↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
344/430

会員制のバー

アレンは正座をさせられていた。


 隣には、同じように正座をしているドッペルゲンガーがいる。


 なぜこんなことになったのか。


 始まりは、アリスがセレスティアとクラリスと食事に出かけたことだった。


「私のお気に入りの店を案内します」


 アリスは二人を連れて、ダンジョンの町を歩いていた。


 向かった先は、日本料理を集めた一角だった。


 定食屋、そば屋、うどん屋、焼き鳥屋。


 日本で見慣れた料理を出す店が並んでいる。


「ここです」


「日本料理のお店ですの?」


「そうよ」


 アリスは当然のように答えた。


 アリスは、この日本料理エリアが自然にできたものだと思っていた。


 この世界の人たちが日本の料理を知り、気に入り、料理人たちが研究を重ねた結果、日本食を出す店ができた。


 そんな認識だった。


 まさか、その裏側にアレンがいるとは思っていない。


 ましてや――。


 この店そのものが、アレンが日本食を食べたくなって作ったものだとは知らない。


「私はここがおすすめよ」


 アリスが定食屋に入る。


 セレスティアとクラリスも続いて席についた。


「何にしましょうか」


「私は焼き魚の定食にしますわ」


「私はうどんにしましょう」


「私は唐揚げ定食かな」


 三人はそれぞれ好きなものを注文する。


 店員が注文を受ける。


 もちろん、その店員もドッペルゲンガーだ。


 アレンが日本料理を楽しむために作ったエリアなのだから、裏側の人員までアレンが用意している。


 しかし、そんなことを知る者は少ない。


 アリスも、セレスティアも、クラリスも何も疑っていなかった。


 料理を待っていると、ふと隣の席から声が聞こえてきた。


「なあ、会員制のバーに凄い美人がいるらしいぞ」


「聞いたことある。かなり高いんだろ?」


「そうらしい。でも一度は行ってみたいよな」


「俺もだよ」


 三人の手が止まった。


 アリスは特に気にしていない。


 しかし、セレスティアは何か嫌な予感がした。


 そして、その予感は的中する。


「……会員制のバーですか」


 セレスティアが呟く。


「高いとは言っていましたけど……」


 クラリスも興味を持ったように周囲を見る。


 アリスも二人につられて考える。


「このダンジョンにそんな店あったっけ?」


「さあ?」


 セレスティアは少し考えた。


 そして、隣にいる二人を見る。


「このメンバーなら、金を払えますわね」


「え?」


 アリスが振り向く。


「行ってみましょう」


「今から?」


「ええ」


 こうして三人は、噂の会員制バーへ向かうことになった。


 店を探すと、確かにそれらしい店があった。


 高級そうな外観。


 入口には会員制を示す案内。


「本当にありましたね」


 クラリスが驚く。


「入ってみましょう」


 セレスティアが扉を開ける。


 店内は落ち着いた雰囲気だった。


 照明は少し暗く、客も静かに酒を飲んでいる。


「いらっしゃいませ」


 給仕が近づいてくる。


 その顔を見た瞬間――。


 セレスティアが固まった。


「……」


 アリスも固まる。


 クラリスも目を見開く。


 そこにいた給仕は――。


 セレスティアと瓜二つの顔をしていた。


「…………」


「…………」


「…………」


 三人の視線が給仕に集中する。


「どうなさいましたか?」


 給仕は何食わぬ顔で尋ねる。


「……アリス」


「な、何?」


「この店について、何か知っていますか?」


「知らないわよ!」


 アリスが慌てて答える。


 セレスティアは静かに給仕を見つめた。


 顔だけではない。


 髪型も、雰囲気も、自分にそっくりだった。


「……どういうことですの?」


 セレスティアの声が低くなる。


 給仕は答えない。


 その代わり、店の奥から別の給仕が現れた。


 クラリスと瓜二つ。


 そして、フローラと瓜二つ。


「……」


 セレスティアは頭を抱えた。


「アレンですわね」


「え?」


 アリスが驚く。


「間違いありません」


 クラリスも頷く。


「どうして分かるの?」


「こんなことをするのは、あの人しかいませんわ」


 セレスティアは即座に判断した。


「全員、捕まえますわよ」


「え?」


 店内の給仕たちが一斉に動きを止める。


 そして――。


 あっという間に、全員が確保された。


 抵抗する理由もない。


 ドッペルゲンガーたちは、そのままセレスティアたちに連行されることになった。


 そして数時間後。


 アレンはマスタールームではなく、屋敷にいた。


 正座をしている。


 その隣には、給仕をしていたドッペルゲンガーも正座している。


「……」


「……」


 アレンは黙って前を見ている。


 目の前には、セレスティア、クラリス、アリスがいる。


「アレン」


「はい」


「説明してください」


「……」


 アレンは少しだけ考えた。


「日本料理を食べる場所が欲しかったんだ」


「それは知っていますわ」


 セレスティアの声が冷たい。


「問題は、なぜ会員制のバーを作ったのですか?」


「それも日本の店だからだ」


「では、なぜ給仕が私たちの姿をしているのですか?」


「人手が必要だったからだ」


「なぜ私たちの姿なのですか?」


「お茶会のメンバーに化けさせたほうが、俺が楽しめるから」


「……」


 セレスティアの額に青筋が浮かぶ。


 クラリスは困ったように笑っている。


 アリスは呆然としていた。


「お茶会のメンバーに化けさせて給仕させていたのね」


「そういうことだな」


「私も?」


「そうだな」


「私も?」


「そうだな」


「私も?」


「お前は美人じゃない」


 三人が無言になる。


 そして、アリスがぽつりと呟いた。


「……私、自然に日本食が受け入れられて店ができたんだと思ってた」


「違うぞ」


 アレンは即答した。


「俺が日本食を食いたかったから作った」


「最初からそう言いなさいよ!」


「言う必要あるか?」


「あるわよ!」


 アレンは正座したまま、ため息をついた。


「日本が恋しくなったんだから仕方ないだろ」


「だからって私たちの顔で給仕させる必要はないでしょう!」


「それは趣味だ」


「開き直った!」


 こうして――。


 アレンは日本料理エリアを作った理由と、会員制バーの存在まで、すべて説明することになった。


 そして当然のように、その日のアレンは正座から解放されなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。