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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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スポーツ観戦

車が持つ本来のポテンシャルを知った反応はさまざまだった。


 同じ車を見ていても、その感想は人によって違う。


 クラリスは今のままでいいらしい。


 時速30キロのゴーカート仕様でも十分に楽しめた。


 むしろ、これ以上速くなる必要があるのかと思っているようだった。


 安全に走れて、景色を楽しみながら移動できる。


 クラリスにとっては、それで十分だった。


 一方で――。


 セレスティアとシャルロッテとフローラは、そうではなかった。


 一度、本来の車が持つ速度を知ってしまった。


 時速30キロという数字が、それまでとは違って見える。


 以前なら十分に速いと思っていた。


 だが、本来はもっと速く走れる。


 そう知ってしまった以上、時速30キロのゴーカート仕様では物足りない。


 知らなければよかったのかもしれない。


 しかし、一度知ってしまったものは仕方がない。


 セレスティアたちは、時速30キロのゴーカート仕様に満足できなくなっていた。


 アレンとしては、少し余計なことを教えてしまった気もする。


 ただ、サーキット場そのものは大成功だった。


 観客の反応もよかった。


 車が走り出すだけで歓声が上がる。


 速度が上がれば、それだけで盛り上がる。


 カーブを曲がれば、観客の視線が一斉に車を追う。


 この世界では、これほど大勢の人間が一つのものを見て楽しむ機会は、それほど多くない。


 娯楽の少ない世界だ。


 だからこそ、車が走るというだけでも十分な見世物になる。


 アレンは観客の様子を眺めながら考えた。


 これは受け入れられそうだ。


 ただし、問題もある。


 車を運転できる人間が少ない。


 というより、今のところアレンとアリスしか運転できない。


 車を増やしても、運転する人間がいなければ意味がない。


 観客を増やすことはできても、運転できる人間まで一気に増やすことはできない。


 そこでアレンは、別の可能性に目を向けた。


 スポーツだ。


 スポーツなら、車のような機械は必要ない。


 人間が走り、ボールを追いかける。


 ルールを覚えれば誰でも参加できる。


 そして何より、観客として見ることもできる。


 アレンはスポーツに可能性を感じた。


 そして、野球とサッカーの試合を定期的に開催した。


 最初は当然、選手がいない。


 そこで選手はドッペルだった。


 必要な人数を揃えることができる。


 ルール通りに動かすこともできる。


 何より、試合を成立させることができる。


 最初は、それで十分だった。


 観客にとっても、知らないスポーツを見るところから始まった。


 最初はルールもよく分からない。


 何をすれば点が入るのか。


 なぜ選手が走るのか。


 なぜ観客が盛り上がっているのか。


 分からないことだらけだった。


 それでも、試合を見ているうちに少しずつ理解していく。


 そして、試合を続けていると、別の変化が起き始めた。


 自分もやってみたい。


 そう思う人間が出てくる。


 試合を見るだけではなく、実際にボールを蹴ってみる。


 バットを振ってみる。


 最初は遊びだった。


 しかし、遊びで始めたものが、少しずつ本格的になっていく。


 次第に現地人がドッペルに変わっていった。


 選手の中に現地人が増えていく。


 ドッペルだけで試合をする必要もなくなっていった。


 それでも最初の頃は、まだドッペルの力が必要だった。


 人数が足りなければドッペルが入る。


 試合を成立させるために、ドッペルが選手として参加する。


 それが当たり前だった。


 ところが、時間が経つにつれて状況が変わっていった。


 選手を目指す人間が増える。


 試合を見に来る人間も増える。


 そして、選手同士で競い合うようになる。


 気がつけば、スポーツは単なる新しい娯楽ではなくなっていた。


 現地人自身が楽しみ、現地人自身が競うものになっていた。


 そして二年もしたら――。


 ドッペルがいなくても試合が成立するようになった。


 最初はアレンが用意したものだった。


 しかし、二年後には自分たちだけで続けられるようになっていた。


 アレンは、その変化を見ながら少し感心する。


 自分が作ったものが、自分の手を離れていく。


 それはダンジョンの経営とは少し違う感覚だった。


 スポーツそのものが、この世界に根付き始めている。


 そして現在。


 アレンとアリスは、それぞれのチームのオーナーだ。


 ただし、まだ二チームしかない。


 アレンのチームとアリスのチーム。


 今のところ、それだけである。


 二チームしかないので、試合をすれば必ず同じ相手と戦うことになる。


 それでも観客は集まる。


 選手たちも勝つために真剣になる。


 まだ始まったばかりなのだから、これでも十分なのかもしれない。


 これからチームが増えるのか。


 新しいチームを作ろうとする者が現れるのか。


 それとも、二チームだけのままなのか。


 それは、まだ分からない。


 アレンも、未来のことまでは考えていなかった。


 ただ、車を走らせる娯楽を作ったと思ったら、今度はスポーツまで始まった。


 娯楽の少なかった世界に、少しずつ新しい遊びが増えていく。


 そして、その遊びを楽しむのは、いつの間にかアレンたちだけではなくなっていた。

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