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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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聖女の祝福

アレンは、ふと不思議に思った。


 ポーションでは病気が治らない。

 ヒールでも治らない。


 傷なら治せる。

 体力を回復させることもできる。


 それなのに、聖女の祝福なら病気を治せる。


「……なんでだ?」


 今まで深く考えたことはなかった。


 聖女だから。

 聖魔法だから。


 そういうものだと思っていた。


 だが、病気の原因について研究を始めた今なら、話は変わってくる。


 治療できるという結果があるなら、その仕組みを調べる価値がある。


 それが分かれば、今まで治せなかった病気を治せるようになるかもしれない。


「セレスティアの研究所で調べてみるか」


 アレンは、研究所の協力を得て、エレナが患者を治療するところを詳しく調べることにした。


 まずは病気の患者。


 エレナが患者の前に立ち、祝福を唱える。


 すると、患者の体内で変化が起こった。


 研究員たちが観察していると、病原菌が死滅していく。


「……本当に消えている」


 アレンも結果を確認する。


 次は毒を受けた患者だった。


 同じようにエレナが祝福を唱える。


 すると、今度は体内に残っていた毒素が分解されていく。


「毒も分解してるのか」


 傷を治すヒールとは明らかに違う。


 祝福は、ただ傷を治しているわけではない。


 病気の原因そのものに作用している。


「なるほど……」


 アレンは考え込んだ。


 だったら、もっと効率を上げられるかもしれない。


 アレンは、エレナに人体の仕組みを教えることにした。


「人体って、思っている以上に複雑なんだ」


「人体の仕組み……ですか?」


「ああ」


 とはいえ、アレンがエレナに授けたのは、本格的な医学書ではなかった。


 アレンが知識を引っ張り出して用意したのは、学校の教科書レベルのものだ。


 人体にはどんな臓器があり、それぞれ何をしているのか。


 血液はどこを流れているのか。


 呼吸によって何が起こるのか。


 食べ物が体の中でどう処理されるのか。


 病気になったとき、体のどこで何が起こっているのか。


 現代の医療知識からすれば基礎中の基礎。


 だが、この世界ではそれすら十分に知られていない。


 エレナは一つ一つ覚えていった。


 そしてアレンは、エレナのこれまでの祝福の使い方を聞いて、あることに気づいた。


「エレナの祝福って、かなり大雑把なんだよ」


「大雑把……ですか?」


「ああ。たとえば、足がこってる人に全身マッサージしてるようなものだ」


「……」


「足を治したいだけなのに、頭から足まで全部やってるような感じだな」


 エレナは自分の祝福を思い返す。


 病人を治す。


 毒を取り除く。


 悪いものを消す。


 それができることは分かっていた。


 だが、どこに、何があるのか。


 そこまで意識して使ってはいなかった。


「もっとピンポイントに効果を発揮できるはずだ」


「病原菌だけを狙う、ということですか?」


「そういうことだ」


 アレンの考えは単純だった。


 祝福そのものの力を強くするのではない。


 必要な場所へ、必要な効果だけを届ける。


 それができれば、今までより効率よく治療できる。


 エレナは人体の仕組みを学びながら、少しずつ祝福の使い方を変えていった。


 そして再び、患者を治療する。


「祝福を」


 光が患者を包む。


 研究員たちは、以前との違いを記録していく。


 結果は明らかだった。


 祝福の効果が上がっている。


 より少ない力で、より正確に病気へ作用している。


「本当に変わったな」


 アレンも結果を見ながら頷いた。


 人体の仕組みを知る。


 ただそれだけで、聖女の力の使い方まで変わった。


 エレナにとっては、今まで感覚で使っていた力に、知識という指針が加わったのだ。


 そして、この結果を受けて、聖女の教育にも新しい項目が加えられることになった。


 聖魔法。


 祝福。


 聖歌。


 そして――人体の仕組み。


 聖女は病気を治す力を持つ。


 ならば、その力を正しく使うために、人間の体を知らなければならない。


 それは、この世界の医療にとって、小さな一歩だった。

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