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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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一家に一人

アレンとアリスは正座していた。


 というか、正座させられていた。


 つい先ほどまで、二人はサーキット場で車を走らせていた。


 アレンは自分の科学力を見せるつもりだった。


 アリスも前世で運転免許を持っていたため、久しぶりの運転を楽しんでいた。


 車が走り出した直後までは、二人ともかなり楽しんでいた。


 しかし、試乗会が終わってみれば、この有様である。


 サーキット場での試乗会が終わったあと、二人を待っていたのは説教だった。


 しかも、ただ怒られただけではない。


 アレンとアリスは、こうして正座させられている。


 さすがに二人とも、もう反論する気にはなれなかった。


 車から降りた令嬢たちのドレスは濡れていた。


 あれだけの速度で走れば、何が起きても不思議ではない。


 だが、問題はそれだけではなかった。


 サーキット場には観客も入っていた。


 せっかくの試乗会だ。


 観客たちは、珍しい車が高速で走るところを楽しみにしていた。


 当然、令嬢たちが車から降りたところも見ている。


 このままでは、彼女たちに何が起きたのか観客にばれてしまう。


 それだけは避けなければならなかった。


 そこでエレナが浄化の魔法を使った。


 エレナが魔法を使うと、濡れてしまったドレスを綺麗にする。


 目立つような痕跡もなくなっていく。


 そのおかげで、観客にばれることはなかった。


 令嬢たちの尊厳は守られた。


 観客からすれば、少し服が濡れたように見えた程度だったのだろう。


 試乗会そのものが台無しになることもなかった。


 しかし、怒りは収まらない。


 観客にばれなかったからといって、本人たちが気にしないわけではない。


 むしろ、本人たちの中ではしっかりと問題として残っていた。


 そして、車内には別の問題が残っていた。


 アレンは後部座席を見る。


 そこには、試乗会の激しさを物語るような状態が残っている。


 エレナが浄化してくれたのは令嬢たちの方だ。


 車内まで綺麗になったわけではない。


 つまり――。


 後始末は自分たちでやらなければならない。


 アレンは心の中で思った。


 後部座席にもかけてくれよ。


 もちろん、口には出さない。


 今の状況でそんなことを言えば、説教がさらに長くなることは目に見えていた。


 結局、アレンはバケツと雑巾を持って、後部座席を一生懸命掃除することになった。


 さっきまで自分の科学力を見せてやると意気込んでいた男とは思えない姿である。


 アリスも正座させられている。


 こちらも、前世で運転免許を持っていたという経験を活かして、かなり本格的な走りをしていた。


 だが、今となってはその経験が何の役に立つのか分からない。


 二人とも、さっきまでの勢いはどこにもない。


 そして、令嬢たちの反応はそれぞれ違っていた。


 セレスティアは、何も起きていないというスタンスだった。


 表情も落ち着いている。


 まるで最初から何も問題などなかったかのようだ。


 フローラも何も起きていない顔をしている。


 普段と変わらない様子で、その場に立っている。


 シャルロッテも同じだった。


 三人はノーダメージだ。


 少なくとも、表面上は。


 一方、クラリスは顔を真っ赤にしている。


 本人としては、とても平静ではいられない。


 もうお嫁にいけない、と恥ずかしがっている。


 アレンからすれば、観客にはばれていないのだから、そこまで気にしなくてもいいのではないかと思う。


 だが、本人にとってはそういう問題ではない。


 エレナは怒っている。


 浄化の魔法まで使ってくれたというのに、怒っているものは怒っている。


 むしろ、二人が楽しそうに車を走らせていたところまで見ていたため、余計に呆れているのかもしれない。


 そしてリリアは――。


 そんなこともあるよねー、という感じだった。


 特に気にしている様子もない。


 アレンはリリアを見る。


 他の令嬢たちがそれぞれ反応している中で、一人だけ妙に軽い。


 こいつ本当に令嬢か?


 そんなことを考えながら、アレンは掃除を続ける。


 バケツの水を替え、雑巾を絞る。


 そして、後部座席をひたすら拭いていく。


 科学力を見せるどころか、最後は雑巾がけである。


 だが、正座させられているアレンが今考えていることは、そんなことではなかった。


 目の前で浄化の魔法を使うエレナを見ながら、アレンは別のことを考えていた。


 聖女は万能だな。


 一家に一人欲しいな。


 怒られている最中だというのに、アレンの頭の中はそんなことを考えていた。


 そして、隣ではアリスも黙って正座している。


 こうして二人は、サーキット場で得た科学力の成果を自分たちの手で掃除しながら、長い反省の時間を過ごすことになった。


 少なくともアレンは、反省よりも聖女の便利さについて考えていた。

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