クロノスの強さ
アレンはクロノスと一緒に映画を観ていた。
映画の中では、主人公たちが巨大な敵に立ち向かっている。
派手な魔法が飛び交い、爆発が起こり、最後には必殺技まで繰り出される。
アレンはそれを眺めながら、ふと思った。
「クロノスの強さってどのくらい?」
隣で映画を観ていたクロノスが、少し考える。
「まずソロで我に挑むのは無理だろうな」
「だろうね」
「今の勇者でも、一人では勝負にならんであろうな」
「なるほど」
アレンは映画に視線を戻す。
この世界にはSランク冒険者がいる。
勇者もいる。
それでもクロノスと比べれば、まだ差があるらしい。
「勇者パーティーなら?」
「善戦するだろう」
「勝てる?」
「まず負けんな」
クロノスは映画を見ながら答える。
「なら、勇者パーティーに世界中からSランクパーティーを集めたら?」
「それなら勝てるかもしれんな」
「人類に希望がないわけじゃないんだね」
「我だけならな」
「ん?」
アレンがクロノスを見る。
クロノスは映画から目を離さず、淡々と続けた。
「我だけなら、数を集めれば可能性はある」
「なら大丈夫じゃないか」
「我とたまと白がパーティーとして人類に立ち向かったら無理であろうな」
「……」
アレンは黙った。
クロノス。
たま。
白。
三体とも、人類側からすれば規格外の存在だ。
「たままで入るのか?」
「当然であろう。あれも強いぞ」
「白も?」
「当然だ」
「……人類、詰んでない?」
「だから我だけなら、と言ったのであろう」
アレンは映画へ視線を戻す。
画面の中では、主人公たちが必死に敵を攻撃していた。
「じゃあさ」
「なんだ?」
「映画の兵器を転生者が魔法として再現したら耐えれる?」
クロノスが映画の画面を見る。
「どの程度のものかによるな」
「例えばレールガン」
「レールガンか」
クロノスは少し考える。
「無理かもしれんな」
「クロノスでも?」
「魔法として再現された場合、どの程度の速度と威力になるか分からんからな」
「でも、当てられるのか?」
「そこだな」
「そこ?」
「いくら威力があろうと、我に当てられなければ意味がない」
「ああ」
クロノスは映画を見ながら続ける。
「我は動ける。飛べる。魔法も使える。防御もできる」
「なるほど」
「レールガンそのものが強いかどうかと、我を倒せるかどうかは別の話だ」
「確かに」
アレンは腕を組む。
「捕縛と組み合わせるとか手はあるよ」
「なるほどな」
「動きを止めてから撃つ」
「それなら話は変わるであろうな」
クロノスが頷く。
単純な火力勝負ではなく、拘束してから高威力の攻撃を当てる。
転生者なら、それくらいは考えそうだった。
「じゃあ核はどうだ?」
アレンが何気なく聞く。
「核か」
クロノスが少し黙る。
「衝撃を逃せるかどうかだな」
「爆発そのものより?」
「我が耐えられるかどうかは、爆発の規模だけでは決まらん」
「なるほど」
「衝撃をどう受けるか。熱や圧力をどう防ぐか。それ次第であろう」
「じゃあ、核なら絶対勝てるってわけでもないのか」
「絶対などない」
クロノスはそう言って、映画へ視線を戻す。
アレンも映画を見る。
画面の中では、ちょうど主人公が巨大な必殺技を放っていた。
「……クロノス」
「なんだ?」
「絶対に転生者とは復活できない外で戦うな」
「急にどうした?」
「いや」
アレンは真剣な顔で答える。
「お前みたいな規格外がいないと思うがな」
「そうだといいが」
「でも転生者なら絶対必殺技を考える」
「必殺技か」
「そう」
アレンは映画を指差す。
「こういうのを見てる奴が転生して、魔法を使える世界に来たらさ」
「うむ」
「絶対に『前世の知識で最強技を作ってみた』とかやるだろ」
「……ありそうだな」
「しかも、そういう奴に限って研究する」
「それは厄介だな」
「だろ?」
アレンは頷く。
「だから外で戦うな」
「分かった」
クロノスは素直に返事をする。
そして二人は、再び映画へ視線を戻した。
映画の中では、主人公が新しい必殺技を叫んでいる。
「……」
「……」
二人とも、少しだけ嫌な予感がした。
この世界には、まだアレンたちが知らない転生者がいる。
そして転生者というものは――。
前世の知識を、だいたいろくでもない方向に使う。
「……必殺技、か」
クロノスが小さく呟いた。
「考えないでくれよ」
「我は考えておらん」
「ならいい」
アレンは安心して映画を見る。
だが、クロノスは画面を見ながら思っていた。
もし本当に自分を倒すための必殺技を作る者が現れたら。
それは少しだけ、面白そうだと。
もちろん、そんなことをアレンに言うつもりはなかった。




