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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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ピラミッド

アレンが次々と作り出した建造物を見ていたのは、観光客だけではなかった。


 セレスティアは、アレンの世界を知ることが王国の発展につながると考えていた。


 アレンが当たり前のように話すものには、この世界には存在しない考え方や技術がいくつもある。


 それならば、建築物にも何か王国の役に立つものがあるかもしれない。


 そう考えたセレスティアは、フローラと一緒に十階層を訪れていた。


 二人が最初に向かったのは、巨大なピラミッドだった。


 目の前にそびえ立つ巨大な建造物を見上げ、セレスティアは思わず声を漏らす。


「凄いわね」


 近くで見ると、その大きさはさらに実感できる。


 巨大な石が何段にも積み重ねられ、頂上へ向かって細くなっている。


 これほどの量の石を運び、積み上げるだけでも、とてつもない労力が必要になるだろう。


 フローラも感心した様子で見上げていた。


「これを人の手で作るには、どれだけの人と時間がかかるか分かりません」


「そうね」


 セレスティアも頷く。


「これだけのサイズで作って、崩れないのも凄いわね」


 建築物として見れば、驚異的だった。


 これほど巨大なものを、長期間にわたって維持できる構造にした技術。


 大量の石材を用意する人間。


 それを運ぶ人間。


 積み上げる人間。


 全体を管理する人間。


 完成までに必要になるものを考えれば、王国が同じものを作ろうとすれば莫大な費用になる。


「アレンの世界では、こういう建造物を作る技術が発達していたのかしら?」


「それだけの技術があったのなら、王国でも何か利用できそうですが……」


 フローラはピラミッドを眺めながら考える。


 しばらく考えたあと、首を傾げた。


「応用が思いつきません」


「私も必要性を感じないわ」


 二人の視線が再びピラミッドへ向く。


 確かに凄い。


 しかし、凄いことと役に立つことは別だった。


 城を作るなら、普通の城のほうが使いやすい。


 倉庫を作るなら、わざわざ巨大な三角形にする必要はない。


 人が住むには不便だ。


 軍事施設として考えても、もっと効率のいい形がいくらでもある。


「……見事なのだけれど」


「はい」


「王国の建築に取り入れるところがないわね」


「そうですね」


 早くも評価は微妙なものになった。


 二人は次の建造物へ向かう。


 そこにあったのは、巨大な自由の女神だった。


 セレスティアとフローラは、しばらく無言で見上げた。


「……これは?」


「自由の女神、だそうです」


「何をするものなの?」


「分かりません」


 フローラも困った顔をする。


 巨大な女性像が立っている。


 しかし、武器を持っているわけでもない。


 何かの設備があるわけでもない。


 建物として使えるわけでもない。


「王国の発展に役立つものは?」


「……思いつきません」


「そうよね」


 二人は納得してしまった。


 そして、その隣にある凱旋門を見る。


「これは?」


「凱旋門です」


「門よね?」


「はい」


「何がしたいの?」


「……分かりません」


 フローラは困り果てた。


 門として通ることはできる。


 しかし、門なら普通の門でいい。


 わざわざ巨大で立派な装飾を施した理由が分からない。


「もしかして、アレンの世界では門を大きくすることに意味があったのでしょうか?」


「そうなのかもしれないわね」


 セレスティアも確信が持てない。


 最後に二人が向かったのはエッフェル塔だった。


「これは高いわね」


 セレスティアが見上げる。


「上に登れるみたいです」


 実際に展望台まで上がってみる。


 すると、そこからは十階層の街並みが一望できた。


「これは……」


 セレスティアが目を見開く。


「いい景色ですね」


 フローラも素直に感心する。


「ええ。これは使えるわ」


 四つの建造物の中で、初めて明確に価値を見つけた。


 ただし、評価されたのはエッフェル塔そのものというより、そこから見える景色だった。


 セレスティアはもう一度、ピラミッドを見る。


 そして自由の女神を見る。


 凱旋門を見る。


 どれも立派ではある。


 だが、王国の発展につながるものがあるかと言われれば、答えは出ない。


「アレンの世界を知ることは、王国の発展につながると思っていたのだけれど……」


「今回は難しそうですね」


「ええ」


 セレスティアは静かに頷いた。


 アレンが自信満々に作った歴史的建造物は、セレスティアとフローラによって見事なまでに酷評されていた。


 そして――。


 十階層に一大観光地を作るという計画は、早くも見直されることになった。

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