隣の騎士団
隣領の騎士団では、抽選の結果を受けて領主への報告が行われていた。
「ワシの目にくるいはなかったようだな」
領主は満足そうに頷いた。
「はい。今回の抽選では、一等を一口、二等を二口獲得しております」
「うむ」
領主の視線が、目の前に置かれた腕時計と真珠のネックレスへ向かう。
一等の腕時計。
二等の真珠のネックレス二本。
どれも、この国では見たことのない品だった。
特に真珠は大きさも形も申し分ない。
腕時計に至っては、そもそも同じものを作れる者が国内にいるとは思えない。
「今回の抽選にかかった費用は?」
「はい」
文官が資料を差し出す。
「ダンジョンへ派遣した騎士団員の人件費、それから現地へ持ち込んだ食料や飲料などの費用。その他の経費を合わせますと、こちらになります」
領主は資料に目を通した。
騎士団員を動かした以上、人件費はかかる。
食料も必要になる。
抽選に使った魔石もある。
今回の景品を手に入れるために、それなりの費用を使ったことは間違いない。
それでも、領主は目の前の景品を見る。
「……十分に安いな」
領主自身がそう判断した。
今回の費用を考えても、この三つを手に入れたことによる価値の方が遥かに大きい。
「今回の成果なら、騎士団全員に特別手当を出しても問題ない」
「ありがとうございます!」
隊長が頭を下げる。
「今回の成果は騎士団全体のものだ。全員に支給しよう」
「はい!」
隊長は嬉しそうに返事をした。
領主は満足そうに頷く。
「では、次はどうする?」
「次回は応募数そのものが大きく増えると思われます」
文官が答えた。
「どの程度だ?」
「今回の三倍程度になる可能性があります」
「三倍か」
「はい。今回と同じような当選確率なら、一等は一口程度、二等は八口前後になる計算です」
「一等は一口か。さすがに簡単には取れんな」
「二等ならば、我々が二口程度を確保することは十分可能だと思われます」
領主は頷いた。
「ならば、さらに応募を増やせ」
「はい」
「騎士団だけでは足りん。冒険者を雇え」
「冒険者を、ですか?」
「そうだ。こちらで費用を出して抽選に参加させる。応募口数を増やし、景品をこちらへ集めるのだ」
「分かりました」
文官が頭を下げる。
隊長も頷いた。
「お任せください」
そして、隊長が少しだけ考えてから口を開いた。
「領主様」
「なんだ?」
「もし次回も今回のような成果を上げることができましたら……その時も、今回のように特別手当をお願いできますでしょうか?」
領主は笑った。
「わかっておる」
「ありがとうございます!」
隊長は満面の笑みを浮かべた。
こうして隣領では、次の抽選に向けた準備が始まった。
騎士団だけではない。
今度は冒険者まで動員して、応募口数を増やす。
今回よりもさらに多くの景品を手に入れるために。
このダンジョンを利用することに関しては――。
隣領の方が一枚上手のようだ。




