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改革案その1

「ところで、ダンジョンの魔石って、どのくらいの価値があるんだ?」


アレンは、ふと気になって尋ねた。


「一階層で手に入る魔石なら、一個十円ほどです」


「十円?」


「はい。二階層なら一個二十円、三階層なら三十円です。階層が一つ上がるごとに、魔石一個あたりの価値も十円ずつ上がります」


「なるほど。じゃあ十階層なら?」


「一個百円です」


「ボスは?」


「ボスの魔石は通常の二倍ですので、二百円になります」


アレンは計算してみる。


十階層まで進んで、ようやく一個百円。


ボスを倒しても二百円。


「……これ、冒険者が魔石だけで生計を立てるのは難しいんじゃないか?」


「はい」


「やっぱりそうなのか」


アレンはダンジョンの現状を思い返した。


町から近い。


十階層しかない。


敵は階層が進むにつれて強くなるが、特別な仕掛けがあるわけでもない。


そして手に入るものは、基本的に魔石だけ。


ボスを倒せば宝箱が出るが、中身はポーション、短剣、鉄のインゴット、マナポーションなど。


冒険者にとって役に立たないわけではない。


だが、「このダンジョンに何度も通いたい」と思わせるほど魅力的なものでもない。


「自分が冒険者だったら、一度来たら二度と来ないな」


「困ります」


黒い珠から、即答が返ってきた。


「人が来なくて困っているんです。どうにかしてください」


「そう言われてもな……」


アレンは腕を組んだ。


「今よりドロップを豪華にしたら赤字になるんだよな?」


「はい」


「今のダンジョンは赤字じゃないんだよな?」


「はい。現在のドロップなら、なんとか収支を維持できています」


「でも、もっと価値のあるものをドロップさせると?」


「赤字になります」


「つまり、冒険者を増やしたい。でも景品を豪華にすると赤字になる」


「その通りです」


「難しいな」


アレンは考え込んだ。


冒険者を呼ぶために景品を豪華にした結果、ダンジョンそのものが赤字になれば意味がない。


「何か別の方法は……」


そこでアレンは、ふと思い出した。


「そういえば、日本の物を取り寄せられるんだよな?」


「可能ですが、どうしました?」


「冒険者が獲得した魔石と同じ価値の日本の商品と交換させることはできるか?」


「可能です」


「だったら、それでいいじゃないか」


「……?」


黒い珠は、いまいち意味が分かっていないようだった。


「例えば、魔石十個なら百円分だろ?」


「はい」


「なら、魔石十個を持ってきた冒険者に、百円相当の商品を渡す」


「それでは、ダンジョンから商品が出ていくだけでは?」


「その代わり、魔石を十個受け取るんだよ」


「……あ」


「冒険者が魔石を商品に交換するだけなら、魔石の価値以上の商品を渡さない限り、赤字にはならないはずだ」


「確かに……」


「しかも日本の商品なら、こっちの世界には存在しないものも多い」


アレンは考える。


ただ交換するだけでは、冒険者がわざわざダンジョンに来る理由としては弱い。


そこで、さらに考えた。


「そうだ。ガチャにしよう」


「ガチャ?」


「各階の階段前に設置する」


「何をするものですか?」


「魔石を入れると、日本の商品が一つ出てくる」


「なるほど」


「一回、魔石十個だ」


アレンは続けて説明する。


「例えば、冒険者が魔石を八個持っていたとする」


「あと二個ですね」


「そう。そこで帰るか、あと二個集めるか」


「……あと二個なら、集めようとするでしょうね」


「そういうことだ」


アレンは満足そうに頷いた。


「十個集めればガチャを一回回せる。だったら、八個集めたところで帰るのはもったいないと思うだろ?」


「はい」


「あと二個なら、敵を二匹倒せばいい」


「つまり、ガチャを回したい冒険者が、もう少しだけダンジョンに残る」


「その通り」


さらにアレンは気づいた。


「しかも、一回回して終わりとは限らない」


「どういうことですか?」


「一回目で欲しいものが出なかったら、もう一回回したくなる」


「……」


「魔石が八個あるなら、また二個集めればいい」


「なるほど」


「そうやって、冒険者が本来なら帰るところで、もう少しだけ戦う。もう少しだけ滞在する」


「滞在時間が伸びますね」


「そういうことだ」


これなら、ダンジョンのドロップそのものを豪華にする必要はない。


冒険者が倒した敵から出るのは、これまで通りの魔石。


その魔石を使って、日本の商品を手に入れられるようにするだけだ。


「景品の価値は魔石と同程度に設定する」


「はい」


「だからダンジョンが一方的に損をすることもない」


「はい」


「そして冒険者は、魔石をただ売るよりも、珍しい日本の商品を手に入れられる」


「はい」


「さらに、あと少しでガチャを回せると思えば、もう少しだけ戦ってくれる」


アレンは満足そうに頷いた。


「完璧じゃないか」


「……私にはよく分かりません」


黒い珠は正直だった。


「ですが、ダンジョンの経営はアレン様にお任せします」


「任せろ」


こうして、アレンのダンジョン改革第一弾が決まった。


各階の階段前に、ガチャを設置する。


一回につき魔石十個。


冒険者が集めた魔石の価値に応じて、日本の商品が景品として出てくる。


アレンが狙ったのは、単純に冒険者を喜ばせることではない。


「あと少しだけ魔石が欲しい」


その気持ちを利用して、冒険者にもう少しだけ戦わせること。


そして、もう一度ガチャを回したいと思わせること。


「これなら、少しは人が増えるかもしれないな」


アレンは満足そうに頷いた。


アレンの改革第一弾は、ガチャの設置だった。

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