↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョンでニート生活始めます ~冒険者を集め、町を発展させ、経済を動かし、世界に影響を与えるダンジョン経営~  作者: まゆな


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
333/430

フルーツダンジョン

アリスのダンジョンは、いつしか冒険者たちから別の名前で呼ばれるようになっていた。


「フルーツダンジョン」


 最初は誰かが冗談で言い始めただけだった。


 しかし、気がつけば、その名前が定着していた。


「今日はどこに行く?」


「フルーツダンジョンに決まってるだろ」


「また果物を取りに行くのか?」


「魔石も出ないのに?」


「でも、果物がうまいんだよ」


 そう。


 アリスのダンジョンでは、モンスターを倒しても魔石を落とさない。


 代わりに落ちるものが、いつの間にか変わっていた。


 りんご。


 みかん。


 梨。


 苺。


 スイカ。


 メロン。


 モンスターを倒す。


 すると、その場に果物が落ちている。


 冒険者からすれば、普通のダンジョンとはあまりにも違う。


「なんでモンスターからりんごが出てくるんだ?」


「知らん」


「じゃあ、これは?」


「みかんだな」


「いや、そうじゃなくて、なんでみかんなんだよ」


 そんな疑問を抱きながらも、冒険者たちは果物を持ち帰っていく。


 そして、食べてみれば普通に美味しい。


 その評判が広がるのに、そう時間はかからなかった。


 特に女性冒険者たちの反応は良かった。


「苺が出る階層があるらしいわよ」


「本当?」


「しかも結構甘いらしいわ」


「じゃあ、今度行ってみようかな」


 その話を聞いたアリスは、満足そうに頷いていた。


「やっぱりこれよ」


 アリスには確信があった。


 自分の考えは間違っていない。


 以前から、アリスはダンジョンを成長させようとしていた。


 チーズケーキ。


 シュークリーム。


 アイスクリーム。


 クーラーボックス。


 保冷バッグ。


 そして、ニワトリ。


 いろいろ試してきた。


 その結果、今回は果物である。


「女の子は甘い物が好きなのよ」


 アリスは自信満々に言う。


 果物なら甘い。


 種類も多い。


 持ち帰ることもできる。


 しかも、ダンジョンで手に入るなら買いに行くより安い。


「これなら女性冒険者が増えるわ」


 実際、女性冒険者は増えた。


 少しずつではあるが、確実に増えている。


 アリスはそれを確認すると、さらに自信を深めた。


「ほら、やっぱり成功じゃない」


 女性客を増やす。


 そのために女性が喜ぶものを用意する。


 結果として女性冒険者が増えた。


 完璧な作戦だった。


 ……ただし。


 アリスは一つ、大事なことを忘れていた。


「……」


 アリスはダンジョンの冒険者たちを眺める。


 男性。


 男性。


 男性。


 また男性。


 その中に、女性冒険者が少し混じっている。


「……あれ?」


 そこで、アリスの思考が止まった。


「私、何か忘れてない?」


 しばらく考える。


 そして――。


「……冒険者の八割って、男性じゃん」


 思い出した。


 冒険者は、そもそも男性の割合が圧倒的に多い。


 女性冒険者が増えた。


 それは間違いない。


 だが、全体の八割を男性が占めている。


 そこに女性冒険者が少し増えたところで、全体の人数が大きく変わるわけではない。


「…………」


 アリスは計算してみる。


 女性冒険者が増えた。


 確かに増えた。


 女性客からの評判も悪くない。


 果物も売れている。


 だが――。


 男性冒険者は、果物を目的にわざわざアリスのダンジョンへ来るほどではない。


「……」


 結果。


 アリスのダンジョンに訪れる冒険者の数は、増えていなかった。


「なんでよ……」


 アリスは頭を抱えた。


 作戦そのものは間違っていなかった。


 女性冒険者を増やすことには成功している。


 なのに、ダンジョン全体の客数は変わらない。


 原因は単純だった。


 最初から男性冒険者のほうが圧倒的に多かったからだ。


「女性を増やせば、全体も増えると思うじゃない……」


 アリスはぶつぶつと呟く。


 しかし、現実はそう簡単ではなかった。


 しかも、別の問題まで発生している。


「フルーツダンジョン」


 冒険者たちがそう呼ぶほど、アリスのダンジョンは果物の印象が強くなっていた。


「今日もフルーツダンジョン行くか」


「メロンが欲しいんだよ」


「俺はスイカだな」


「魔石は出ないけど、果物はうまいぞ」


 もはや、普通のダンジョンとは別の方向へ進んでいる。


 アリスはその様子を眺めながら、深くため息をついた。


「また変なダンジョンになっちゃった……」


 ダンジョンを成長させようとした。


 冒険者を増やそうとした。


 女性冒険者を増やすことには成功した。


 しかし、肝心の冒険者全体の数は増えていない。


 そして残ったのは――。


 果物をドロップする、フルーツダンジョンだった。


 アリスは思う。


 自分は普通のダンジョンを作ろうとしているはずなのに、なぜこうなるのだろう。


 だが、答えは簡単だった。


 転生者がダンジョンを運営すると、まともなダンジョンにならない。


 そんな事例を、また一つ増やしただけだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。