく変わる。


 それなら、仕入れ先も変わる。


 販売先も変わる。


 今までなら距離が遠すぎて商売にならなかった場所まで、商圏に入ってくる。


 やがて商品の価格を決める基準そのものが変化していった。


 生産地からどれだけ離れているか。


 それよりも――。


 ダンジョンからどれだけ離れているか。


 そちらのほうが重要になっていく。


 生産地から千キロ離れていても、ダンジョンを利用できる場所なら安くできる。


 逆に、生産地から近くてもダンジョンから遠ければ、輸送費が高くなる。


 これまでの常識とは、まるで違う物流網が形成されていった。


 そして、その変化はダンジョン周辺の町にも影響を与えた。


 アレンの子ダンジョンは、もともとCランクダンジョンだった。


 そのため、以前から冒険者や商人が集まり、周辺には町が存在していた。


 しかし、物流の拠点として使われるようになると、その町の意味が変わっていく。


 冒険者だけではない。


 商人が集まる。


 商品を保管する倉庫が増える。


 宿が増える。


 食堂が増える。


 馬車を整備する店が増える。


 商人を相手にする店も増える。


 人が増えれば、さらに店が増える。


 各国にあるアレンの子ダンジョン周辺で、同じような現象が起きていった。


「最近、この町は人が増えたな」


「ダンジョンを利用する商人が増えたからだろう」


「前は冒険者の町だったのにな」


「今じゃ商人の町でもあるな」


 ダンジョンの利用者が増える。


 利用者が増えれば、ダンジョンに入ってくるポイントも増える。


 ポイントが増えれば、ダンジョンはさらに発展する。


 ダンジョンが発展すれば、さらに利用しやすくなる。


 すると、また利用者が増える。


 町も栄える。


 商売も増える。


 そして、またダンジョンの利用者が増える。


 完全な好循環だった。


 各国の商人たちは新しい物流網を利用し始め、各国の為政者たちは経済への影響を考え始める。


 ダンジョンの周辺に新しい町ができるわけではない。


 もともとあった町が、物流の変化によって急速に成長していく。


 世界の人々にとっては、大きな出来事だった。


 しかし――。


 その中心にいるアレンはというと。


 マスタールームにいた。


「……」


 テレビの前に座っている。


 手にはコントローラー。


 画面には、昔懐かしいレトロゲームが映し出されていた。


「……ここ、こんなに難しかったっけ?」


 アレンは真剣な顔で画面を見つめる。


 世界では物流革命が起きている。


 商品の価格構造が変わっている。


 ダンジョン周辺の町が発展している。


 商人たちが新しい商売を始めている。


 各国の経済まで変わり始めている。


 そのすべてのきっかけとなった人物は――。


「よし!」


 ゲームのステージをクリアした。


「やった!」


 アレンは満足そうに頷いた。


 そして次のステージを始める。


 自分が外に出る必要はない。


 誰かに命令する必要もない。


 ダンジョンを利用する人間が増えれば、勝手にポイントが入ってくる。


 町が栄えれば、さらに利用者が増える。


 利用者が増えれば、またポイントが増える。


 アレンが何もしなくても、世界のほうが勝手に回り始めていた。


「……」


 アレンはコントローラーを握ったまま、ふと思う。


 昔は、ダンジョンをどうやって経営するかで頭を悩ませていた。


 ポイントが足りない。


 客を増やさないといけない。


 施設を作らないといけない。


 どうすればダンジョンに人が来るのか考え続けていた。


 それが今では――。


「何もしなくてもポイントが増える……」


 アレンは画面を見ながら呟いた。


「これが本当のニート生活だな」


 世界は変わっていく。


 商人は忙しく走り回る。


 町は発展する。


 各国の経済も変化する。


 そして、その中心にいるダンジョンマスターは。


「さて、次はどんなステージだったかな」


 今日もマスタールームで、レトロゲームを楽しんでいた。

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