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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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世界共通通貨

アレンは、この世界の通貨について考えていた。


 この世界では、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、大金貨、黒金貨が使われている。


 それぞれの価値は、アレンの感覚で言えば十円、百円、千円、一万円、十万円、百万円に相当する。


 小さな買い物なら鉄貨や銅貨でいい。


 少し高いものなら銀貨。


 さらに高額になれば金貨、大金貨、黒金貨を使う。


 仕組みとしては分かりやすい。


 問題は、高額な取引になったときだった。


 冒険者が大量の魔石を持ってきた場合、その買取代金をすべて硬貨で渡すとなると、かなりの量になる。


 金貨だけでも何枚になるのか分からない。


 大金貨や黒金貨を使えば枚数は減るが、それでも硬貨であることには変わらない。


 重い。


 かさばる。


 持ち運ぶのも面倒だ。


 アレンは、そこで別の方法を考えた。


「紙幣の方が使いやすいのではないか」


 紙なら軽い。


 高額な取引でも、何枚か持っていればいい。


 冒険者にとっても、魔石を売っただけで大量の硬貨を持ち歩く必要がなくなる。


 そこでアレンは、冒険者から魔石を買い取る際の支払いを、紙幣でも行えるようにした。


 紙幣はアレンの運営するダンジョンの店で使える。


 さらに、紙幣を持ってくれば、いつでも金貨と交換できるようにした。


 最初は、単純に便利な支払い方法の一つだった。


 冒険者が魔石を売る。


 代金を紙幣でもらう。


 そのままダンジョンの店で買い物をする。


 使い切らなければ、必要に応じて金貨に交換する。


 それだけだった。


 しかし、商人たちはそこに別の価値を見つけた。


 紙幣を持っていれば、ダンジョンの店で使える。


 それだけではない。


 いつでも金貨と交換できる。


 ならば、商売の代金として受け取っても問題ない。


 わざわざ大量の硬貨を運ぶより、紙幣の方が圧倒的に扱いやすい。


 最初は一部の商人だけだった。


 それが少しずつ増えていった。


 紙幣を受け取る商人が増える。


 その商人から商品を買う別の商人も紙幣を使う。


 紙幣を扱う店が増えれば、客も紙幣を持つようになる。


 そうして紙幣は、少しずつ流通する範囲を広げていった。


 ダンジョンを訪れる冒険者だけではない。


 商人も使う。


 商人と取引する者も使う。


 そして、ダンジョンには世界各地から人が集まる。


 結果として、紙幣は国境を越えて広がっていった。


 気がつけば、アレンが冒険者への支払いを便利にするために作った紙幣は、世界中で使われるようになっていた。


 世界共通の通貨の誕生だった。


 だが、そこで新しい問題が発生した。


 この紙幣は、王国の通貨価値を基準にして作られている。


 王国では金貨一枚と交換できる紙幣が、別の国ではどれくらいの価値になるのか。


 国によって通貨の価値が違えば、当然ながら交換比率も変わる。


 商人たちは、国をまたいで商売をするたびに、その差を考えなければならなくなった。


 紙幣そのものは世界中で使える。


 しかし、その紙幣と各国の通貨との価値まで同じになったわけではない。


 便利になったはずなのに、今度は為替に悩まされる。


 アレンは世界共通の通貨を作った。


 しかし、世界共通の為替相場まで作ったわけではなかった。


 そして、もう一つ問題がある。


 紙幣はいつでも金貨と交換できる。


 つまり、紙幣そのものの価値を金貨が支えている。


 紙幣が増えても、交換するための金貨が必要になる。


 こうして、この世界の通貨制度は金貨を基準とした金本位制で運用されることになった。


 紙幣は普及した。


 商取引は便利になった。


 世界中で同じ紙幣が使われるようになった。


 だが、通貨制度が完成したわけではない。


 為替という新しい問題も生まれた。


 そして、金貨に価値を支えられた紙幣は、金の量という制約から逃れることもできない。


 アレンが作ったのは、あくまで便利な紙幣だった。


 そこから世界の金融制度が変わっていくことになる。


 世界共通通貨が誕生した。


 だが――。


 管理通貨制までの道のりは、まだまだ遠かった。

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