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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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プロマイド騒動

アレンはこりてなかった。


 以前、プロマイドを無断で販売したことで怒られた。


 その結果、正座させられた。


 かなり怒られた。


 それでも――。


「エレナが加わったからな」


 アレンは懲りずに考えていた。


 元聖女エレナがダンジョンにやってきた。


 それなら当然、気になることがある。


 これまでのプロマイドの売り上げランキングに、変動が起きるのではないか。


 現在のランキングは、かなり人気が偏っている。


 そこに新しくエレナが加わった。


 元聖女。


 SSSランク。


 しかも、あのダンジョンの深層を平然と歩いていく人物だ。


 冒険者たちの注目を集めるには十分すぎる。


「エレナのプロマイドは売れるだろうな」


 問題は――どんな写真にするかだ。


 ただ立っているだけでは面白くない。


 プロマイドを買う人間が欲しいと思うような一瞬。


 その人物らしさが最も出ている場面。


 アレンは自分の脳内メモリーを検索し始めた。


「……」


 これまでに見てきた六人の姿を思い浮かべる。


 まずはクラリス。


 クラリスには、すぐに一枚の光景が浮かんだ。


 指輪をはめてもらったときの姿。


 左手を見ながら、少し照れている。


 普段の王女らしい姿とは少し違う。


 嬉しそうで、照れくさそうで、それでも大事そうに指輪を見ている。


「クラリスはこれだな」


 アレンの中では、もう決まった。


 次はリリア。


「リリアは……」


 こちらも迷う必要がない。


 リリアといえば魔法だ。


 強大な魔力を放ち、魔法を撃つ瞬間。


 迫力があり、本人の強さも分かる。


「魔法を放つシーンだな」


 リリアらしい一枚だ。


 次は――。


「エレナ」


 元聖女。


 その肩書きにふさわしい場面。


 アレンが思い浮かべたのは、聖杯堂で祈りを捧げるエレナだった。


 静かに目を閉じ、聖なる力を感じさせながら祈っている。


 戦っている姿でもない。


 魔法を使っている姿でもない。


 聖女だった頃を感じさせる、最も象徴的な場面だ。


「これだな」


 エレナは祈り。


 これは完璧だ。


 そしてセレスティア。


 アレンは少し考えた。


「セレスティアは……ワインだな」


 優雅にワインを飲んでいる姿。


 貴族らしい雰囲気。


 落ち着いた表情。


 グラスを手にした姿は、いかにもセレスティアらしい。


「うん。これだ」


 次はシャルロッテ。


 王妃である彼女なら、やはり――。


「ティアラだな」


 頭にティアラを乗せるシーン。


 王妃としての雰囲気が一番伝わる。


 そして最後。


「フローラは……」


 フローラは少し迷った。


 だが、すぐに思いつく。


「紅茶だな」


 優雅に紅茶を飲んでいる姿。


 フローラらしい。


 上品で、落ち着いていて、本人の雰囲気にも合っている。


「完璧だ」


 アレンは六枚の写真を頭の中に並べた。


 クラリスは指輪をはめてもらって照れているシーン。


 リリアは魔法を放つシーン。


 エレナは祈りを捧げるシーン。


 セレスティアは優雅にワインを飲むシーン。


 シャルロッテは頭にティアラを乗せるシーン。


 フローラは優雅に紅茶を飲むシーン。


「絶対売れる」


 アレンには確信があった。


 そして――。


 本当に売れた。


 プロマイドはかなりの勢いで売れた。


 エレナのプロマイドも予想通り人気になった。


 元聖女という肩書きもあって、買い求める冒険者が次々と現れる。


 それだけではない。


 それぞれのプロマイドも、以前からの人気を維持している。


 売り上げランキングには、少しずつ変動が起き始めた。


「やっぱり売れたな」


 アレンは満足そうにランキングを確認する。


 自分の予想通りだった。


 写真の選択も完璧だった。


 販売戦略も完璧。


 売り上げも完璧。


 何一つ問題はない。


 ――ただし。


 アレンは、一つだけ忘れていた。


 以前も同じことをして怒られたということを。


「アレン」


「……」


 背後から声がした。


 アレンはゆっくり振り返る。


 そこにはセレスティアがいた。


 その手には――。


 プロマイド。


「これは何ですの?」


「……プロマイドだな」


「見れば分かりますわ」


 セレスティアの隣にはクラリスがいる。


 リリアもいる。


 エレナもいる。


 シャルロッテもいる。


 フローラもいる。


 全員、自分のプロマイドを手にしていた。


「どうして私たちの写真が売られているのでしょう?」


「売れると思ったからだ」


「そういう問題ではありません」


 セレスティアが即答する。


「以前も同じことをしましたわよね?」


「……したな」


「そのとき、どうなりました?」


「……怒られたな」


「そして?」


「正座した」


「では、なぜまたやったのです?」


 アレンは少し考えた。


「エレナが増えたから」


「理由になっていませんわ!」


 セレスティアの声が響く。


 アレンは目を逸らした。


「しかも……」


 セレスティアがプロマイドを確認する。


「私がワインを飲んでいるところですわね」


「そうだな」


「クラリスは指輪をはめてもらったところ」


「そうだな」


「リリアは魔法を使っているところ」


「そうだな」


「エレナは祈りを捧げているところ」


「そうだな」


「シャルロッテ様はティアラを乗せるところ」


「そうだな」


「フローラは紅茶を飲んでいるところ」


「そうだな」


 セレスティアはしばらく黙った。


「……全部、あなたが選んだのですか?」


「俺の脳内メモリーから最高のシーンを選んだ」


「そんなものを検索しないでください!」


 アリスまで呆れた顔をする。


「またやったのね……」


「今回は売れたぞ」


「そこを誇るんじゃないわよ!」


 アレンは少しだけ胸を張った。


「実際、ランキングも動いたからな」


「反省してください!」


「……はい」


 そして――。


「座りなさい」


「はい」


 アレンは正座した。


 当然のように、隣にはドッペルゲンガーもいる。


「お前もだ」


「……」


 ドッペルゲンガーも素直に正座する。


 今回もまた、プロマイドは大成功だった。


 売り上げも伸びた。


 ランキングも変動した。


 エレナの人気も確認できた。


 だが、それと引き換えに――。


 アレンが正座させられるところまで、しっかりセットになっていた。


 そしてアレンは正座しながら思った。


「……次は許可を取ってから売るか」


 少なくとも、今回の件については。


 だが――。


 次に何を売るかについては、まだ何も反省していなかった。

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