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ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


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日本食エリアの今

アレンは久しぶりに、定食屋へ食事に向かっていた。


 日本料理エリアを作ってから、しばらく経っている。


 最初の頃は、アレン自身が日本食を食べるために利用することが多かった。


 定食を食べる。


 ビールを飲む。


 そして、久しぶりの日本の味を楽しむ。


 それが目的だった。


 だから、アレンは店の客層など特に気にしていなかった。


 だが――。


「……あれ?」


 店に入ったところで、アレンは足を止めた。


 以前と雰囲気が違う。


 客席を見渡す。


 以前は男性客ばかりだった。


 冒険者や商人が多く、仕事帰りに定食を食べているような男たちが目立っていた。


 それなのに。


「女性が増えてるな」


 明らかに女性客の姿が増えている。


 アレンは空いている席に座りながら、店内を見回した。


 ここは日本料理しか出してはいけないエリアだ。


 この世界の料理を混ぜることも禁止している。


 それなのに、なぜ女性客が増えたのだろう。


「何が女性に受けたんだ?」


 アレンは考える。


 日本料理。


 定食。


 味噌汁。


 焼き魚。


 刺身。


「ヘルシーなのが受けたのか?」


 確かに、日本料理は肉料理ばかりではない。


 野菜もある。


 魚もある。


 定食なら栄養のバランスも悪くない。


「肉より魚が好きな人が来たのか?」


 それもありそうだ。


 だが、それだけでここまで女性客が増えるだろうか。


「うどんやラーメンか?」


 麺類も女性に人気がある。


 だが――。


「いや、それでも男性客の方が集まりそうだな」


 アレンは首を傾げた。


 どう考えても、このエリアの客層がここまで変わる理由が分からない。


 定食を注文して、料理を待つ。


 その間もアレンは周囲を見ていた。


「……ん?」


 店の外に出てみる。


 すると、以前はなかった店が増えていた。


「かき氷屋?」


 日本料理エリアの一角に、かき氷の店がある。


「パフェ専門店……?」


 その隣には、色鮮やかなパフェが並んでいる。


「団子屋」


 その向かいには、串に刺さった団子。


「饅頭屋」


 さらにその隣。


「チョコばなな……」


 祭りの屋台で見かけるようなものまである。


「綿あめ……」


 アレンは無言になった。


 さらに歩いていく。


 あんみつ。


 たい焼き。


 どら焼き。


 羊羹。


 最中。


 次々と甘味を扱う店が並んでいる。


 いつの間にか、日本料理エリアの一角が――。


 完全に甘味処だらけになっていた。


「……」


 アレンは立ち尽くす。


 最初は、自分が日本料理を食べるために作った場所だった。


 それが今では、女性客が甘い物を求めて集まる場所になっている。


 しかも、客層を見る限りかなり繁盛している。


「なるほど……」


 アレンはようやく理解した。


 日本料理が女性に受けたのではない。


 女性が日本料理エリアに来る理由が、別にできたのだ。


 甘味だ。


「……」


 そして、アレンには一人だけ心当たりがあった。


「アリス……」


 異世界に日本の知識を持ち込んだ庶民。


 食べ物に関して妙に執着する女。


 チーズケーキをダンジョンに持ち込み、アイスクリームを持ち込み、プリンまで作らせた女。


 そんなアリスが、この状況を見逃すはずがない。


 アレンは店をもう一度見渡した。


 女性客がパフェを食べている。


 別の女性は団子を食べている。


 その隣では、かき氷を食べながら楽しそうに話している。


「……アリスやりやがったな」


 アレンは確信した。


 自分のために作った日本料理エリアが――。


 いつの間にか、アリスによって女性客を呼び込む甘味エリアに改造されていた。


「俺の日本食エリアだったんだけどな……」


 アレンは小さくため息をついた。


 だが、女性客で賑わっている店を見ていると、完全に文句を言う気にもなれない。


 日本の食文化が、この世界でさらに広がっている。


 それ自体は悪いことではない。


 ただ――。


「俺が静かに定食を食う場所だったんだけどな」


 アレンはそう呟きながら、定食屋へ戻っていった。


 今日もまた、アレンの知らないところでダンジョンは進化していた。

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